総合

久保&菅井の振り飛車研究

久保&菅井の振り飛車研究 (マイナビ将棋BOOKS)
著者 :久保 利明
出版社:マイナビ
出版日:2015-01-23
価格 :¥1,694(2021/10/13 09:19時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

現在A級唯一の振り飛車党である久保と、最近は居飛車も指していて不純粋な振り飛車党である菅井が、指定局面について自分の意見を述べる、という体裁で書いた本。
冒頭で言われているように要するに『将棋世界』の「イメ読み」の2人版なのだが、それぞれが独自の見解を述べた後、2人でいっしょに解説する、というフェーズがあるのが新しい点である。

取り上げるテーマ図は7種22テーマ。ちょっと数は多いが羅列すると……

ゴキゲン中飛車
超速の変化から、「菅井新手△2四歩」と「▲4六銀△4四銀対抗形」。▲5八金右の超急戦から、▲3三香の変化。両者の見解が一番分かれているのが本章だと思う。菅井が意外と「やれない」と考えていることに驚いた。指した当人なのに(笑)。
石田流
4手目△3二飛と、似たような変化で早石田に組んだ形。先手石田流で▲6五歩△同歩▲同桂と攻める形。
角道オープン四間飛車
角交換四間飛車の藤井手筋である▲2四歩に対する△2二歩という受けについて。もっと言うと、△3一金という形にも触れている。あとは、早い▲4六歩に向かい飛車にせずそのまま四間飛車で後手から攻める形と、藤井-羽生戦の向かい飛車+筋違い角の局面。
向かい飛車
ダイレクト向かい飛車に▲6五角とする形。対向かい飛車で▲2八飛と戻る「菅井流2手損居飛車」。升田流向かい飛車を更に斬新にアレンジした「久保流急戦向かい飛車」。……升田流向かい飛車っていうのが死語かなぁ(笑)。
先手中飛車
先手が5筋と7筋の位を取って、▲5六飛とする形。電王戦の菅井vs習甦戦。超速とは違うが、▲6六銀△6四銀と、銀がにらみ合う形。
相振り飛車
▲8五歩としておきながら▲6八飛と回る西川流▲8五歩型四間飛車。先後同形の相金無双。後手が早い段階で△4四角として、端攻めを含みにする向かい飛車。
昭和の定跡
山田定跡、鷺宮定跡、▲4五歩早仕掛け、棒銀の4つの急戦策。

かなりのボリュームで、それぞれ興味深い局面が並んでいる。

最先端の形が多いが、中には「いくらなんでもこれはテーマとしてピンポイントすぎないか」というものもあった。例えば石田流先手番の変化とか。これが通らないと振り飛車側はかなり手前で変化する必要があるので、重要なテーマではあるのだろう。それは判るのだが、いかんせんレアすぎる気が(笑)。また、逆に角交換四間飛車の変化で▲2四歩に△2二歩という形は? と聞かれても、そんなん知らんがなという感じになってしまいそうで、もう少しなかったのかいいテーマは、と思った。藤井-羽生戦もかなりなレアケースで、あまり「テーマ」という感がなかったし。
と、いくつか不満があったものの、大部分のテーマは素直に楽しめた。

特にヒットだったのが最後の「昭和の定跡」の章で、居飛車穴熊以降の世代である菅井と、居飛車穴熊以前の世代である久保の感想の違いにはビックリした。特に菅井。「急戦の定跡は知らない」「でも玉が固いし捌けているから振り飛車がいいでしょ」のオンパレード。読みながら何度も微笑んでしまったけれど、実は昔の振り飛車ってそうだったんだよね。なんだか「振り飛車のよさ」に改めて気づかされた感じがした。まぁ、居飛車穴熊以前の世代でありながら、7七桂戦法を指しているせいで△3二金という形に何の違和感も持たないという、ある意味両方の気持ちが判る人間なので、よりいっそう楽しめたのかもしれないが。

