コンピュータ発! 現代将棋新定跡

作成日:2018.06.15
コンピュータ発! 現代将棋新定跡 (マイナビ将棋BOOKS)
著者 :suimon
出版社:マイナビ出版
出版日:2018-06-12
価格 :¥1,694(2024/02/06 02:24時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

現在(2018年6月)流行っている、または流行っていた将棋の戦法のうち、コンピュータ将棋発のものを4つ抽出して解説した本。
もちろんプロの実戦などからも手を紹介しているが、floodgateでコンピュータ同士が対戦した棋譜を主に使用している。また、局面の評価についても、コンピュータの評価値を適宜紹介することで可視化している。昔、+とか±とか記号で形勢を表示していたものに似ているか。

戦形は以下の4つ。

角換わり▲4五桂
駒組の途中のような形からいきなり▲4五桂と仕掛けていく現代将棋の立ち位置を示すような戦法。成立する・しないは細かい形の違いによって変わってくるため、いろいろな形について、おもに玉の位置の違いを中心に解説している。
角換わり▲4八金
▲4八金▲2九飛、というか元をたどれば△6二金△8一飛型になるのかな、去年(2017年)千田がこれで升田幸三賞を取っていた形。原型となった△6二金▲5八金型と、△6二金▲4八金を解説している。
雁木
高見増田の「矢倉は終わった」に代表されるように、近年矢倉に代わって急速に指されるようになった。本書ではツノ銀型を主に解説している(もちろん通常型の雁木もちゃんとある)。
相掛かり△7四歩取らせ
説明が難しいが、早めに△7四歩と突いてそれを▲7四飛と取らせ、その飛車を△7三銀△6四銀と追い掛け回すことで手得を強調する指し方。プロでは山﨑がよく指していたと思う。これはさすがに力戦形なので体系だった解説は難しいが、いろいろな形についてまとめている。

まさに最新形の将棋ばかりだ。
形勢判断についてもかなりシビアで、いやここで先手有利かよ……というような局面もゴロゴロある。昔の『角換わり腰掛け銀研究』のような感じである。これは有段者でも読みこなすのは難しい。正直白砂も一読しただけでは入ってこなかった。ちょっと面倒でも各章ごとに3回くらいずつ読み返すか、盤駒の力を借りないと理解するのは大変だと思う。

欲を言えば、例えば▲4五桂にしても、昔は無理だと思われた形が現代に指されているわけで、例えばどの手順で無理だと思われていたのに思わぬ手があってそこに青信号が点ったから復活したとか、そういう「どんな新しい酒を盛ったのか」という部分の解説がほしかった。まぁそうなるとむしろ勝又教授の出番という気がしないでもないので(笑)、本書の立ち位置としてはあくまでも「プロを超えたコンピュータ将棋から見たプロの最新形」というこのスタイルでいいのか。