その他

渡辺明の思考: 盤上盤外問答

渡辺明の思考: 盤上盤外問答
著者 :渡辺 明
出版社:河出書房新社
出版日:2014-09-22
価格 :¥450(2024/02/06 05:38時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

虫嫌いで石川梨華と「ぬい(ぬいぐるみ)」が大好きな「渡辺くん」にいろんな質問をして、それについて渡辺が答える、という本。渡辺に興味がない人にとっては「なにが面白いんだ」となってしまいそうで、まぁある意味それは正しいのだが、羽生に勝つために渡辺2号を出してきたり、金と銀の優劣について真剣に考えたり、ファンでなくても楽しめると思う。
ファンももちろんだが、(こういう無粋なことはあまり言いたくないが)カンニング問題などでアンチ渡辺になってる人にこそできれば読んでほしい。かなり断定的なことも言っているので癇に障る部分もあるかもしれないが、ちゃんとした将棋ファンであれば、それらのことについてそういう考えの人がいてもいいな、と思えるだろうし、それなりに渡辺を再評価できると思う。

構成がごとげんとのことで、イメージ的には、「後藤元気のごとげん♥らぶりんですっ♥」に渡辺がゲストで出てきて視聴者メールを元にトークをする、という感じだろうか。そういえば、なんでアイドルラジオの投稿って「○○でした。○○ちゃんは××なとありませんか、教えてください」ばっかりなんだろうねぇ。まぁ自分がビジュルムで採用されたメールもそういう文章にしたんで人のことは言えないんだけども(笑)。
2017年はちょっと成績がふるわなかったが、頑張ってほしいなぁ……くらいには渡辺のことが好きになる本(個人的には、棋風があんま好きじゃないんで応援はしてなかったし今後も多分しない)。

作成日:2018.01.17 
読みもの

中学生プロ棋士列伝

中学生プロ棋士列伝 (洋泉社MOOK)
著者 :
出版社:洋泉社
出版日:2017-09-27
価格 :¥1,320(2024/02/06 05:38時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

加藤・谷川・羽生・渡辺・藤井という「中学生の時にプロになった棋士」にスポットを当て、人物像や経歴などを紹介する本。以前、瀬川がプロ棋士になった際にもそういう便乗本がいろいろ出たが、藤井フィーバー(あー表現がおっさんだなー)に当て込んでそんな意図で作られた本の一つなんだろうか。
ただ、書いているのが大川ということもあってか、中身は至極まともな作りになっている。棋譜や図面をほとんど出さず、逆に例えば加藤の奇行エピソードなども極力触れずに、純粋に棋士としての凄さを紹介している。これは好感が持てた。また、プロ棋士になるまでの行程や永世資格の条件、過去のタイトル戦の記録などもうまくまとめてあって、将棋を知らない大人が「プロになるのは大変なんだ」「すごい羽生が○連勝してる」など、データからも感心してもらえるようになっている。

唯一、どうしようもないのだが残念なところと言えば、発行が2017年10月だったことか。羽生の紹介ページで「あと1期で永世竜王だ」と触れられているが、これが永世7冠を持っている、あるいはもっと進んで国民栄誉賞まで話が及んでいれば、もっとインパクトが強かったはずだ。まぁ10月でももう藤井ブームも終わってる感があったと思うのでそれでも遅かったとは思うが、羽生の伝説、それも一番大きな伝説を記すことができるのとできないのとでは大きな違いがあるだろう。ホントにしょうがない話だとどうでもいいことではあるのだが。

藤井を入口にしてプロ棋士、あるいは将棋そのものに興味を持ってもらうためにはちょうどいい一冊だと思う。「指さない将棋ファン」なら持っていても損はない。個人的には「将棋連盟が棋譜を保存するようになったのは加藤が中学生プロになったのがキッカケ」というのが知らなかったので驚きだった。

作成日:2018.01.17 
読みもの

振り飛車党必読! 現代振り飛車はこう指せ!

現代振り飛車はこう指せ! (マイナビ将棋BOOKS)
著者 :佐々木 慎
出版社:マイナビ
出版日:2015-01-15
価格 :¥2,858(2024/02/07 21:09時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

第72期順位戦C級1組(平成25年度)最終戦、著者は残念ながら負けてしまい8勝2敗で終了した。ところが、昇級を争っていた中村(太)もやはり負けて同星の8-2となり、順位の差で昇級という劇的な結果となった。本書は、その順位戦の自戦解説(14567810局目)が中心となっている。
その他、ページ後半半分くらいで、角交換四間飛車と左穴熊、先手中飛車の3つについて軽い解説がある。

