駒落ち

堅陣で勝つ!飯島流引き角戦法 Final

堅陣で勝つ!飯島流引き角戦法 Final (マイナビ将棋BOOKS)
著者 :飯島栄治
出版社:(株)マイナビ出版
出版日:2018-07-11
価格 :¥1,694(2024/08/31 15:06時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

これまでにも発刊されていた『飯島流引き角戦法』の最終巻(?)。角道を開けずに駒組をする対振り飛車戦法で、これだけ聞くと鳥刺しと同じだが、平美濃に固く囲って攻めるという発想を加えたところが新しい。元々は対藤井システムから生まれたものだが、今は藤井システムはねぇ……orz。

内容は後手向かい飛車と後手三間飛車、あと駒落ち。いや、それはさすがにさぁ……。
前半はまぁ面白く読めた。これは別の平美濃を解説した棋書でもあったが▲7六角と打つ筋とか、角道を開けない形を活かした面白い手だと思う。▲3三歩と垂れ歩で攻めるという攻め筋も従来の急戦形ではあまり見ない手筋で(どういう局面か頭に出てこないでしょ?)、これは通常の急戦形に逆輸入できないもんかなと思ったりもした。

角交換振り飛車やゴキゲン中飛車などの「攻める振り飛車」が台頭している今、「角道が開いてなきゃ急戦で攻めらんないでしょ」という発想は面白いと思う。なのでよりいっそう、なんで駒落ちを一緒に載せた……という思いが強い。前著が売れなくなるのはわからないではないが、改めて総集編をやるとか、前著から定跡が進んだ部分を載せるとか、やりようはいろいろあったと思うのだ。
なんか本の作り方的にどうかなぁ……と感じてしまった。

作成日:2018.07.26 
振り飛車全般 駒落ち

【決定版】駒落ち定跡

【決定版】駒落ち定跡
著者 :所司 和晴
出版社:マイナビ出版
出版日:2010-09-28
価格 :¥8,404(2024/08/31 17:15時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

8枚落ちから香落ちまで、駒落ち定跡を網羅したような本。
定跡手順をちゃんと解説していること、前書きに「3枚落ちと5枚落ちを外し、8枚落ちを加えた」とあることなどから、おそらく『将棋大観』を意識して書かれたものと想像する。

なので、いい点は『将棋大観』と同じで、基礎的な駒落ち定跡が覚えられること。本書を読めば、「なんで駒落ちを指すか」がよく判ると思う。定跡手順だけではなく、「ここではこう考えて攻めましょう」「こういう方針で玉を寄せましょう」といった言葉がそこかしこに出てきて、「なるほど、こういうことを勉強するために駒落ちを指すのか」というのがよく判る。
ただし、逆に言うと、そういう「駒落ち定跡」の解説しかしていないので、白砂のように『定跡なんかフッとばせ』から駒落ち定跡を勉強したような人間だと、本書は「定跡のウソ」だらけの本に見える。いや、そこまで言うのは言い過ぎではあるのだが、『定跡なんかフッとばせ』や、本書よりあとの出版だが『最強の駒落ち』のような本と比べると、かなり作り物くさく感じる。

なので、勉強をするのに本書を手に取るのは悪くないと思うのだが、本書をうのみにするのはよくないと思う。
できれば、前述の2冊を同時に読み、「実戦力」を身に着けてほしい。

作成日:2011.09.12 
駒落ち

棒銀と中飛車で駒落ちを勝て!

棒銀と中飛車で駒落ちを勝て! (NHK将棋シリーズ)
著者 :高橋 道雄
出版社:NHK出版
出版日:2011-08-11
価格 :¥1,166(2024/08/31 17:15時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

高橋は以前にも同じようなコンセプトで『駒落ち新定跡』という本を書いている。そのときは矢倉・三間飛車穴熊・四間飛車だったが、今度は棒銀と中飛車である。

棒銀、という言葉を目にしたとき、反射的に「そりゃまずいだろう」と思った。玉を囲わず突進する定跡を解説していると思ったからだ。しかしそんなことはなく、4枚落ちより上ではしっかりと矢倉などに囲っていた。矢倉囲いを手順通りに組む、というのは初心者には実は結構ハードルが高いので、駒落ちのうちからやっておくというのはそれはそれでいいのかもしれない。
中飛車のほうも、基本的にはちゃんと美濃囲いに組んでから攻める。飛車落ちの穴熊はちょっとやりすぎだろうという気もしたが、まぁ上手の形に呼応して、ということでもあるので、現代将棋の「余裕があったら穴熊」に通じるものがあるしこれはこれでいいのかもしれない。

