定跡

佐藤康光の居飛車の手筋1 四間飛車粉砕編

佐藤康光の居飛車の手筋 1(四間飛車粉砕編) 急戦から居飛車穴熊まで、緩急自在の佐藤流
著者 :佐藤 康光
出版社:山海堂
出版日:2007-05-01
価格 :¥623(2024/02/06 04:05時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

次の一手形式で解説する四間飛車破りの本。
急戦からは▲4六歩急戦とナナメ棒銀、持久戦は居飛車穴熊。あと、四間飛車穴熊に対する銀冠と、立石流対策、飯島流引き角戦法が掲載されている。基本的な四間飛車対策は網羅されている感じだ。

次の一手形式なので、通常の定跡書を読むように体系的に学ぶということはしづらい。その代わり、戦法を指す上での大体の雰囲気はつかみやすくなっていると思う。
ただ、その分内容は薄くなっており、立石流▲7七角対策などは、本当に狙いを示すだけに留まっている。まぁ、個人的な思い入れも強いので「こんな手は指さないだろー」と評価が厳しくなっている部分はあるのだが(笑)。

細かいことを言うと、本書の場合、珍しく「失敗例」がほとんど入っていない。よく「▲○○と指すと失敗する。振り飛車の立場に立って考えていただきたい」みたいな感じの問題があるが、そこはバッサリ切って、各問題の中で失敗例を解説するにとどめている。居飛車党にしてみれば「そんな立場なんて知らねーよ」と(笑)、まぁそこまで極端ではないにしろ、本書のように「どうやったら成功するか」を考えるだけでいいのになぁ……と思うことはよくある。なので、ホントにこういうことするんだ……と少し驚いた。

できれば体系だった棋書を読んでもらうことを前提として、こういう本をサブテキストとして活用すれば、棋力向上も早いのではないかと思う。棋書の性格上、買って手元に置いておくとよい、とまでは勧められないが、読んでみる価値は十分にある。

作成日:2014.06.29 
次の一手 四間飛車

相振り飛車基本のキ

相振り飛車 基本のキ (マイコミ将棋BOOKS)
著者 :藤倉 勇樹
出版社:毎日コミュニケーションズ
出版日:2007-09-28
価格 :¥929(2024/02/06 17:43時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

『新・振り飛車党宣言!』などでも知られる振り飛車党の書いた相振り本。

内容は、

  • 第1章 金無双・美濃囲い編
  • 第2章 矢倉・穴熊囲い編
  • 第3章 その他の戦型
  • 第4章 ポイントチェック

となっている。基本的な相振りの形はほぼ網羅されているといっていいだろう。

ガイドに徹し、ポイントを絞って解説していることから、とても判りやすく感じた。少し「矢倉原理主義」的なところがあるかなぁという気がするが、これは逆に白砂が振り飛車における矢倉をそんなに信用していないからかもしれない(笑)。
相四間飛車や原始中飛車対策など、ちょっとレアだけどアマチュアではありそうな形についてもきちんと触れられており、基本だけではあるが本当にこれ一冊で相振りの基本は押さえられると思う。

あえて文句をつけるなら、だが、原始中飛車(同じマイコミから本が出ていることもあってか『ワンパク中飛車』と言われている)で角道はそんなにすぐに突かないだろう。△3四歩(実際は先手で▲7六歩)と突いているため、△5六歩▲同歩△同飛には▲2二角成△同銀▲6五角と反撃されてしまっている。本当の原始中飛車は△5四歩△5二飛△5五歩△5六歩といきなり攻めてくるものだろう(笑)。
あと、各章のことを「ステップ○○」と呼んでいるのも少し気になった。続きになっているものもあるが基本的に各章は独立しているので、ステップとは言い難い。もう少し違う名前の方がいいと思う。細かすぎで申し訳ないが、気になると気になるもんなのよ(←日本語がヘン)。

