定跡

1冊で全てわかる向かい飛車 その狙いと対策

1冊で全てわかる向かい飛車 その狙いと対策 (マイナビ将棋BOOKS)
著者 :安用寺 孝功
出版社:マイナビ出版
出版日:2018-05-16
価格 :¥1,469(2024/02/06 03:24時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

△4四歩と角道を止めてから△3二金として△2四歩と突いていく急戦向かい飛車と、向かい飛車にするメリケン向かい飛車、それと現代風の▲5六歩向かい飛車、角道オープン向かい飛車、最後に角頭歩戦法を解説している。 最初の章で振り飛車優勢の変化を多く解説し、次章に居飛車側の対策を解説する、タイトル通り「狙い」と「対策」を解説しているわけだ。読んでみると意外とスッと頭に入ってきて、これはこれでアリかなと思った。

内容的には「ちょっとさらう程度」といった感じで、例えばメリケン向かい飛車なら本家の『公望流メリケン向飛車戦法』の方が3倍は詳しい。もっとも同書は絶版のようなので簡単には読めないが。最初の△3二金型の解説もおざなりな感じだし、だったら△3二銀型も採り上げてくれればもっと面白かったんじゃないかなと思ったりもした。
ただ、本書のコンセプトがカタログ的にいろいろ紹介して、振り飛車の人は指してみてほしいし、居飛車の人はやられて困ったらこれを読んでね、という感じなのだろうから、ある程度解説が薄くなるのは仕方がないのかもしれない。

そういう視点で見れば、初段くらいまでの人は十分に「買い」だし、それより上の人も一読はしてほしい。図面の取り上げ方もいい感じなので、盤駒がなくても読めると思う。それだけちゃんと練られていると感じた。

作成日:2018.07.26 
向かい飛車

堅陣で勝つ!飯島流引き角戦法 Final

堅陣で勝つ!飯島流引き角戦法 Final (マイナビ将棋BOOKS)
著者 :飯島栄治
出版社:(株)マイナビ出版
出版日:2018-07-11
価格 :¥1,694(2024/02/06 05:29時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

これまでにも発刊されていた『飯島流引き角戦法』の最終巻(?)。角道を開けずに駒組をする対振り飛車戦法で、これだけ聞くと鳥刺しと同じだが、平美濃に固く囲って攻めるという発想を加えたところが新しい。元々は対藤井システムから生まれたものだが、今は藤井システムはねぇ……orz。

内容は後手向かい飛車と後手三間飛車、あと駒落ち。いや、それはさすがにさぁ……。
前半はまぁ面白く読めた。これは別の平美濃を解説した棋書でもあったが▲7六角と打つ筋とか、角道を開けない形を活かした面白い手だと思う。▲3三歩と垂れ歩で攻めるという攻め筋も従来の急戦形ではあまり見ない手筋で(どういう局面か頭に出てこないでしょ?)、これは通常の急戦形に逆輸入できないもんかなと思ったりもした。

角交換振り飛車やゴキゲン中飛車などの「攻める振り飛車」が台頭している今、「角道が開いてなきゃ急戦で攻めらんないでしょ」という発想は面白いと思う。なのでよりいっそう、なんで駒落ちを一緒に載せた……という思いが強い。前著が売れなくなるのはわからないではないが、改めて総集編をやるとか、前著から定跡が進んだ部分を載せるとか、やりようはいろいろあったと思うのだ。
なんか本の作り方的にどうかなぁ……と感じてしまった。

作成日:2018.07.26 
振り飛車全般 駒落ち

四間飛車・序盤の指し方 完全ガイド

四間飛車 序盤の指し方完全ガイド (マイナビ将棋BOOKS)
著者 :井出 隼平
出版社:マイナビ出版
出版日:2018-03-13
価格 :¥1,694(2024/02/06 04:56時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

四間飛車vs居飛車について、急戦も持久戦も、ほとんどの戦形を解説している。
しかも、四間飛車側は美濃囲いがメインで、居飛車穴熊などにも銀冠で戦う。なかなか「古い」形である。
取り上げた戦形を列挙すると、急戦がナナメ棒銀・4五歩早仕掛け・棒銀・鷺宮定跡。居飛車穴熊が通常の穴熊と松尾流、角交換型。その他の戦形として左美濃・5筋位取り・玉頭位取り。右四間がないくらいで、確かにほとんどの戦形は網羅してある。

解説の内容はいささか初級者向けで、例えばナナメ棒銀では△8六歩の突き捨ての形すら紹介されていない。なので▲6五歩のカウンターがまともに入って綺麗に勝つ。5筋位取りなんかも飛車を見捨てて▲7七角と出る、という懐かしい定跡がそのまま紹介されている。ノーマル四間を扱っているということから、あまり定跡が磨かれていない部分があるのは仕方がないが、白砂が学生の頃の定跡を平成最後の夏に目にするというのはなんというか……。

最新形を追うのはある意味「疲れる」ことなので、居飛車穴熊あたりに対抗できるのであれば、ノーマル四間は非常に「楽な」戦法であると言えるだろう。こちらの陣形の理想形は決まっているので、組むのが格段に楽なのだ。なので、級位者がとりあえず四間飛車一本で初段を目指す、といった使い方は有用だと思う。そういった意味であれば本書は級位者には有用だろう。
とはいっても、本書をきっかけの一冊とするのはアリだと思うが、あまりに解説が薄すぎるので、これ一冊で、というわけではいかない。他の棋書で補完する必要がある。
とはいえ、著者の井出はプロの世界でこのノーマル四間で戦っているわけで、ということは棋力さえあれば十分に戦えるはずだ。加藤一二三が「棒銀が悪いわけではない」と語っていたが、それと同じなのかもしれない。フォロワーが少ないのでノーマル四間の復権はまだまだ遠いだろうが、同じ振り飛車党としては応援したい。

