2011

よくわかる角交換振り飛車

マイコミ将棋BOOKS よくわかる角交換振り飛車
著者 :横山 泰明
出版社:毎日コミュニケーションズ
出版日:2011-08-25
価格 :¥267(2024/02/06 08:41時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

「よくわかる」シリーズ第4弾、ということらしく、角交換をする振り飛車を解説する本。
なんだか茫洋としたタイトルだが、内容を見てもらった方が早いだろう。

序章 角交換型振り飛車の特徴
角交換振り飛車の概要を解説
第1章 ゴキゲン中飛車対丸山ワクチン
△5六歩から歩交換ができた場合は△2一飛と回って飛車先逆襲。できなかった場合は△2二飛から銀冠、もしくは銀冠から△2二飛。
第2章 △3三角戦法
角交換から▲2五歩ときた場合は△2五桂ポン。角交換後に▲2五歩とこない場合は立石流。角交換してこない場合は角筋オープン向かい飛車。
第3章 角交換型四間飛車
▲2五歩と突いてきた場合は△3三銀から飛車先逆襲もしくは△4四銀から△3五歩。▲2五歩と突いてこなかった場合は持久戦。レグスペに合流。
第4章 角交換型石田流
升田式石田流。▲7四歩急戦などではなく、美濃に囲ってから攻める形。▲7四歩と交換できた場合とできなかった場合。
第5章 その他の角交換振り飛車
2手目△3二飛戦法・ダイレクト向かい飛車・端歩位取り角交換振り飛車。それぞれさわりだけ。

大体こんな感じだ。

本当に「さわり」だけなので、類書を紹介しているケースも多い。『角交換振り穴スペシャル』や『2手目の革新 3二飛戦法』などである。また、各章それぞれの戦法についても、類書がまったくないというわけではない。本書はあくまでも「どういうものか見てみよー」的なガイドの一冊である。なので、紹介されているのは、別の本を見れば必ずどこかに書いてあるだろうという変化ばかりと言っていい。
解説はごく基本的なものに限られているし、「少し有利」かな、ぐらいのところまでで終わっている。ひどいときには、立石流の1変化で「銀交換してるから指しやすい」で終わっているものもある。実際はちょっと立石流難しいんじゃないか、とも思える局面でだ。

とはいえ、あくまでもガイドの一冊。割り切って読むのであれば十分すぎる内容である。類書を紹介しているということは「あとはそっちを読んで詳しく勉強してね」ということであり、あとは知らんと突っぱねているわけではないのだし親切ではある。
また、違う戦法でも同じ形になっていくよ、というのが判りやすいのもいい点だと思った。結局片銀冠にして飛車を2筋に回りゃいいんだろみたいな(笑)。

3~4段以上であれば、本書の内容は知っていなければならないことなので、読む価値はない。
逆に、これから角交換振り飛車を指してみよう、と思っている初段前後の人であれば、まずは何をおいても本書から読むべき。それくらいガイドとしては優れている本だと思う。

作成日:2011.08.29 
振り飛車全般

60分でわかる!はじめてでも勝てる将棋入門

はじめてでも勝てる将棋入門―60分でわかる!
著者 :神吉 宏充
出版社:PHP研究所
出版日:2011-02-01
価格 :¥142(2024/02/07 05:49時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

棋界のエンターテイナーカンキが贈る将棋入門書。60分でわかる! というのはさすがに誇張なのだが、実際読んでみるとかなりわかりやすい。

まず、「どの駒が取れるか」「どこにどう動けば(打てば)たくさんの駒当たりになるか」についての解説を非常に丁寧にやっていること。これは、駒の利きをしっかり教えると同時に、実戦に必要な「相手の駒を取る」「駒を取られないように逃げる」ための技術を養うのに役立つ。将棋はの目標は相手を詰ますことなのだが、それ以前に将棋が楽しく指せるためには駒をボロボロ取られてしまうようではダメで、そこをまず押さえるというのは理に適っている。
また、その教え方も極端で、例えば、次の一手に下図のような問題を出す。これでわからない子供はまずいないだろう。笑いながらきちんと技術を覚えていくことができる。

 ついでに言うと、これは二歩の反則の説明の図である(笑)。


また、実戦の説明の前に、自分の駒だけを動かして矢倉・美濃・穴熊を作らせてみる、という試みもいい。
定跡手順などという以前に、とにかくこういう形を作りたいんだよ、その形はこういう手順だと作れるね、だから定跡はこういう手順で進んでいくんだよ、というのが体感できる。