そんな重箱の隅を突く話はさておき、本当によくまとめてあるので、せっかく5段にもなっていることだし(執筆当時は4段)、最新の変化も加えて2かなんかを出してくれるととても嬉しい。
絶版なので手に入れられないのがもったいない良書だと思う。相振り飛車を指したいのであれば、初段くらいまでは特にお勧めである。

作成日:2014.06.27 
相振り飛車

杉本昌隆の振り飛車破り

杉本昌隆の振り飛車破り (MYCOM将棋ブックス)
著者 :杉本 昌隆
出版社:(株)マイナビ出版
出版日:2007-02-01
価格 :¥462(2024/02/06 14:01時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

振り飛車党(現在は居飛車党に鞍替えしているが)の杉本が書いた振り飛車破り本。振り飛車党であれば振り飛車がやられてイヤなこともよく知っているだろう、という考えで依頼があったらしい。

内容は以下の通り。

▲3五歩急戦vs後手藤井システム
室岡新手で有名な形。かなり詳しく解説している。初段くらいまでの人は、むしろ室岡新手以前の指し方(△3五同歩・△3二金)の際の速攻手順を読んでほしい。
先手藤井システムvs居飛車穴熊
居飛車側から△4五歩と仕掛ける形や、△5五角急戦など。これも詳細に解説されている。ここまでで本の半分くらい。発刊当時(2007年)はまだ藤井システムが指されていた時代なんだなぁと思わされる。
5筋位取り急戦
もはやB級戦法に近い作戦だが、5筋位取りでなおかつ急戦というのが面白い(もちろん昔から指されていた戦法ではある)。最終的には振り飛車有利という結論になっているような気もするが(笑)、一発狙いには知っておいてもいいかもしれない。
ポンポン桂
従来からある「富沢キック」の話も出てくるが、どちらかというと藤井システム対策という感じ。これもあまり類書がないので、とりあえずは押さえておきたい変化だ。
三間飛車vs居飛車穴熊
居飛車穴熊側が△8四飛をギリギリまで受けない(その手を囲いに回す)というちょっと贅沢な指し方。先手が何もしなければしれっと1手得できるわけで当然先手は▲7四歩から動いてくるが、むしろそれを誘ってカウンターで切り返す、というのが基本的な骨格。実戦的な考え方で言えば、▲7四歩から歩を交換されるデメリットよりとにかく居飛車穴熊に囲えるメリットを追求した、とも言える。
石田流vs銀冠
最近はあまり見ない気がする(そもそも石田流を目指さない)が、▲7四歩急戦がらみで石田流がバンバン指されていた頃、居飛車側が急戦を避けて銀冠に囲うという将棋がよくあった。その形のこと。△9二飛と千日手を目指す形、と言えば判りやすいか。
山本流石田封じ
昔からの石田流対策に、▲7六歩△3四歩▲7五歩△4二玉という指し方がある。▲7八飛なら△8八角成▲同銀△4五角で、定跡の▲7六角を防いでいる(△4二玉としたため▲4三角成が先手にならない)から後手有利、という仕組みだ。そのため、△4二玉には▲6六歩と穏やかに指すのが無難、とされている。それをもっと突き詰めて、▲6六歩と穏やかに指してきたらその▲6六歩を目標に△6四歩~△6二飛と右四間にしたらどうだろう、というのがこの山本流の骨子である。なかなか面白い発想で、特に石田流という「形」を指したいという石田党にはイヤな対策だろう。

藤井システム破りに大半を割いているが、むしろ読んでほしいのはそれ以外のB級戦法の部分だ。なかなか類書がないので、こういうまとまった解説は貴重である。

本のツクリで少し言わせていただくなら、ちょっと密度の違いがありすぎてとまどってしまう。ポンポン桂などはかなり散文的に書かれているので、大体の狙いは判るのだが、じゃあ本書を読めばバッチリ指しこなせるかというと難しいと思う。
もっと言ってしまうと、密度の濃い内容とガイド的な内容を同じレイアウトで見せようというのがそもそも無理だと思うので、いっそのことどちらかに絞ってしまった方が(贅沢を言えば2冊出してしまえば)よかったんじゃないか、とさえ思う。

