四間飛車

四間飛車の急所 1

四間飛車の急所 1 進化の謎を解く (最強将棋21 # 2)
著者 :藤井 猛
出版社:浅川書房
出版日:2003-12-01
価格 :¥386(2024/02/05 22:20時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

もはや現代振り飛車の教祖となった(笑)著者が、過去の膨大な棋譜・経験を通して四間飛車の全てに迫る本。第1巻の本書は、いわばそのイントロダクションとも言える「歴史編」だ。

ほとんど全ての戦法について、どんな形が登場しどんな対抗策が出て現在の最新形は何か、といった変遷が書かれている。
いわゆる「定跡書」としての位置付けではないので、指し手一つ一つに解説が入ってるわけではない。局面によっては符号が十数手続いて「……という変化で先手が悪い。よって……」といったような書き方もされている。それでも読んでいて判りづらくないのは、図面が多いことと、冷たすぎるほどに客観的に○×で局面を判断しているからだろう。「この手順だと先手不利になる(図面)。そこで修正手順でこう指すと先手有利になる(図面)。この展開はまずいので後手は新手を出し……(図面)」といった具合で、きちんと学術書のように分類整理されている。
5筋位取りや右四間飛車といった(特にプロ間では)マイナーな戦法についても解説がある。特に右四間飛車の項はアマチュアには参考になるだろう。ページとしては少ないが、そこらの定跡書よりはよっぽと役に立つ。ミレニアムついては最後に少し載っているだけだったが、これで十分なのかもしれない。個人的には、新しい指し方だからまだ分析ができていない、というより、藤井個人としてはミレニアムを恐れていない、という風に感じた。居飛車穴熊の項に比べると、客観的で冷静というよりは淡白で冷めている文章、と思えたのだ(ホントに個人的な感想ね)。

『最前線物語』『島ノート』は、同じようにプロの棋譜を漁っていても、研究というよりは最新の動向を紹介する本という感じがする。たとえて言うなら社会学の世界だろうか(もっとも、社会学とはなんぞやという問いは非常に難しい話なのだが……)。『角換わり腰掛け銀研究』の全てを探求せんという姿勢は完全に数学者の世界である。
そして本書は、『消えた戦法の謎』のような歴史学的手法で書かれた本だ。
ただ、『消えた戦法の謎』が完全に歴史の話をしている(なにしろその戦法は「消えて」いるわけだから)のに対し、本書は歴史を探りつつ現代の最新形を紹介するという二重構造になっている。
その辺りが、非常に「お得感」が強く、また、名著だと感じさせる要因なのだろう。

こういった試みは、ある意味採算を度外視しないと成り立たないものでもある。手を抜くことが許されないからだ。
我々アマチュアができることは、こういった良書をしっかりと評価し、「購入」という賛成票で応援することくらいだろう。
しかしそれくらいしかできないからこそ、それくらいのことはしっかりとやっていきたい。

作成日:2004.01.09 
四間飛車

杉本流四間飛車の定跡 居飛車の右四間飛車・4五歩早仕掛けを粉砕

杉本流四間飛車の定跡 (将棋必勝シリーズ)
著者 :杉本 昌隆
出版社:創元社
出版日:2003-12-01
価格 :¥802(2024/02/06 10:43時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

タイトル通り、対右四間飛車と対4五歩早仕掛けを扱った本。

かなり『四間飛車の急所1』とかぶる部分はあるのだが(特に右四間飛車)、そこは創元社のシリーズということで、うまいこと判りやすく書いてある。特に右四間飛車は狙いが単純なため変化が少なく、かなり突っ込んだ変化手順を解説されてもそんなに苦にならない。
実際はかなり高度な内容が書かれていると思う。3段クラスでも「おぉ!」と思うような変化が転がっているかもしれない。右四間飛車での飛車先不突き対策であったり、玉頭銀の攻防であったり、面白い形であるにもかかわらず、プロであまり指されないが故に紹介されない形を拾ってくれている。

創元社にしては珍しく(<をい)、きちんと居飛車側の対抗策が書かれているところも見逃せない。4五歩戦法vs玉頭銀、最善を尽くした変化はむしろ居飛車指しやすいんじゃないかなぁ……とも思えるのだが(笑)、それもきちんと書いてある。振り飛車党も居飛車党も、2段3段くらいまでの人は一度目を通しておいて損はない。

一つ気になったのは、実際に4五歩戦法ってそんなに指されてるのかなぁ……ということ。白砂は「まっとうな将棋」を指さないし、公式戦から遠ざかっていることもあって、現在のアマチュアの流行をほとんど知らない。右四間飛車はいかにもアマチュアで指されそうな気がするのだが、あんな渋い(<失礼)戦法を指す人がそんなにいるのだろうか?

