四間飛車

四間飛車・序盤の指し方 完全ガイド

四間飛車 序盤の指し方完全ガイド (マイナビ将棋BOOKS)
著者 :井出 隼平
出版社:マイナビ出版
出版日:2018-03-13
価格 :¥1,694(2024/02/06 04:56時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

四間飛車vs居飛車について、急戦も持久戦も、ほとんどの戦形を解説している。
しかも、四間飛車側は美濃囲いがメインで、居飛車穴熊などにも銀冠で戦う。なかなか「古い」形である。
取り上げた戦形を列挙すると、急戦がナナメ棒銀・4五歩早仕掛け・棒銀・鷺宮定跡。居飛車穴熊が通常の穴熊と松尾流、角交換型。その他の戦形として左美濃・5筋位取り・玉頭位取り。右四間がないくらいで、確かにほとんどの戦形は網羅してある。

解説の内容はいささか初級者向けで、例えばナナメ棒銀では△8六歩の突き捨ての形すら紹介されていない。なので▲6五歩のカウンターがまともに入って綺麗に勝つ。5筋位取りなんかも飛車を見捨てて▲7七角と出る、という懐かしい定跡がそのまま紹介されている。ノーマル四間を扱っているということから、あまり定跡が磨かれていない部分があるのは仕方がないが、白砂が学生の頃の定跡を平成最後の夏に目にするというのはなんというか……。

最新形を追うのはある意味「疲れる」ことなので、居飛車穴熊あたりに対抗できるのであれば、ノーマル四間は非常に「楽な」戦法であると言えるだろう。こちらの陣形の理想形は決まっているので、組むのが格段に楽なのだ。なので、級位者がとりあえず四間飛車一本で初段を目指す、といった使い方は有用だと思う。そういった意味であれば本書は級位者には有用だろう。
とはいっても、本書をきっかけの一冊とするのはアリだと思うが、あまりに解説が薄すぎるので、これ一冊で、というわけではいかない。他の棋書で補完する必要がある。
とはいえ、著者の井出はプロの世界でこのノーマル四間で戦っているわけで、ということは棋力さえあれば十分に戦えるはずだ。加藤一二三が「棒銀が悪いわけではない」と語っていたが、それと同じなのかもしれない。フォロワーが少ないのでノーマル四間の復権はまだまだ遠いだろうが、同じ振り飛車党としては応援したい。

作成日:2018.07.17 
四間飛車

仕掛け大全 四間飛車編

仕掛け大全 四間飛車編 (MYCOM将棋ブックス)
著者 :所司 和晴
出版社:(株)マイナビ出版
出版日:2006-09-01
価格 :¥600(2024/02/06 04:18時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

四間飛車vs居飛車の各戦形について、タイトル通り「仕掛け周辺」の指し手について解説した本。
……というと判りにくいだろうからハッキリ言うと、定跡の駒がぶつかった瞬間からの指し手を集めた本である。
定跡の紹介であるので、「実戦的な」仕掛けであるとか、少しB級チックなちょっかいの出し方とか、そういうものを解説しているわけではない。タイトルを見て少しだけ期待したのだが、著者を見て諦めた(笑)。

内容は、5七銀左戦法の急戦から始まって、4六銀戦法や右四間飛車、烏刺し戦法といった急戦、居飛車穴熊、左美濃、玉頭位取り、ミレニアムといった持久戦、立石流や振り飛車穴熊まで、本当にいろいろな戦法が登場する。これらの戦法について、仕掛けの周辺を、見開き2ページにまとめてガイドブック的に紹介している。

元々のコンセプトが仕掛けの手順を「見開きで紹介」するということなのだろうからしょうがないのだろうが、いきなり仕掛けの場面から始まるので、局面に必然性が感じられない。通常の定跡書だと、こんな感じでお互いに最善手を指してはいこの基本図、というところからのスタートだが、それがないのだ。なので、とても役に立つ本だと思うのだが、通しで読むのが意外とキツい。あくまでも「観光案内」なので。
例えば、『るるぶ箱根』を最初のページから全ページ読む、ということを想像してもらいたい。行く予定もない場所の紹介を丹念に読むのは意外と面倒くさいものだ。……いや、これはこれで読んでて面白いから例としては不適切だったか?(笑)

