鉄壁! トーチカ戦法

作成日:2003.11.05
鉄壁!トーチカ戦法 (パワーアップシリーズ)
著者 :三浦 弘行
出版社:マイナビ出版(日本将棋連盟)
出版日:2003-10-01
価格 :¥276(2024/02/06 10:43時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

トーチカというかミレニアムというか西田スペシャルというか、要するにその形の解説をした本。2001年の升田幸三賞を受賞した著者が解説している。
内容はまぁ藤井システムvsトーチカということで、それ以外は当然ながら、なし(笑)。
▲6六角型と▲6七金型の2つの形がテーマになっている。

『島ノート』『最前線物語』で解説はされているが、まるまる一冊トーチカという本は初めてだ。そういう意味では貴重な一冊ではあるのだが、どうも定跡書にありがちの「ひいき」をしているような気がする。
例えば、△5二飛と中飛車に振り替えて戦う指し方、例えば穴熊にもぐる指し方。特に、▲6六角型は振り飛車がむしろ有望な変化が多かったような気がするのだが、その辺については素通りに近い。穴熊に組み替える形も、なんか最後にちょっと付け足しておしまい、といった感じになっている。

せっかくトーチカの専門家が本を書くのだから、そういう部分については客観的に書いてほしかった。専門家であり使い手だからこそ肩入れしてしまうというのは判らなくもないが、例えば加藤の棒銀本は非常にその点では客観的に形勢判断や最善手の応酬をしていたと思う。まぁ思い入れは人一倍どころか人十倍くらいはあるんだけど(笑)、でも、第一人者だからこそ正当に判断を下せるもんじゃないのか?

新手の数や体系的な解説についても『島ノート』や『最前線物語』の方が判りやすかった。なんだか実戦解説を読んでいるようで、定跡書という感じがしない。
トーチカを指してみたい! という人の「はじめの一歩」としては薦められるが、一通り理解したら前述の2冊でフォローするのが賢い方法だと思う。