作成日:2003.12.10 
四間飛車

鉄壁! トーチカ戦法

鉄壁!トーチカ戦法 (パワーアップシリーズ)
著者 :三浦 弘行
出版社:マイナビ出版(日本将棋連盟)
出版日:2003-10-01
価格 :¥276(2024/02/06 10:43時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

トーチカというかミレニアムというか西田スペシャルというか、要するにその形の解説をした本。2001年の升田幸三賞を受賞した著者が解説している。
内容はまぁ藤井システムvsトーチカということで、それ以外は当然ながら、なし(笑)。
▲6六角型と▲6七金型の2つの形がテーマになっている。

『島ノート』『最前線物語』で解説はされているが、まるまる一冊トーチカという本は初めてだ。そういう意味では貴重な一冊ではあるのだが、どうも定跡書にありがちの「ひいき」をしているような気がする。
例えば、△5二飛と中飛車に振り替えて戦う指し方、例えば穴熊にもぐる指し方。特に、▲6六角型は振り飛車がむしろ有望な変化が多かったような気がするのだが、その辺については素通りに近い。穴熊に組み替える形も、なんか最後にちょっと付け足しておしまい、といった感じになっている。

せっかくトーチカの専門家が本を書くのだから、そういう部分については客観的に書いてほしかった。専門家であり使い手だからこそ肩入れしてしまうというのは判らなくもないが、例えば加藤の棒銀本は非常にその点では客観的に形勢判断や最善手の応酬をしていたと思う。まぁ思い入れは人一倍どころか人十倍くらいはあるんだけど(笑)、でも、第一人者だからこそ正当に判断を下せるもんじゃないのか?

新手の数や体系的な解説についても『島ノート』や『最前線物語』の方が判りやすかった。なんだか実戦解説を読んでいるようで、定跡書という感じがしない。
トーチカを指してみたい! という人の「はじめの一歩」としては薦められるが、一通り理解したら前述の2冊でフォローするのが賢い方法だと思う。

作成日:2003.11.05 
四間飛車

東大将棋ブックス四間飛車道場 第13巻 藤井システム

四間飛車道場 第13巻 藤井システム (東大将棋ブックス)
著者 :所司 和晴
出版社:(株)マイナビ出版
出版日:2003-10-01
価格 :¥370(2024/02/06 12:40時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

おなじみの東大将棋シリーズ。ようやく、本当にようやく藤井システムvs穴熊の登場である。出版のタイミングが難しかったということだが、とりあえず出したってよかったのにねぇ……。

内容としては、▲7八金と締まってから熊る形や▲5五歩と位を取る手、▲8六角と牽制する手などが主だったところ。また、後手の藤井システム側は△6二飛と回る形がほとんどで、これは△5二金左を△4三銀に替える手が主流になったために発生した手である。
あんまり解説されていなかった形(前述の事情から、最近になって生じた手だから。似たような形での飛車回りについてはいくつか見た記憶がある)なので、システム党は読んでおいて損はないと思う。

編集の方も相変わらずだが、今回はかなり形を絞っているのでそんなに煩雑感はなかった。
……実は慣れてきただけだったりして(笑)。

作成日:2003.11.04 
四間飛車

振り飛車党宣言! 1.四間飛車対急戦

振り飛車党宣言 1 (MYCOM将棋文庫 15)
著者 :小倉 久史
出版社:(株)マイナビ出版
出版日:2003-07-01
価格 :¥250(2024/02/05 22:20時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

振り飛車党宣言シリーズ第1作。四間飛車急戦を取り上げている。

しかし、いかんせん底が浅い。
棒銀にしろ▲4六銀にしろ、そう簡単に結論が出るわけはないというのは、(居飛車振り飛車にかかわらず)実際に指している人であれば判る話だ。しかし、本書では半分ほどしかスペースを割いていない。あとは実戦譜がズラリと並んでいるだけである。

私はこういう実戦譜をかき集めて「内容が濃いでしょ」という類の棋書は意味がないとすら思っているので、あまり賛成できない。プロやアマ高段者ならいざ知らず、4段程度までの人達が求めているのは「エキスのいっぱい詰まっている実戦譜」ではなく、それを噛み砕いて説明してくれる解説だと思うのだ。
「4段程度まで」というのは、ほとんどのアマチュアに当てはまるものだと思う。高段向けの棋書も結構。しかし、大多数の読者が何を求めているかというのも考えて欲しいと思う。

作成日:2003.07.15 
四間飛車
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