紹介している定跡そのものは(当時の……ごめんなさい、すぐに紹介を書けばよかった)最新のものなので、手の意味の説明がとても少ない解説書と考えれば、かなりコストパフォーマンスが高い本だと言える。『東大将棋』シリーズの解説をもっと淡泊にしてギュッと押し込んだ感じだ。そう考えればかなり重宝する1冊にもなりうる。
定跡を勉強するため、頻繁に「あれ、この局面って……」と定跡書をひっくり返すのであれば、手元に本書があればたいていは事足りるだろう。
そういう人であれば買い。そうでない人は、ちょっと本書で勉強というのは辛いと思う。

作成日:2014.12.30 
四間飛車 仕掛け

右四間飛車戦法 四間飛車破りの決定版!

右四間飛車戦法 (スーパー将棋講座)
著者 :先崎 学
出版社:創元社
出版日:2007-04-01
価格 :¥1(2024/02/05 20:31時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

アマチュアに人気の右四間飛車を解説した本。先手右四間vs後手四間飛車の、居飛車vs振り飛車に特化した解説となっている。振り飛車が先手だとか、矢倉vs右四間の相居飛車というのももちろんあるが、それらはスッパリ切り捨てている。単純な戦法ではあるが変化の解説が多いに越したことはないので、この見切りは正解だと思う。
内容は、居飛車の玉型を3種類に分けている。

  • 舟囲い……△2四角~△3一金という秘策があって急戦は不発。
  • 米長玉……8七銀・7八金・6八金という綺麗な囲いからの攻め。▲3五歩△同歩▲3八飛という攻め筋が中心。
  • 居飛車穴熊……今度は穴熊に囲ってから攻める。米長玉同様、3筋から攻める手が中心。

急戦は振り飛車のうまい受けがあって不発、という解説を最初に持ってきたのがうまい構成で、解説の「公平感」をうまく出せていると思う。いやいやそんなあざとい読み方をしなくてもという気もするが、まぁこれはテクニックの一つということで(笑)。実際、右四間側が攻略できる変化も数多く紹介しているから、その点は評価できる。

実はどれも△5四銀型なのでそもそも振り飛車側の受けが限られるとか、穴熊の△6五銀はいろんなタイミングがあるんじゃないのかとか、ツッコミを入れればキリがないだろうが、創元社の初級者向け解説本であることを考えるなら本書くらいの構成でいいと思う。難しい話は上に行ってからで十分で、初級者はまずは攻めの「形」を覚える方が先である。
ただ、香が5枚あったのはいただけなかったかな……(笑)←ただの誤植。振り飛車が△9五香と走ったのに9一の香を消し忘れていた。

内容はとても判りやすく、変化の解説も十分にされている。攻め筋の紹介もたくさんあったし、初級者が初めに取る一冊としては良書だと思う。

作成日:2014.12.30 
四間飛車

久保利明の振り飛車の手筋1 さばきの四間飛車・急戦編

久保利明の振り飛車の手筋 1(さばきの四間飛車・急戦編)
著者 :久保 利明
出版社:山海堂
出版日:2007-10-01
価格 :¥1,572(2024/02/06 04:56時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

振り飛車党の代表選手である久保が書いた手筋本。今回は四間飛車vs急戦に絞って解説している。

四間飛車が先手の場合も後手の場合も解説されているが、▲6五歩急戦がなかったり、▲4六銀戦法で2筋を突き捨てなかったりと欠けている部分も多い。また、内容のほとんどは後手四間の解説ではあるのだが、定跡近辺の解説ではなく実戦譜の解説のようになっており(確認したわけではないのだが、問題を見ていただければそう感じた理由も判っていただけると思います)、いやそりゃあ手筋だけどさぁ……とちょっと残念な気分になった。