と、なんとも歯切れの悪い解説で申し訳ないが、批判的なことを書くなら『駒落ち新定跡』のときに書いたものがそっくりそのまま今回にも当てはまる。駒落ちはある意味「負けて覚える」ためのシステムなので、それを楽勝してしまう定跡では意味がない。もちろん、既存の駒落ち定跡の作り物感というか胡散臭さはよーくわかった上で、それでもさすがにここまでやるのは「やりすぎ」なんじゃないかと。で、実はこの考え自体は変わっていないので、それが評価にブレーキをかけているところはある。

ただ、改めて考えてみるに、これから将棋を始めよう、これから強くなっていこうという人に、「負けて覚えろ」と言うのは、「茨の道を歩け」と言っているのと一緒で、そんな大変なんだったらやーめたっ! ということにもなりかねない。そうでなくても、「負けて覚える」よりも「勝って覚える」ことができるんであれば、それはそれで楽しいに違いない。

というわけなので、褒めて伸びる子もいるわけだし、本書のような駒落ちを指すというのも十分にアリだとは思う。

作成日:2011.08.25 
駒落ち

二枚落ち裏定跡

二枚落ち裏定跡 (パワーアップシリーズ)
著者 :所司 和晴
出版社:マイナビ出版(日本将棋連盟)
出版日:2005-10-01
価格 :¥785(2024/09/01 06:52時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

「定跡伝道師(ってぇキャッチフレーズもどうかと思うが……)」所司が出した2枚落ちの解説本。2歩突っ切りと銀多伝を紹介した後、5五歩止めや△6三銀の多伝殺し、△3二金△2二銀型といった上手の裏定跡を紹介している。

個人的には最後の▲3六銀型が目新しい程度で、その他の裏定跡は『定跡なんかフッ飛ばせ』などで目にしたことがある。そんなに裏……という感じがしなかったのだが、白砂が定跡ヲタであることを考えると正しい感想かどうか自信がない(笑)。

もっと言ってしまうと、それ以前に駒落ちを指す機会そのものがあまりないので、定跡ヲタ以外のどの層に購買層があるのかがよく判らない。

作成日:2005.10.26 
駒落ち

駒落ち新定跡

駒落ち新定跡: すべての駒落ちをひとつの戦法で戦う、新発想の定跡書! (スーパー将棋講座)
著者 :高橋 道雄
出版社:創元社
出版日:2005-05-01
価格 :¥505(2024/08/31 17:15時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

「面倒な定跡を覚えるより、平手感覚で指していった方が駒落ちは簡単!」というコンセプトで、平手定跡で駒落ちを指してしまおう、という本。
矢倉、四間飛車、三間飛車穴熊の3つの戦法が解説されている。

6枚落ちで三間飛車穴熊というのはどーなのよ? と言う気もするが(笑)、内容がどうこうというより、そもそも駒落ちがあまり指されていない現状で、どれだけ本書の価値があるか? という疑問がまず先に立ってしまう。
『定跡なんかフッとばせ』でも『最強の駒落ち』でも、ベースは駒落ち定跡だった。あくまでも、「既存の定跡内での勝ちやすさ」を追求するものだったわけだ。本書の場合は、平手の陣形に組んでから攻めるため、必要以上に玉が固い。
駒落ちのよさ、というか意義は、あくまでも「判りやすい形での寄せ方攻め方受け方を習得する」ことにあるはずだ。平手では上手方はかなり手を抜かないと勝負形にはならないし、そもそも寄せ形を作るまでの手数がかかってしょうがない。駒落ちは、そのプロセスをすっ飛ばして、いきなり「その部分」に行ける。だからこそ勉強になるのだ。
本書の指し方は優秀だ。それは間違いない。おそらく下手はかなり楽に勝つことができるだろう。なにしろ、攻撃力のない上手相手に自玉は矢倉や美濃や穴熊なんだから(笑)。
しかし、それでは駒落ちを指す意味がない。間違えたら反撃され潰され、「こう指しちゃいかん」と悟ることが駒落ち将棋の意義なのだ。

駒落ちを定跡通りに指す必要はないと思う。定跡を覚えることが最終的な目標ではないのだから。
ただ、2枚落ちくらいまで戦力に差がある場合、本書の指し方はなんの勉強にもならない(極論だが)と思う。
で、そういう観点で改めて本書を見た場合、戦法そのものに面白みがないし、自玉に対する憂いがほとんどないため手順にコクがない。となると、本書を「読む」層はどこなんだという根本的な問題が沸いてくる。

と、ここまで落としといてからフォローを入れるのもなんだが(笑)、戦法そのものは優秀だし、勝ちたいのであればこういう戦法を選択するのも悪くない。
その昔、大学の将棋部の合宿で駒落ちが指されていた頃、4枚落ちに対して四間飛車穴熊にして勝っている人がいた。リーグ戦の1勝をほしい、という状況でなら、そういうのもアリだと思う。
……上手の先輩はかなり怒りながら指してたけど(笑)。

作成日:2005.07.17 
駒落ち
広告