もう少し個人的なことを言わせていただくと、本書を読んでから少しだけ細かく分析してみて、実は白砂は久保派の振り飛車党だったんだなぁ……と思った。感覚というか、局面の良し悪しの捉え方がなんとなく似ているように感じたのだ。
例えば、本書の中で、同じ振り飛車党の藤井の名前が何度か出てくるが、どちらかというと「別のカテゴリ」的な扱いをされている(ように思えた)。「これは藤井だから指しこなせる」とか「藤井はこの局面がいいと思っている」とか。藤井を振り飛車党の第一人者としてリスペクトしつつも、自分の感覚だとちょっと違う、同じ振り飛車党でもやっぱり違う、という認識なのだな、と感じた。で、そうやって分類すると、白砂は振り飛車党でもどちらかというと久保寄りなのかなぁ……と。局面の感じ方についても、例えば▲6五角急戦とかゴキゲン中飛車の超急戦なんかが実はイヤだとか、攻めというよりは捌きが好き、みたいな、そういう感じが似ていると思った。

そういう視点で見てみると、本書には振り飛車党のスピリッツがそこかしこに出ていて、初段くらいの振り飛車党であれば、細かい変化はすっ飛ばして2人の掛け合いを一読するだけで間違いなく強くなると思う。振り飛車党から見て、どういう局面を「捌けている」「こっちが指しやすい」と捉えるものなのか、大局観がきっと身につくだろうから。
掛け合いと言えば、本書の2人のやりとりもとても楽しめた。特に、電王戦の菅井vs習甦戦あたりのくだりは必読である。できればこれは映像化すべきなんじゃないのかと本気で思ってしまったが、カメラが入るとすがちゃんはダメなのかなぁ……と思い直してその考えはすぐ捨てた(笑)。

級位者くらいだと少し難しい内容かもしれないが、少しガマンしてでも、上記のように難しい変化は読み飛ばしてでもいいから、振り飛車党であれば一度は読んでみてほしい。有段者にとっても参考になるだろう。良書だと思う。

作成日:2015.02.06 
大局観

谷川浩司の本筋を見極める

谷川浩司の本筋を見極める (NHK将棋シリーズ)
著者 :谷川 浩司
出版社:NHK出版
出版日:2007-02-14
価格 :¥985(2021/10/13 09:21時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

著者が、自身が務めたNHK将棋講座をまとめたもの。
序盤、中盤、終盤それぞれについての基礎的な知識と考え方が書かれている。

内容は、

  • 序盤
    • ・開始4手による17種類の戦型分析
    • ・玉の囲い方
    • ・矢倉戦、対抗型における考え方
  • 中盤
    • ・位の重要性と対抗法
    • ・仕掛けのタイミング
    • ・攻めと受けの考え方
    • ・形勢判断の方法
  • 終盤
    • ・速度の概念
    • ・詰みについて
    • ・終盤での方針

といったところ
講座で細切れに解説する必要があったからなのだろうが、コンパクトにうまくまとまっていると思う。

個人的には、中盤での形勢判断法として紹介されている「働いている駒をカウントして、多い方が有利」という簡便法が目からウロコだった。もちろん、ものすごい正確な判断法でないことは少し考えれば判ることではあるのだが、初心者にとって大事なのは「形勢判断をする」ことそのものなのだから、その方法はできるだけ簡単な方がいいに決まっている。遊び駒は悪いものであるということも分かるし、これはいい方法だと思った。

また、これは一例だけだったのだが、駒の損得と形勢判断について、とても詳細に解説しているのもよかった。

第1図。▲2三歩成というおいしい手が見えるが、それに飛びついていいのか? という問題だ。
▲2三歩成に△同金▲同飛成は先手がおいしすぎる展開でそう進めばなんの問題もないのだが、当然後手は反発してくる。▲2三歩成に対して、△2五歩▲同飛△3四銀(第2図)という手順である。
これで飛車と「と金」の両取りで、後手は受け切ることができる……と、まぁよくある入門書だと解説はここで打ち切りだろう。もう少し踏み込んで、▲3二と△2五銀(第3図)と進んだ局面を解説するくらいか。先手は金と歩を取って、プラスと金を作った。後手は飛車を取った。この取引ならまぁ互角くらいでしょう、と。