作成日:2018.07.17 
四間飛車

角換わり 初段の常識

角換わり 初段の常識
著者 :塚田 泰明
出版社:マイナビ出版
出版日:2018-04-11
価格 :¥1,694(2024/02/06 05:41時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

角換わりの将棋である腰掛け銀・棒銀・早繰り銀について優しく解説した本。それぞれで一冊本が書けそうなくらいの戦法ばかりなので、とれもややカタログ的な紹介となっている。

腰掛け銀については、さすがに木村定跡の解説はなく(笑)、富岡定跡がベースとなっている。△8六歩と突き捨てる筋なども解説していて、一通り読むにはちょうどいいボリュームだと思う。最新の▲4五桂を早く跳ねる手や▲4八金型なども少しだけ触れている。
一方で、棒銀と早繰り銀は少し薄い感じがした。特に棒銀はかなり古い定跡も紹介していて、△5四角vs▲3八角なんて久しぶりに見た気がする(笑)。まぁこの戦形が多いわけでもないし、とすると定跡が止まったままなのだろう。ちなみに、白砂が学生の頃は△2四銀と打つ手が定跡で、最新形として△2四歩が出始めだったと思う。懐かしい。早繰り銀も「△6四歩型だとすぐ負けちゃうよね。なんで△7四歩型」くらいで解説が止まっている感じ。こちらも定跡の進歩はそんなにないと思うので、これまた仕方がないところだろうか。

最初に言った通り全体的にカタログ的でそれを薄いと見るか網羅していると見るか、というところだろう。白砂は後者と受け取ったので、評価もそこそこ高いものとなっている。実際に読んでいて図面の使い方などがちょうどいい感じで、うまくまとめていると思う。
タイトル通り、初段くらいまでの人であれば、角換わりをかじるという意味でも読んでいて損はないと思う。高段者の人は知っていて当然だと思うのでいらないかな。ついでに言うと、最新形を追っているわけではないので「観る将」の人もあんまり役には立たないと思う(笑)。
とはいえ、繰り返しになるがきちんとまとめられているので、高段者の人でも観る将でも、一読の価値はあるかもしれない。

作成日:2018.07.17 
相掛かり・角換わり

コンピュータ発! 現代将棋新定跡

コンピュータ発! 現代将棋新定跡 (マイナビ将棋BOOKS)
著者 :suimon
出版社:マイナビ出版
出版日:2018-06-12
価格 :¥1,694(2024/02/06 02:24時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

現在(2018年6月)流行っている、または流行っていた将棋の戦法のうち、コンピュータ将棋発のものを4つ抽出して解説した本。
もちろんプロの実戦などからも手を紹介しているが、floodgateでコンピュータ同士が対戦した棋譜を主に使用している。また、局面の評価についても、コンピュータの評価値を適宜紹介することで可視化している。昔、+とか±とか記号で形勢を表示していたものに似ているか。

戦形は以下の4つ。

角換わり▲4五桂
駒組の途中のような形からいきなり▲4五桂と仕掛けていく現代将棋の立ち位置を示すような戦法。成立する・しないは細かい形の違いによって変わってくるため、いろいろな形について、おもに玉の位置の違いを中心に解説している。
角換わり▲4八金
▲4八金▲2九飛、というか元をたどれば△6二金△8一飛型になるのかな、去年(2017年)千田がこれで升田幸三賞を取っていた形。原型となった△6二金▲5八金型と、△6二金▲4八金を解説している。
雁木
高見増田の「矢倉は終わった」に代表されるように、近年矢倉に代わって急速に指されるようになった。本書ではツノ銀型を主に解説している(もちろん通常型の雁木もちゃんとある)。
相掛かり△7四歩取らせ
説明が難しいが、早めに△7四歩と突いてそれを▲7四飛と取らせ、その飛車を△7三銀△6四銀と追い掛け回すことで手得を強調する指し方。プロでは山﨑がよく指していたと思う。これはさすがに力戦形なので体系だった解説は難しいが、いろいろな形についてまとめている。

まさに最新形の将棋ばかりだ。
形勢判断についてもかなりシビアで、いやここで先手有利かよ……というような局面もゴロゴロある。昔の『角換わり腰掛け銀研究』のような感じである。これは有段者でも読みこなすのは難しい。正直白砂も一読しただけでは入ってこなかった。ちょっと面倒でも各章ごとに3回くらいずつ読み返すか、盤駒の力を借りないと理解するのは大変だと思う。

欲を言えば、例えば▲4五桂にしても、昔は無理だと思われた形が現代に指されているわけで、例えばどの手順で無理だと思われていたのに思わぬ手があってそこに青信号が点ったから復活したとか、そういう「どんな新しい酒を盛ったのか」という部分の解説がほしかった。まぁそうなるとむしろ勝又教授の出番という気がしないでもないので(笑)、本書の立ち位置としてはあくまでも「プロを超えたコンピュータ将棋から見たプロの最新形」というこのスタイルでいいのか。

作成日:2018.06.15 
居飛車全般
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