著者が振り飛車党であるので、タイトルがこうなっていたとしてもまぁ詐欺だとまでは言わないが、手に取って中を読むまではこれが自戦記集だとは気づきにくい。というか気づかなかったorz。後ろに講座があるとはいえ、こういう形式の本はどうなんだろうという気がする。
もっとも、解説している3つの戦形はそれぞれ力戦形でもあり、実戦譜で解説を補う風になってはいたので、まぁ意味があったのかなとは思う。
ただ、それならばそれでもう少しリンクを強くしてほしかった。講座と実戦譜の掲載順を逆にして、解説の中で「ここでこう指された場合にはこれで先手が有利になります。詳細は○ページの自戦記を……」くらい書いておくだけでイメージがだいぶ違うはずだ(なんかそれはそれでやっつけ仕事っぽい言い方だが(笑))。

定跡解説の方は、3つの戦形共にそんなに深い解説ではなく、ちょっと都合がいい手順も多い気がした。例えば、角交換四間飛車で頻出する△3五歩▲同歩△同銀に▲6六角△4四角▲同角△同銀という手順が載っていない。その代わり、判りやすい手順が続くので、戦法の「勝ち方」は判るからそれはそれでいいと思う。初段くらいまでの人は一度読んでみるといいだろう。
ただ、今はこの3つの戦法については良書も出ているので、本書をあえて選んで読むべきかというとちょっと……と思ってしまう。自戦記集に、ちょっぴりお得なおまけつき、程度の認識でいるのが一番平和なんだろうか。

正直に告白すると、買う前にパラパラ……とめくって自戦記集であることに気づいて買うのをやめてしまったのであまり強いことは言えないのだが、繰り返しになるがちょっとこういう形式の本というのはどうなんだろう、と思った。まぁ、白砂が棋譜集をあまり評価していないからよりそう思ってしまうのだが、やっぱり棋譜集というのは数は売れないんだろうなぁ。

作成日:2015.01.19 
振り飛車全般 実戦譜集

羽生vs佐藤全局集

羽生vs佐藤全局集―100局を超えたトップ対決のすべて
著者 :日本将棋連盟書籍
出版社:マイナビ出版(日本将棋連盟)
出版日:2006-09-01
価格 :¥338(2024/02/07 03:50時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

出版時点までの、羽生vs佐藤の将棋を全局収録した棋書集。公式戦107局と非公式戦2局の計109が収められている。

とはいえ、本書のキモは全棋譜ではなく、前半100ページの自戦記とインタビュー(と解説記事)にある。これが実に面白い。羽生が見た佐藤、佐藤が見た羽生、他棋士が見た二人と、いろんな立場から羽生将棋・佐藤将棋にスポットを当てている。
何度も言っている通り白砂は棋譜集というものをあまり評価していないのだが、本書はプラスアルファの部分がとてもよく、その意味では将棋を「観る」派の人まで含めて、棋力に関係なく一度読んでほしい内容になっている。

もちろん、二人の将棋であるから、将棋の内容そのものも一級品である。棋譜についている解説は少なく、「勝負のポイント」として1手についてのみスポットを当てているが、図面を2枚使って丁寧に解説しているので、棋譜並べの際は役に立つだろう。この点、よくあるABC……として短評を載せる形式とどちらがいいか迷うところではあるが、鑑賞用としては本書の形式の方が優れていると思う。

作成日:2014.12.30 
実戦譜集 読みもの

伊藤果の詰将棋110

伊藤果の詰将棋110 (マイコミ将棋ブックス)
著者 :伊藤 果
出版社:毎日コミュニケーションズ
出版日:2007-07-24
価格 :¥1,130(2024/02/06 01:37時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

『週刊将棋』の「詰将棋ロータリー」に掲載された作品をまとめたもの。この「詰将棋ロータリー」は短手数ながら結構骨太の問題も多く、毎週楽しみにしているコーナーである。ましてや伊藤果。これを全問解くのは結構大変だった。

初形はとっつきやすいし、趣向作もさほど多くないので、詰将棋鑑賞用というよりは将棋力向上の素材としていいと思う。3~4級の人から、3段くらいまでの人まで、幅広く楽しめるだろう。
作者が伊藤果でもあり、合駒、特に中合いとか移動合が結構出てくる。それにヤマを張って解くというのは邪道だが(笑)、頭の中で盤駒をキッチリ動かすいい訓練にはなると思う。そういう意味でもトレーニング向きの素材といえるだろう。

通勤電車の中で3問、寝る前に1問と、少しずつでもいいから頑張って解いてみてほしい。そういう意味では、常に手元に置いておきたい1冊である。

作成日:2014.12.30 
詰将棋
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