しかし本書では、第3図から「今後、先手のと金や後手の持ち飛車がどう働くか」を示し、そこまで踏み込んで形勢判断を考えよう、としているのだ。
具体的には、

  • 先手は▲2一とと駒得することができる。
  • しかし、と金が2一へ行くのは駒の効率からすればマイナスである。
  • 後手は飛車を打てば桂香を取り返すことができるので、と金で桂香を取っても一時の駒得にしかならない可能性がある。
  • よって、先手のと金と後手の飛車が、それぞれどのように働くかを判断する必要がある。

と、こういう具合に話を進めている。
初級者どころか、中級者くらいであってもかなり高度な話だと思うのだが、しかし、こういう風に形勢を判断していくことはとても大事なことだとも思う。たった一例ではあるけれども、基礎的な解説の中にも、このような上級者になるための指針のようなものが書かれているのはすごいと思った。
その他にも、「美濃囲いで飛金と角銀、どちらを渡しても大丈夫か考えるべき」など、中級者以上の人にも参考になる内容も数多い。

タイトル通り、まさに「本筋を見極める」内容の数々。級位者はもちろん、3段くらいまでの人は、一度は手に取ってみる価値はあると思う。

作成日:2015.01.06 
大局観

仕掛け大全 居飛車編

仕掛け大全 居飛車編 (マイコミ将棋ブックス)
著者 :所司 和晴
出版社:毎日コミュニケーションズ
出版日:2007-03-01
価格 :¥1,250(2021/10/12 20:26時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

『仕掛け大全 四間飛車編』『仕掛け大全 振り飛車編』に続く、仕掛け周辺の解説本。これで完結とのこと。

相居飛車ということで、矢倉・横歩取り・角換わり・相掛かりと、一通りの戦形は解説されている。
急戦矢倉や雁木、塚田スペシャルのような、誰が指してるんだという形も解説されていて、ガイドブックだから必要なんだろうなという思いと、限られた紙数なんだからもっと他に入れるべき形はあるんじゃないかという思いとが複雑に交錯してしまった(笑)。

シリーズ全般に言えることなのだが、やっぱりそもそものコンセプトがどうだったんだろうという気がする。
例えば、いろんな形・定跡をガイドブック的に紹介するというにしては、検索機能がとてもしょぼい。目次が検索の役に立たないのだ。なので、結局、大づかみでページを開いて、あとは1ページずつ見ていくしかない。で、見ていくと気づくのだが、やはり個々の変化が圧倒的に少ないため、ヒット数が少ない。正確に言えば、初期図面と指し手を照会し、ついでに解説されている変化まで対象にすればヒット率は上がるのだろうが、それを紙媒体で行うというのはとても苦痛である。
……ということで、本気で検索したいなら、結局『激指定跡道場』を買いなさい、という話になる(笑)←『激指定跡道場』には全ページ載っている。
てことはさぁ、このシリーズ3書って、ソフトに入れる局面を厳選するための抽出過程でできた指し手を集めて、それを書籍化しただけ? とか、いらぬ邪推をしてしまう。邪推だと思っていても、そう考えるとなんとなくいろんなことが腑に落ちるのだ。個々の指し手の解説が少ないとか(ソフトで1手ごとに表示される解説文はそんなに多くできないだろう)、ガイドブックといいながら検索しづらい目次とか(目がソフトの方を向いていて、紙媒体にまで目が回らなかった?)。

あくまで個人の感想なのでそこは押さえておいてほしいのだが、妄想はさておいても本書の作りがこういう意味で甘いのはきちんと指摘しておきたい。例えば目次をもう少し充実させるだけでも検索力は上がるだろう。そういう努力をもっとしてほしかった。

作成日:2014.12.30 
居飛車全般 仕掛け

仕掛け大全 振り飛車編

仕掛け大全 振り飛車編 (MYCOM将棋ブックス)
著者 :所司 和晴
出版社:毎日コミュニケーションズ
出版日:2006-12T
価格 :¥800(2021/10/12 20:58時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

