矢倉

佐藤康光の矢倉

佐藤康光の矢倉 (佐藤康光の将棋シリーズ)
著者 :佐藤 康光
出版社:毎日コミュニケーションズ
出版日:2011-03-24
価格 :¥1,650(2021/10/13 09:19時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

四間飛車藤井システムを開発した藤井が、矢倉で新機軸を見せた「矢倉藤井システム」について解説した本。なんで佐藤が解説するのかはよく判らないのだが、内容はいいからまぁよしとしよう(笑)。
そしてまたなんでか判らないのだが、森下システムとセットになっている。単純に考えると双方ともに1冊の本にするには苦しく、合わせて出版した……ということなのだろうか、内容はいいからまぁよしとしよう(笑)。

矢倉藤井システムについては、基本的な形の解説から後手の対策までをいろいろ解説している。
森下システムは、ざっくり森下システムが消えた理由を紹介した後、復活の一因となった深浦流の▲5三歩から▲5四香、それを避けて後手が△4三金右と変化する指し方を解説している。
講座編で飛ばした部分を実戦編で紹介する、という、一風変わったシステムの本で、定跡本として読むと少し「とっ散らかった」印象を受ける。白砂は体系的に読んだ方が理解がしやすいクチなので、よりそう感じたのかもしれないが。とりあえず、講座編で「先手ピンチ。対策は実戦編で」はやめようよ(笑)。

解説そのものはとても丁寧で、重要な部分では2、3手で1ページくらいのペースで進むため、初級者でも判りやすいと思う。実戦編の方でもそれくらいのペースで解説してくれるのは少し驚いた。ただ、それならやっぱり体系立ててきちんと解説してくれた方が……と思ってしまった。また、ほんの少しの工夫なのだが、それぞれの解説の概略部分では行間を少し広げて読みやすくしてくれている。これはいいアイディアだと思った。

棋書としてはきちんとまとまっていて、ちゃんと藤井システム・森下システムが理解できる良書だと思う。

ただ、ちょっと卑怯な話なのだが、個人的なことを言うと、実は以前、藤井自身による解説会に参加したことがあるのだ。その時は(当たり前だが)本人から口頭で講義を受けたのだけれども、それがまたとても判りやすかったのである。その講座の内容と比べてみると、やはり「藤井流とはどういうものなのか」という大事な部分についての解説が少ないと感じた。一応10-11ページで解説はしているし、19ページでも補足はしてあるのだが、言葉だけではなく手順や図など、もう少し工夫があればなぁ……と思う。
もちろん、これはあくまでも個人的なバックボーンあっての感想であるし、解説が判りやすいことは確かである。初級者から有段者まで、しっかりと役に立つ棋書であることは間違いない。

作成日:2015.02.14 
矢倉

矢倉5三銀右急戦

矢倉5三銀右急戦 (最強将棋)
著者 :村山 慈明
出版社:浅川書房
出版日:2014-12-01
価格 :¥1,650(2021/10/12 19:20時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

タイトルを見ただけで「あぁ、あの形か」と判る人はそれだけで上級者な気がする。というのも、あまりメジャーな戦法ではないと思うからだ。また、形が流れによってかなり変ってしまうので、「あぁ、あの形か」の「あの形」が判りにくい、というのもあるだろう。
要するに矢倉で後手が早めに△5三銀右と上がって、5筋の歩を交換する形のことである。急戦矢倉の一種ではあるのだが例えば右四間や米長流のようにただガンガン行くだけという戦形ではなく、そういう意味ではプロっぽい戦法なのかもしれない。一時期阿久津流と呼ばれたりもしていた(かな?)。

この戦法のエポックメイキングは、本書でも「衝撃のW新手」として語られている、羽生-渡辺の竜王戦6・7局だろう。本書では、それまでの5三銀右急戦がどのように指されて結局先手有利で終わったかをまず説明し、続いて上記の渡辺新手の変化を解説。そして、その後どう結論が動いていったかまでが書かれている。
類書はそんなに多くはなく、というかあるのだが前述の通り形が決まっていないため説明しづらく、形の紹介はあっても変化の解説は少ない、ということが多かったため、これだけまとまった解説がなされているということだけで貴重な一冊と言ってよいと思う。

ただ、個人的には少し読みづらかった。
基本的に定跡解説というよりは「実戦譜紹介」に近く、例えば目次にも「第1章 △2二角からの攻防(1989→1999)」とある通り、まずこんな感じで実戦に出ました。最初はうまく行ったが修正手順を指されて先手が有利とされました。次に郷田はこんな改良手を出したがうまくいかず、今度は阿久津がこんな新手を指し……といった感じで進んでいくのだ。
これが『最前線物語』くらい短いテンポで進めばいいのだが、全編これをやられるとちょっと辛い。手の解説だけであれば、その辺りはいらない状況だからだ。一応、あぁこんなことがあったなそういえば……と感慨に耽りながら(笑)読んではみたが、正直そうやって読むにしては手の説明が詳しすぎる。その辺りが『最前線物語』あたりとの大きな違いだと思う。