内容は悪くない、というかとてもいいので、初段くらいまでの人は、藤井システム関連は飛ばして(笑)、その他のページを、少し面倒でも盤駒を用意して読み込めばいいと思う。有段者は本書の内容くらいは知っていないといけないことなので、サラっと読むくらいでいいだろう。

あと、いおたんヲタの人は、わすが2ページだけどチラっと登場しているので、そうだよなぁあの連載のときはかわいかったなぁ……と思いつつ、囲碁界に呪いをかけておいてください(笑)。

作成日:2014.06.22 
四間飛車 奇襲・変態戦法

新・振り飛車党宣言! 3

新・振り飛車党宣言! 3 進化する相振り飛車
著者 :千葉 幸生
出版社:(株)マイナビ出版
出版日:2006-08-01
価格 :¥188(2024/02/06 17:33時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

振り飛車党の若手が最新の研究を発表するというコンセプトのシリーズ。今回は相振り飛車について書かれている。

講座の内容は、

  • △3三角戦法対策
  • △3二飛戦法
  • 向かい飛車vs三間飛車
  • 向かい飛車vs四間飛車
  • 石田流対策の△5四歩
  • △3三角戦法対策の居飛車

これにそれぞれの自戦記が掲載されている。
△4四銀型の三間飛車や都成流が発見される前であり、今読むとかなりオーソドックスな印象を受ける。当時の最先端が現在の常識となっていて、その常識に対する最先端がある、ということなのだろう。

2006年8月と少し古い本だが、現在へ続く流れの一つとして押さえておくのは悪くないと思う。
有段者にとっては現在では必須知識である、ということで★を少なくしたが、発刊当時であれば間違いなく★5つだっただろう。これは更新をサボっていた白砂が全面的に悪い。

作成日:2014.06.22 
相振り飛車

振り飛車穴熊戦法 軽快にバランスよく攻める

振り飛車穴熊戦法―軽快にバランスよく攻める (将棋必勝シリーズ)
著者 :福崎 文吾
出版社:創元社
出版日:2002-11-01
価格 :¥899(2024/02/10 07:27時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

振り飛車穴熊全般について書かれている本。
序盤の駒組み、中盤での捌き方、終盤のテクニックなど、一通り紹介されている。しかし、四間飛車・三間飛車・中飛車(向かい飛車は序盤のみ)の全てを解説しているため、それぞれの解説はどうしても薄くなってしまっている。また、それぞれの振り飛車について序盤~中盤の解説をする、というのではなく、序盤についてそれぞれ、中盤についてそれぞれ、となっているため、少し散漫な印象も受ける。

と、あまりよくない書き方をするとこういう感じになるのだが、創元社のコンセプト(?)である「興味を持ってもらうためにカタログ的にいい部分を説明する」を考えると、そのコンセプトに沿ってうまくまとめているとも言える。前述の解説方法についても、序盤はこんな感じでやっていきます、中盤はこんな感じです、と、ざっくり雰囲気だけを紹介したいのであれば手法としては「アリ」だろう。
それに、穴熊特有の豪快な手順が多いので、そういう意味でも「こりゃすごいや、指してみよう」と思わせる効果はあるだろう。

細かい注文をつけると、序盤編にはあった欄外のキャプション……と言っていいのかよく判らないがとりあえずこう称する。マンガ雑誌で言う「柱」の部分に、黒で判りやすく題名が書かれているのだ。これが途中からなくなっている。そのため、ページを読んでいるといきなり再度1図から始まってしまっており、少し混乱する。本書はいろんな戦形を解説しているので、これがなかなかよく機能していた。なのでなくなると結構読みづらいのだ。

個人的には、最終章の「終盤のテクニック」がヒットだった。これの最終問題は穴熊の特徴をよく表していると思う。

かなり古い本なので、今更感はあると思うが、これから穴熊を指してみようという初級者にはいい本だと思う。創元社の特徴がいい方向に転がった良書だ。

作成日:2014.06.21 
穴熊
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