総合

羽生の法則 Volume 6 仕掛け

羽生の法則 volume 6 仕掛け
著者 :羽生 善治
出版社:マイナビ出版(日本将棋連盟)
出版日:2007-03-01
価格 :¥450(2024/02/09 13:42時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

法則シリーズのラストは「仕掛け」。

「まえがき」では、さまざまな戦形の攻め方の基本を紹介する、というようなことが書いてある。ラインナップを見ると確かにその通りで、内容はこんな感じになっている。

  • 矢倉
    • 先手が▲4六角▲3六銀▲3七桂の理想形を作れた場合
    • ▲3七銀戦法の基本。▲5八飛で一手得の形
    • 脇システム
  • 振り飛車
    • 石田流角交換型
    • メリケン向かい飛車
    • 先手藤井システム
    • 後手三間飛車▲3七桂急戦
    • 後手四間飛車①▲4五歩早仕掛け
    • 後手四間飛車②▲左4六銀
    • 後手四間飛車③▲3八飛(▲6八金直が入ると鷺宮定跡)
  • 角換わり
    • 木村定跡
    • ▲7九玉△3一玉型の腰掛け銀
    • 棒銀で銀交換
    • 棒銀で端攻め
  • 相掛かり▲3七銀△4四角
  • 横歩取り
    • 8五飛戦法山崎流
    • 相横歩取り

ただ、ラインナップは確かにこうなっているのだが、それぞれの変化は乏しく、さほど網羅的というわけでもない。一番うまく行く変化を1つ紹介、くらいの感じである。
個人的には、振り飛車の紹介でいきなり石田流でしかもいきなり角交換の変化というのはどうかと思ったし、次がまたメリケン向かい飛車というのも、なんというか本筋なのかそれ? と思ってしまった(笑)。もう少し考えようがあるよねぇ……。

あと、そもそも「仕掛け」と言っているのだから、仕掛けの局面から始めた方がよかっただろう。初手から並べるのはハッキリ紙面のムダだ。そこは割り切って、変化や戦形を増やした方がもっとよかった。

全体的に、なんか薄い本(←違う意味に取らないように←意味が判らない方は気にせず飛ばしてください)という感じ。2段くらいであれば、ほぼ常識の範疇といってよく、本書を読む必要はほとんどないだろう。初級者がいろんな戦形を一渡りするのにはいいと思う。

作成日:2014.08.04 
仕掛け

阿久津主税の中盤感覚をみがこう

阿久津主税の中盤感覚をみがこう (NHK将棋シリーズ)
著者 :阿久津 主税
出版社:NHK出版
出版日:2010-12-14
価格 :¥220(2024/02/07 01:00時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

「アッくんの、めぢからあ(棒)」でお馴染みだった(そうか?)アッくんこと阿久津主税のNHK将棋講座が本になったもの。
講座は見ていたのだがテキストは買っていなかったので、どれくらい加筆されているのかどうかは残念ながら判らない。

内容は、中盤での戦い方の解説、ということになっているが、升田式石田流の形から▲7七銀~▲8六歩と攻めるものや、矢倉▲3七銀戦法で▲1五歩と端歩を詰めた場合の攻め方や▲6五歩と突く宮田新手など、定跡の続きといったものも少なくない。もちろん中盤での戦い方であることに変わりはないのだが、『金言玉言新角言』とか『羽生の新格言集105』みたいな本を期待するとちょっとがっかりするだろう。
むしろ、有段者用の突き詰める定跡書ではなく、そういう定跡書で「この手は後手不利になる」とさらっと書いてあるところを補足する、といった趣が強い。

それぞれの項頭に見開きでポイントの局面を載せ、「いい局面」「悪い局面」を事前に提示したり、その局面の差を判りやすくするために悪い局面の方はグレーの網掛けで表すなど、細かい部分にも気を使ってわかりやすく表示しようと頑張っている意志を感じた。本文の行間を通常よりやや広くして見やすくしてあるようにも感じたし、フォントやポイント数などもかなりいろんな種類を使っている気がする。それらが合わさって非常に「見やすい」本になっていて、これは評価したい。
ただ、ちょっと不満だったのが、見開きの部分の「悪い局面」のところ。全部で6図面あって、いい局面悪い局面が3図ずつある。基本的には1対1に対応している(こう指すのがいい、というのと、こう指しちゃだめ、というのが対応している)のだが、場合によっては悪い局面が進んでいく過程を表していくときがある。悪い局面1があるとして、そのまま進むと局面2、さらに進んで局面3、といった具合だ。これは、さきほどの説明にある1対1とは違う表現法になっている。
矢印で流れが表現されているので、ちゃんと読めば判ることなのだが、ここはちょっとムリでも統一してほしかった。それか、もう少し矢印を大きくして「対応」なのか「流れ」なのかを明確にするとか。ちょっと意地悪なことに、2図面は流れで1図面は対応、なんていう場合もあったりするのだ(P.226など)。

まあそんな細かい部分が逆に気になってしまうくらい、「ちゃんとした」本に仕上がっていると思った。もう少しこの形式のレイアウトの本が出てもいいんじゃないだろうか。「棋書アレルギー」の人にこそ読んでほしい一冊だ。

