実戦譜集

振り飛車党必読! 現代振り飛車はこう指せ!

現代振り飛車はこう指せ! (マイナビ将棋BOOKS)
著者 :佐々木 慎
出版社:マイナビ
出版日:2015-01-15
価格 :¥2,858(2024/02/07 21:09時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

第72期順位戦C級1組(平成25年度)最終戦、著者は残念ながら負けてしまい8勝2敗で終了した。ところが、昇級を争っていた中村(太)もやはり負けて同星の8-2となり、順位の差で昇級という劇的な結果となった。本書は、その順位戦の自戦解説(14567810局目)が中心となっている。
その他、ページ後半半分くらいで、角交換四間飛車と左穴熊、先手中飛車の3つについて軽い解説がある。

著者が振り飛車党であるので、タイトルがこうなっていたとしてもまぁ詐欺だとまでは言わないが、手に取って中を読むまではこれが自戦記集だとは気づきにくい。というか気づかなかったorz。後ろに講座があるとはいえ、こういう形式の本はどうなんだろうという気がする。
もっとも、解説している3つの戦形はそれぞれ力戦形でもあり、実戦譜で解説を補う風になってはいたので、まぁ意味があったのかなとは思う。
ただ、それならばそれでもう少しリンクを強くしてほしかった。講座と実戦譜の掲載順を逆にして、解説の中で「ここでこう指された場合にはこれで先手が有利になります。詳細は○ページの自戦記を……」くらい書いておくだけでイメージがだいぶ違うはずだ(なんかそれはそれでやっつけ仕事っぽい言い方だが(笑))。

定跡解説の方は、3つの戦形共にそんなに深い解説ではなく、ちょっと都合がいい手順も多い気がした。例えば、角交換四間飛車で頻出する△3五歩▲同歩△同銀に▲6六角△4四角▲同角△同銀という手順が載っていない。その代わり、判りやすい手順が続くので、戦法の「勝ち方」は判るからそれはそれでいいと思う。初段くらいまでの人は一度読んでみるといいだろう。
ただ、今はこの3つの戦法については良書も出ているので、本書をあえて選んで読むべきかというとちょっと……と思ってしまう。自戦記集に、ちょっぴりお得なおまけつき、程度の認識でいるのが一番平和なんだろうか。

正直に告白すると、買う前にパラパラ……とめくって自戦記集であることに気づいて買うのをやめてしまったのであまり強いことは言えないのだが、繰り返しになるがちょっとこういう形式の本というのはどうなんだろう、と思った。まぁ、白砂が棋譜集をあまり評価していないからよりそう思ってしまうのだが、やっぱり棋譜集というのは数は売れないんだろうなぁ。

作成日:2015.01.19 
振り飛車全般 実戦譜集

羽生vs佐藤全局集

羽生vs佐藤全局集―100局を超えたトップ対決のすべて
著者 :日本将棋連盟書籍
出版社:マイナビ出版(日本将棋連盟)
出版日:2006-09-01
価格 :¥338(2024/02/07 03:50時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

出版時点までの、羽生vs佐藤の将棋を全局収録した棋書集。公式戦107局と非公式戦2局の計109が収められている。

とはいえ、本書のキモは全棋譜ではなく、前半100ページの自戦記とインタビュー(と解説記事)にある。これが実に面白い。羽生が見た佐藤、佐藤が見た羽生、他棋士が見た二人と、いろんな立場から羽生将棋・佐藤将棋にスポットを当てている。
何度も言っている通り白砂は棋譜集というものをあまり評価していないのだが、本書はプラスアルファの部分がとてもよく、その意味では将棋を「観る」派の人まで含めて、棋力に関係なく一度読んでほしい内容になっている。

もちろん、二人の将棋であるから、将棋の内容そのものも一級品である。棋譜についている解説は少なく、「勝負のポイント」として1手についてのみスポットを当てているが、図面を2枚使って丁寧に解説しているので、棋譜並べの際は役に立つだろう。この点、よくあるABC……として短評を載せる形式とどちらがいいか迷うところではあるが、鑑賞用としては本書の形式の方が優れていると思う。

作成日:2014.12.30 
実戦譜集 読みもの

新鋭振り飛車実戦集

新鋭振り飛車実戦集 (マイコミ将棋BOOKS)
著者 :高崎 一生
出版社:毎日コミュニケーションズ
出版日:2008-02-26
価格 :¥1,518(2024/02/06 11:24時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