定跡はプロの指しての積み重ねでもあるし、プロがどうやって定跡を作り上げて行ったか、という点に面白さがあるということは、定跡ヲタとして十分に判る。しかし、やりたいことは判るのだが、ちょっと本書においてはカラ回りしてるかなぁ……と感じた。
そっちの方に重点を置きすぎて、ちょっと本の作り方が甘いかな、とも思ったし。例えば『四間飛車破り 居飛車穴熊編』などは、本書と同じくらい変化を詰め込んでいたと思うが、かなり整理整頓されてそれが紹介されていたと思う。本書には、目次の工夫もフローチャートも図面をまとめたページもない。ただプロの実戦譜が解説つきでどんどん紹介されているのだ。「定跡書」として本書を見た場合、その構成や見せ方は、残念ながら稚拙だと言わざるを得ない。

何度も言うが、狙いはいいし着眼点もよい。書かれている内容そのものも素晴らしい。
ただ、評価の通り、棋書として級位者にはとても勧められないし、有段者であっても盤駒なしでザッと読むというのはかなり辛いと思う。
いっそのこと帯にある「大河小説」のつもりで、変化等を一切深く考えずに、起こった出来事としてまず一読してみるといいのかもしれない。それでそういうプロ間の流れをつかんだ上で、もう一度しっかり「定跡部分」を読み直す。この方が盤駒なしなら読みやすいだろう。一度にやろうとするのはかなりハードルが高い。
そうでないなら、本書は盤駒を脇に置いて、しっかりと熟読するのがいいだろう。それだけの内容が詰まっている良書だと思う。

作成日:2015.01.17 
矢倉

よくわかる矢倉戦法

よくわかる矢倉戦法
著者 :関根 茂
出版社:東京書店
出版日:2002-10T
価格 :¥1,650(2021/10/13 07:12時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

『将棋は歩から』の東京書店の本。
矢倉を解説しているのだが、なにしろ復刻版なので内容はかなり古い。3七銀戦法を最新と言っているくらい古い。なので、はっきり言ってしまえば棋書マニア以外には意味のない本だと思う。
4七銀・3七桂の形などを見て懐かしい気分に浸りたい人にはいいのかもしれない(笑)。

作成日:2014.12.27 
矢倉

佐藤康光の居飛車の手筋2 強襲・矢倉編

佐藤康光の居飛車の手筋〈2〉強襲・矢倉編―3七銀戦法から対右四間飛車まで、緩急自在の佐藤流
著者 :佐藤 康光
出版社:山海堂
出版日:2007-08T
価格 :¥332(2021/10/13 02:52時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

『佐藤康光の居飛車の手筋1』に続く次の一手形式の解説本。第2段は矢倉である。
内容は基本の▲3七銀戦法に始まり、森下システム、右四間飛車、左美濃戦法。
先手番から見た矢倉であり、そういう意味では「公平な視点」で書かれている本ではない。
また、少し内容が薄すぎる気もする。例えば▲3七銀戦法は宮田新手あたりまでで、後手版の対策も△9五歩型に限られている(△8五歩型がない)。森下システムも端攻めや深浦新手がない。本当に「先手が成功する形」だけを紹介している感じだ。まぁ、入口で読んでもらう本であるので、これはこれでいいという気もするが。

vs右四間、左美濃といった形を取り上げているのもポイントが高い。ただし、右四間は△4二金対策に触れていないので、安易に使うと痛い目を見ることだけはとりあえず書いておく。使いこなしたいのであれば、別の棋書も参考にすること。

判りやすく矢倉の組み方・戦法の狙いが書かれているので、初段くらいまでの居飛車等は参考にして欲しい。有段者は知っている変化が多いので前半はいらないだろうし、例えば左美濃などは『対矢倉 左美濃作戦』といった本も出ているので、そちらを参考にした方がいいだろう。

実は、本シリーズは4巻出して(評判を見て)以下続刊、という予定だったようだ。巻末に広告が載っている。しかし、本書を出版後わずか3ヵ月後に出版社の山海堂が倒産してしまったので、34巻は出版されていない。vs中飛車・三間飛車と角換わり・横歩取りを予定したようだが、無責任な感想を言えば、とりあえず一通りは出して欲しかったなぁ……。

作成日:2014.06.29 
次の一手 矢倉

矢倉棒銀戦法

勝てる矢倉戦法 (将棋最強ブックス)
著者 :高橋 道雄
出版社:創元社
出版日:2012-05-11
価格 :¥1,430(2021/10/13 06:06時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

創元社で同じ著者が出している『最新矢倉戦法』の続編的内容の本。というより、『勝てる』シリーズの矢倉編、と言った方がいいのかもしれない。

内容は、

  • 矢倉棒銀
  • 3筋交換型
  • 4六銀戦法
  • スズメ刺し

の4つ。
とはいえ、全体的にメインストリームでない形を扱っている。
例えば、第3章の4六銀型では、後手の陣形は「△5三銀△4二角型」である。現代ではとにかく先に△6四角と牽制して、そのあと銀の動きを決めるのが一般的だろう。
悪い言い方をしてしまえば「後手に都合のいい悪手を指させている解説」なのだが、しかし良い言い方をすれば「最新定跡通りに指してこない級位者向けに、最新定跡から外れた形を解説する」本ということになる。創元社刊ということを考慮するなら、ここは好意的に考えてあげるのが優しさというものだろう。

そういうわけで、最新定跡が飛び交う有段者の役には立たないかもしれないが、緩手に対してつぶし方を知っておくのも悪くはないと思う。一度は読んでみるのもいいかもしれない。

作成日:2012.07.30 
矢倉
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