さらに驚いたのが、最後の実戦編。なんと▲7六歩△3四歩▲7七桂の鬼殺しを使って解説しているのだ。
ただ、読んでみて納得したのだが、入門書で実戦の手順を解説をするというのは、その手順を覚えてもらうというよりは、符号になじんでもらったり、攻めが決まる快感を味わってもらったりという要素が強い。そう考えると、奇襲戦法を使って解説するというのは逆に適切だとも言える。もっとも、その味を覚えて白砂みたいな棋風になってしまわないかという危惧はあるのだが……(笑)。

ちなみに、この鬼殺し、一般的な奇襲成功例だけではなく、△6四歩対策と△6二金対策も載っている。
△6四歩には▲6八飛~▲6六歩として▲6五歩△同歩▲同桂と捌いていく、△6二金には▲2六歩▲2五歩▲2六飛▲7六飛として石田流に組む(!)、と解説している。なかなか面白い対策で、特に△6二金対策などは「奇襲が失敗しても玉を囲ってじっくり指す」という本格的なもので、将棋の本筋でもある(いや、鬼殺しが本格的だと言うわけじゃなくてね(笑))。最後の最後にチョロっと触れられているだけなのだが、単純な奇襲だけではないというエクスキューズが入っているのは評価したい。

どうなんだろう……という点について少し書いておくと、まず、正直「進級制」というシステムはどうでもいいと思った。これで少しずつ階級が上がっていくから「わーい楽しい」とはならないと思う。おそらく実際の将棋教室でやれば子供を飽きさせずに惹きつけることは可能だろう。「よーしここまでできたら25級ね」というのが説明の一区切りにもなって気分的に一段落できるし。ただ、棋書の場合は自分のペースで本を読み進んでいくので、ページをめくるという作業がすでに一区切りにもなっているから、その効果はなくても十分子供は付いてくると思う。
それと、本当に細かいことなのだが、棋譜の書き方で、先手の場合は▲7六歩と黒なのだが、後手の場合は3四歩と灰色になっていて、特にピンクがバックのページではわかりづらかった。これは普通に△3四歩と白にしてよかったんじゃないだろうか。

と、細かいことを言ったが、入門書としてはかなりの良書だと思う。
本書だけで「将棋が強くなる」ということは絶対にないと断言してしまうが、本書を読めば(60分以上は絶対にかかると思うが(笑))絶対に「将棋が一局指せるようになる」とは断言できるだろう。

作成日:2011.08.28 
入門 その他

よくわかる将棋入門

よくわかる将棋入門 (ビッグ・コロタン 112)
著者 :古作 登
出版社:小学館
出版日:2008-08-01
価格 :¥5(2024/02/06 05:28時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

駒の動かし方から定跡、詰めまでの一通りを押さえた入門書。
すべての漢字にルビが振ってあり(符号は別)、また、「とちゅう」「特ちょう」など難しい漢字はひらがなで書くなど、子供が読むことを前提に作られている。しかし、「特ちょう」は「とくちょう」でよかったんじやないかな……(笑)。

本当に「最初から順番に読んでいって、読み終われば強くなる」という作りになっていて、ルール説明で詰みの概念を説明したあと、「もういくつか、詰みの例を見ていきましょう」と言って一手詰の問題を7問出したり、詰めろや必死の概念を実戦例の前に解説したり、いろいろ工夫している。
実戦例も、小田切式8枚落ち(今なら「ハム将棋の8枚落ち」と言った方がいいのかな)で終局まで解説したあと、相掛かり棒銀、四間飛車の序盤を見せ、そのあと玉の囲いの説明に入り、駒別の手筋を解説し、そこからもう一度矢倉棒銀と四間飛車の将棋を中終盤まで解説している。駒落ちの「駒が少ない状態」で符号を追うのに慣れさせてから、平手の形を見せ、強くなるためのエキスを解説したあと本格的な説明に入る、という作りだ。
そのため、目次を見ただけだととっ散らかっているように見えるのだが、実際は関係が深いものをちゃんと並べているので、本当に将棋教室で講師が解説しているかのような順序で進んでいくように感じる。うまい方法だと思う。

後半で格言により「将棋の方向性」を示唆していることや、渡辺へのインタビューという体裁を使って勉強方法などを伝える(プロが薦める方法なんだからボクもやろう、と自発的にそういう勉強法を取らせるようにうまく誘導しているわけだ)など、「本を読んだそのあと」について細かい配慮をしている点もいい。また、マナーについていろいろ言及しているというのも大事なところだ。

ページ数をもう少し増やすとかしてもうちょっとボリュームが出せれば、この一冊で3級くらいまで、という本になったのに、とも思うが、まぁ200ページもあるし850円だしと考えると仕方がないのかもしれない。これ以上本が厚くなると子供が手に持ちづらくなる、ということもあるし。

なかなかの良書だと思う。
……そういえば、本書のイラストの先生。これは渡辺なんだろうか古作なんだろうが……?(笑)

作成日:2011.08.28 
入門

棒銀と中飛車で駒落ちを勝て!