戸辺、遠山、長岡、高崎という4人の若手振り飛車党が書き下ろした振り飛車vs居飛車の自戦記集。
内容は、

戸辺

  • ゴキゲン中飛車▲5八金型
  • 石田流vs左美濃
  • 中飛車vs△7二飛

遠山

  • 三間飛車vs玉頭位取り
  • イビアナvs四間飛車
  • 佐藤流▲9六歩vsゴキゲン中飛車銀冠

長岡

  • 山田定跡vs△3二銀四間飛車
  • 角交換型
  • 鷺宮定跡

高崎

  • 四間飛車藤井システムvsイビアナ

いずれも振り飛車側が勝っている将棋だが、優勢のまま押し切ったものあり、大逆転ありと、そのあたりが通常の定跡書とひと味違っている。
また、すべての自戦記で「研究」と題したコーナーがあり、本譜で選択しなかった変化についての詳細な解説が入る。定跡書でいえば変化手順の解説に当たるところで、これがあるせいで、自戦記とも定跡書とも少し違ったテイストの読み物に仕上がっている。

どの層に向けて書かれたものかを考えると難しいが、そんな細かいことは考えずに、素直に振り飛車のさばきを楽しめばいい。

作成日:2008.04.18 
実戦譜集

最強の棋譜データベース 将棋倶楽部24

最強の棋譜データベース―将棋倶楽部24
著者 :久米 宏
出版社:成甲書房
出版日:2004-09-01
価格 :¥7,873(2024/02/08 02:05時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

棋書というよりはCD-ROMといった方がより正確だと思うが、将棋倶楽部24で指された棋譜を24万局以上集めたという膨大な棋譜データベース。以前にも出ていたような気がするので、これは第2弾ということになるのだろうか(<第3弾だったらどうしよう(笑))。
「本」の部分は、CD-ROMの使い方や検索方法、24の使い方などが書かれている。24を知らない人、「棋泉(検索ソフト)」を使ったことのない人は、これを読めば一応は使いこなせるようになるだろう。
あとは、第一回近将カップの観戦記と、24上位者リストが載っている。

観戦記は少しレイアウト等が読みにくかったが、プロアマ入り乱れての戦いだけになかなか面白い将棋が多かった。
個人的には、中田功が3九玉型三間飛車を指していて、思いっきり「XP」と紹介されていたのを読んで少し鬱になった。くそうこっちから読んどけば……(笑)

検索機能を利用して端攻めの攻防を勉強するとか、定跡の「その先」を知る、というのは、言われてみればなかなか面白い勉強法だ。棋譜はとりあえずは信頼できる程度に強い人のものが揃っているので、実戦特有の「強い」手順が体系的に学習できる。ただ、それをみんながみんなやればいいかというとそういうものでもないと思う。特に級位者レベルであれば、そんな勉強方法よりは素直に棋書を読んだ方が手っ取り早いだろう。

ある程度の棋力があって、「棋譜並べ」ができる人なら垂涎のアイテムだと思う。
そうでない人は、この6,800円は別のことに使った方がいい。

作成日:2004.10.13 
実戦譜集

注釈康光戦記

注釈康光戦記 (最強将棋21 #)
著者 :佐藤 康光
出版社:浅川書房
出版日:2004-08-01
価格 :¥406(2024/02/08 19:23時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

著者の自戦記をまとめた本。
ただし、書名に「注釈」とある通り、ただ今までの原稿をまとめただけではない。著者にインタビューをして、内容の疑問点や当時との感覚の違い、自戦記より更に突っ込んだ著者の意見などを各章末にまとめている。なんとなくヲタっぽいというか「注釈で笑いを取る」的な感じはなくもないが、本書の主題は間違いなくそこにある。

自戦記を雑誌などに掲載する場合、あまりに個人的に突っ込んで内容に言及するわけにはいかないし(それはそれで面白いと思うが)、時間が経ってそれを読む場合、将棋の結論が変わっていたりしてそのまま内容を鵜呑みにもできなくなる。そういったフォローが、まずこの「注釈」によってなされている。
それだけではなく、インタビューを通じて、著者の将棋、棋士に対する考え方などにも触れている。
棋士はそんなに文章がうまい人ばかりではないし、自分の意見をうまく表現できないこともある。しかし、編集がその辺りをうまく誘導尋問(笑)することによって、当人がただ書く以上の濃い内容を引き出せている。実際、著者の考える「将棋」「棋士」「センス」といった内容が、非常に判りやすく、そして面白く書かれている。

自戦記そのもののレベルも非常に高いのだが、むしろこの「注釈」の部分を読み取って欲しい。
アマ高段になって、もう一つ棋力が伸びない人。そんな人には是非とも勧めたい。きっと「足りない何か」がなんなのか判るはずだ。

作成日:2004.09.02 
実戦譜集
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