あと、難易度がバラバラすぎる。
△8五歩に▲7七角、という問題が2問もあった(3問だったかな?)かと思えば、とても難しい手筋がふんだんに出てきたりしている。
それと、次の一手本の宿命のようなもので仕方がないことなのかもしれないが、解説が少なすぎる。
例えば第30問で、△8八歩と桂取りに打った手に対して、▲7二歩という手筋が正解である、としている。それは正しいと思うのだが、その解説が「△7二同飛と取らせると利かしになる」だけではあまりに不親切すぎる。後手は桂取りに歩を打ったのだから、まず説明するのは△8九歩成とされたらどう切り返すか、だろう。しかしその解説は一切されていない。
実際のところ、△8九歩成は▲同飛と取っておけば、今度は△7二飛と取れない(8五に銀がいて、△8九歩成▲同飛△7二飛は▲8五飛とボロッと銀を取られる)から△6二銀と▲7一歩成を受けるくらいしかなくて、そこで▲7六銀とすれば△同銀と取れない(8五の銀が動くと▲8二飛成と飛車が素抜かれる)から後手が困っている、ということだと思われるので、問題に間違いがあるわけではない。しかし、この説明を一切省いて「利かしが一発入った」で終わらすのは不親切に過ぎる。

攻められた手に対して▲6五歩や▲7八飛という振り飛車の手筋を再三登場させることで印象を強めたりとか、大駒をぶった切って攻めたりとか、面白い問題も数多く入っており、それなりに勉強になるとは思う。実際、白砂は第53問から第54問の手筋が見えなくて解答を見て感心したし。

題材や方向性、やりたいことは間違っていないと思うのだが、料理の仕方が間違っていたのではないか、と思ってしまう。ちょっと残念だった。

作成日:2014.08.04 
四間飛車

佐藤康光の居飛車の手筋1 四間飛車粉砕編

佐藤康光の居飛車の手筋 1(四間飛車粉砕編) 急戦から居飛車穴熊まで、緩急自在の佐藤流
著者 :佐藤 康光
出版社:山海堂
出版日:2007-05-01
価格 :¥623(2024/02/06 04:05時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

次の一手形式で解説する四間飛車破りの本。
急戦からは▲4六歩急戦とナナメ棒銀、持久戦は居飛車穴熊。あと、四間飛車穴熊に対する銀冠と、立石流対策、飯島流引き角戦法が掲載されている。基本的な四間飛車対策は網羅されている感じだ。

次の一手形式なので、通常の定跡書を読むように体系的に学ぶということはしづらい。その代わり、戦法を指す上での大体の雰囲気はつかみやすくなっていると思う。
ただ、その分内容は薄くなっており、立石流▲7七角対策などは、本当に狙いを示すだけに留まっている。まぁ、個人的な思い入れも強いので「こんな手は指さないだろー」と評価が厳しくなっている部分はあるのだが(笑)。

細かいことを言うと、本書の場合、珍しく「失敗例」がほとんど入っていない。よく「▲○○と指すと失敗する。振り飛車の立場に立って考えていただきたい」みたいな感じの問題があるが、そこはバッサリ切って、各問題の中で失敗例を解説するにとどめている。居飛車党にしてみれば「そんな立場なんて知らねーよ」と(笑)、まぁそこまで極端ではないにしろ、本書のように「どうやったら成功するか」を考えるだけでいいのになぁ……と思うことはよくある。なので、ホントにこういうことするんだ……と少し驚いた。

できれば体系だった棋書を読んでもらうことを前提として、こういう本をサブテキストとして活用すれば、棋力向上も早いのではないかと思う。棋書の性格上、買って手元に置いておくとよい、とまでは勧められないが、読んでみる価値は十分にある。

作成日:2014.06.29 
次の一手 四間飛車
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