『仕掛け大全 四間飛車編』に続く、仕掛け周辺の解説本。定跡を集めて、手の解説というよりは仕掛ける「形」の紹介に徹している。

今回は振り飛車編ということで、前著の四間飛車以外の、三間飛車、中飛車、向かい飛車、相振り飛車を解説している。また、冒頭に「最新の仕掛け」として、発売当時の最新形を紹介している。個人的には、ここでなぜゴキゲン中飛車を取り上げたのかが判らない。本項を「最新の四間飛車の仕掛け」として、ゴキゲン中飛車は普通に中飛車の項に組み込んだ方がよかったと思うのだが。その方が、シリーズが続いている感も出せたし(笑)。いや、最新定跡を取り上げてるんでそれはこっちにまとめました的な事なんだろうことは判るのだが、定跡の新旧よりも戦法ごとに取りまとめた方が、「ガイトブック的な定跡紹介本」という本書のコンセプトには合っていると思うのだ。

個々の内容についても、三間飛車、中飛車、向かい飛車、相振り飛車と4つに増えていることから、いっそう薄くなってしまっている。三間飛車(石田流)ブームはもう少し後だった(と思う)から仕方がないとしても、ゴキゲン中飛車や相振り飛車は結構はやっていたはずで、変化や戦形も多彩だったと思われる。であれば、読者としてはもう少し分冊するなりしてボリュームを増やしてほしかった。いろいろ難しいであろうことはよく判るので無理を言っているというのは重々承知なのだが、販売数やコスト、売上といった売り手側の「大人の事情」は脇に置いといて、読者としてはそう思ってしまう。
実際に良書は売れているわけで、ましてや総合定跡書的な内容で出版するのであれば、どっしりと腰を落ち着けた内容にしてもよかったのでは……と思う。
まぁ、コンセプト的に白砂は手元に置かないと思うので、強く言えないんだけど……。

作成日:2014.12.30 
振り飛車全般 仕掛け

仕掛け大全 四間飛車編

仕掛け大全 四間飛車編 (MYCOM将棋ブックス)
著者 :所司 和晴
出版社:毎日コミュニケーションズ
出版日:2006-09T
価格 :¥300(2021/10/13 03:06時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

四間飛車vs居飛車の各戦形について、タイトル通り「仕掛け周辺」の指し手について解説した本。
……というと判りにくいだろうからハッキリ言うと、定跡の駒がぶつかった瞬間からの指し手を集めた本である。
定跡の紹介であるので、「実戦的な」仕掛けであるとか、少しB級チックなちょっかいの出し方とか、そういうものを解説しているわけではない。タイトルを見て少しだけ期待したのだが、著者を見て諦めた(笑)。

内容は、5七銀左戦法の急戦から始まって、4六銀戦法や右四間飛車、烏刺し戦法といった急戦、居飛車穴熊、左美濃、玉頭位取り、ミレニアムといった持久戦、立石流や振り飛車穴熊まで、本当にいろいろな戦法が登場する。これらの戦法について、仕掛けの周辺を、見開き2ページにまとめてガイドブック的に紹介している。

元々のコンセプトが仕掛けの手順を「見開きで紹介」するということなのだろうからしょうがないのだろうが、いきなり仕掛けの場面から始まるので、局面に必然性が感じられない。通常の定跡書だと、こんな感じでお互いに最善手を指してはいこの基本図、というところからのスタートだが、それがないのだ。なので、とても役に立つ本だと思うのだが、通しで読むのが意外とキツい。あくまでも「観光案内」なので。
例えば、『るるぶ箱根』を最初のページから全ページ読む、ということを想像してもらいたい。行く予定もない場所の紹介を丹念に読むのは意外と面倒くさいものだ。……いや、これはこれで読んでて面白いから例としては不適切だったか?(笑)

紹介している定跡そのものは(当時の……ごめんなさい、すぐに紹介を書けばよかった)最新のものなので、手の意味の説明がとても少ない解説書と考えれば、かなりコストパフォーマンスが高い本だと言える。『東大将棋』シリーズの解説をもっと淡泊にしてギュッと押し込んだ感じだ。そう考えればかなり重宝する1冊にもなりうる。
定跡を勉強するため、頻繁に「あれ、この局面って……」と定跡書をひっくり返すのであれば、手元に本書があればたいていは事足りるだろう。
そういう人であれば買い。そうでない人は、ちょっと本書で勉強というのは辛いと思う。

作成日:2014.12.30 
四間飛車 仕掛け
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