作成日:2011.09.12 
大局観

勝つ将棋 詰めろ入門―気持ちいいほど終盤の急所がわかる

勝つ将棋・詰めろ入門―気持ちいいほど終盤の急所がわかる
著者 :中原誠
出版社:池田書店
出版日:1999-07-01
価格 :¥159(2024/02/08 23:48時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

詰めろ入門、とあるが、要するに必死の本。また、30ページほどだが詰め将棋も載っている。

「おとなのための徹底的終盤入門書!」と折り返しに煽り文句が入っているが、入門にしては実は結構難しい。最初は簡単なのだが、後半に進むにしたがってどんどん難易度や読む手数が上がっていく。「詰めろの一手を考えてください→15手」とか言われたらそりゃあ萎えるよね(笑)。まぁ、長く使えるという意味では一冊のコストパフォーマンスは高いと思うので、入門のつもりで買った人はあせらず読んでほしい。

詰めろを探す、というアプローチは斬新だなと思った。プロの将棋でも、2手開いているから詰めろの連続で押し切る、などという展開は珍しくないが、初心者はまずその詰めろを探すのが一苦労だ。その指針の一つにはなるだろう。
問題点として、本書の場合、実は詰めろと必死の境界線が凄くあいまいで、詰めろを扱っているのに必死問題だったりしている。それだったら、詰めろのかけ方は詰めろの章だけで独立させて、必死問題は必死問題の章に移したほうが分かりがいいと思う。詰めろの解説が90ページあるのに必死の解説が50ページしかないので、ちょっとバランスがおかしい。

そういう細かい問題点はあるものの、なかなかの良書である。
表紙のイラストがちょっと持ち歩きを躊躇させるが、2段くらいまでの人であれば十分実用に耐えうる。また、4段くらいまでの人も、タイムトライアルのつもりで挑戦してほしい。白砂もやってみたが、結構詰まった問題もあった。なかなか骨っぽい本だ。

作成日:2011.08.31 
終盤・寄せ

将棋上達の方程式 手筋の公式 基礎編

将棋上達の方程式 基礎編 初級者―手筋の公式
著者 :北島 忠雄
出版社:マイナビ出版(日本将棋連盟)
出版日:2008-03-01
価格 :¥103(2024/02/08 03:22時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

駒別の手筋について、初心者(初級者ではなく、本当の意味での初心者)に解説する本。

はじめの2/3くらいで、講義形式でずーっと手筋を解説するという、かなり贅沢というか丁寧というか、ありそうでなかった形式を取っている。『寄せが見える本』の初心者版、といった感じだろうか。この形式は評価したい。
題材も、初心者向けということで、▲2二歩と打って桂馬が取れますとか、▲2五香で田楽刺しですとか、▲4一銀と割り打ちますとか、そういうレベルのものを一通り集めている。半可通の方が見ると「こんなカンタンすぎるもの」と哂いそうなものもたくさんあるが、こういう知識の集成が実は上達には一番いいのだ。著者はそこのところをよーくわかっているのだろう。本文中のイラストも含めて、物を教える才能があるのだと思う。こういう人はこういう人で立派なプロだ。

本音を言えば、個人的には若干文章が気になった。もう少し練ればさらに読みやすくなるのでは……と感じる部分も多々あった。ただ、この点については個人の手癖の部分が大きいからなんとも言えないのかな……と考えることにしている。

後ろのほうにちょっとだけ高度な(単に手数が長いだけと言ってしまえばそれまでなのだが(笑))手筋を載せて、「これが理解できたんだ。上達したんだなオレって」と読み手の心理をくすぐることも忘れていない(←冗談ですが、まったくの妄想ではないと思います)。なかなかに練られた良書だと思う。

作成日:2008.07.21 
終盤・寄せ

3手1組プロの技

3手1組プロの技 (マイコミ将棋ブックス)
著者 :片上 大輔
出版社:毎日コミュニケーションズ
出版日:2007-08-21
価格 :¥1,000(2024/02/06 04:05時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

3手一組の指し手を考える、次の一手ならぬ次の三手本。
考えてみれば、次の一手というものは次の一手だけを当てればいいというものではなく、その局面から勝ち筋有利筋を引き出すものだ。そういう意味では、一手だけではなく連続した手筋というのを扱うのも当然といえば当然である。

本書で扱っている3手一組は、「歩の手筋」「攻めの手筋」「しのぎの手筋」の三種類。計86問である。
白状すると、結構難しかった。
いわゆる手筋的な……という表現はよろしくないのだろうが、いかにも作りもの的な問題はさすがにすぐにわかった。ただ、タイトルどおり「プロの技」がたくさん詰まっているので、パッと正解が浮かぶという問題ばかりではない。問題を解く、というより、プロの技を鑑賞するといった感じになってしまった。

それぞれのテーマごとに最初に少しだけ解説が載っているが、それもなかなか親切でよかった。
量産するのは難しいジャンルかもしれないが、こういう本がもっとたくさん出ると、3段くらいからのステップアップにはいいと思った。

作成日:2008.04.18 
次の一手 手筋
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