棒銀と中飛車で駒落ちを勝て! (NHK将棋シリーズ)
著者 :高橋 道雄
出版社:NHK出版
出版日:2011-08-11
価格 :¥1,320(2024/02/08 14:35時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

高橋は以前にも同じようなコンセプトで『駒落ち新定跡』という本を書いている。そのときは矢倉・三間飛車穴熊・四間飛車だったが、今度は棒銀と中飛車である。

棒銀、という言葉を目にしたとき、反射的に「そりゃまずいだろう」と思った。玉を囲わず突進する定跡を解説していると思ったからだ。しかしそんなことはなく、4枚落ちより上ではしっかりと矢倉などに囲っていた。矢倉囲いを手順通りに組む、というのは初心者には実は結構ハードルが高いので、駒落ちのうちからやっておくというのはそれはそれでいいのかもしれない。
中飛車のほうも、基本的にはちゃんと美濃囲いに組んでから攻める。飛車落ちの穴熊はちょっとやりすぎだろうという気もしたが、まぁ上手の形に呼応して、ということでもあるので、現代将棋の「余裕があったら穴熊」に通じるものがあるしこれはこれでいいのかもしれない。

と、なんとも歯切れの悪い解説で申し訳ないが、批判的なことを書くなら『駒落ち新定跡』のときに書いたものがそっくりそのまま今回にも当てはまる。駒落ちはある意味「負けて覚える」ためのシステムなので、それを楽勝してしまう定跡では意味がない。もちろん、既存の駒落ち定跡の作り物感というか胡散臭さはよーくわかった上で、それでもさすがにここまでやるのは「やりすぎ」なんじゃないかと。で、実はこの考え自体は変わっていないので、それが評価にブレーキをかけているところはある。

ただ、改めて考えてみるに、これから将棋を始めよう、これから強くなっていこうという人に、「負けて覚えろ」と言うのは、「茨の道を歩け」と言っているのと一緒で、そんな大変なんだったらやーめたっ! ということにもなりかねない。そうでなくても、「負けて覚える」よりも「勝って覚える」ことができるんであれば、それはそれで楽しいに違いない。

というわけなので、褒めて伸びる子もいるわけだし、本書のような駒落ちを指すというのも十分にアリだとは思う。

作成日:2011.08.25 
駒落ち

よくわかる角換わり

マイコミ将棋BOOKS よくわかる角換わり
著者 :西尾 明
出版社:毎日コミュニケーションズ
出版日:2011-08-19
価格 :¥10(2024/02/06 08:42時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

角換わり、となってはいるが、基本的には現代の花形戦法である角換わり腰掛け銀を中心に解説した本。
めずらしく「木村定跡」から解説をしていて、▲8八玉△2二玉型では先手有利。じゃあ後手が一手早く仕掛けよう、ということで△2二玉の一手を省いて▲8八玉△3一玉型で仕掛けると後手有利。じゃあ▲8八玉もやめよう、ということで▲7九玉△3一玉型、という一連の流れが解説されていたのは驚いた。
その後、現代の角換わりということで一手損角換わりの話になり、相腰掛け銀、早繰り銀、棒銀、右玉といった対策の解説へと進んでいく。

その昔、『消えた戦法の謎』という本で「角換わりは三すくみの関係だったが腰掛け銀だけになった」みたいなことが書いてあったが、一手損角換わりが登場したことによってまたその「いろいろ入り混じったとっ散らかった状態」に戻ったとも言える。本書は、そのいろいろカオスになった状態の角換わりを丁寧にほどいて解説した本、というわけではない。そうではなく、おいしいところ、基本の部分だけをうまいことすくい出して整理してくれた本である。
なので、高段者であれば改めて読むまでもない(とまで言うと大げさだが)が、初段前後の人であれば役に立つだろう。

角換わりのはじめの一歩にはピッタリの本だと思う。

作成日:2011.08.25 
相掛かり・角換わり
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