大局観

これで簡単形勢判断

これで簡単形勢判断
著者 :高野 秀行
出版社:(株)マイナビ出版
出版日:2001-09-01
価格 :¥2,196(2024/02/07 22:21時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

「大局観」に関する著書は意外と少ないが、その最新刊になると思う。『これにて良し? 四間飛車VS急戦定跡再点検』の続編といってもいい内容である。
基本的なコンセプトは前回と変わらない。従来から言われている形勢判断の4つの要素……駒の損得、玉型、駒の働き、手番……を分析して、現在の局面の形勢判断をするというものである。初級者にとっては大事なことなので、本書を読んで勉強するのはいいと思う。

ただ、題材が「ありきたり」というかそんなにたいしたものではない(と白砂は感じた)ので、初段以上の人が改めて読むのはどうだろう、という気がした。いくつか面白い変化はあったので損はしないと思うが、かといっておぉそうかと感銘を受けるほどではない。
個人的に言わせてもらえば、本当にプロが本書のような形勢判断法をもって形勢判断を行っているのかどうかが気になる。なんかこの4つの要素というのは「使い古された感じ」がしてしまうのだ。
例えば「駒の働き」という項目。なにをもって働いているかをどうやって判断するか、というのが形勢判断方のひとつだと白砂は思うのだがどうだろう。「それがわかりゃ苦労しねえんだよ」みたいな(笑)。非常に抽象的だと思う。
逆にプロになればなるほどそういう部分は「感覚」でわかるようになってくるので、それを文字にして伝えるのは難しいのだとは思う。しかし、初級者の底上げのために本当に役立つのはそういう感覚の部分を数値化・言語化することだと白砂は考えている。その点、ちょっと本書には不満がある。

もちろん、それこそ「それができりゃ苦労しねえんだよ」というプロの声が聞こえてきそうな贅沢な要求なのだが(笑)。

作成日:2001.09.28 
大局観

週刊将棋の伝説シリーズ4 大覇道伝説

大覇道伝説―秘法巻之参
著者 :週刊将棋
出版社:(株)マイナビ出版
出版日:1991-09-01
価格 :¥50(2024/02/06 09:06時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

定跡をなぞって進行している間は、将棋を指していてもあるていど気が楽なものである。
しかし、一度定跡を離れると、自分の大局観と読みがすべてを決めることになる。これは楽しくもあるが、同時にとても怖いことだ。特に「腕力」に自信がない人にとっては、その恐怖感はより強いものになる。
本書は、そういった定跡を外れた局面、漠然とした場面での指針を解説したものである。特定の戦形に限らず、序盤での差し手争い、中盤でのもみ合い、終盤での競り合いすべてについて解説をしているので、非常に「お得感」が強い。

大局観という形にしにくいものを表現することに挑戦し、そして成功した良書と思う。

作成日:2001.07.20 
大局観

読みの技法

読みの技法 (最強将棋塾)
著者 :島 朗
出版社:河出書房新社
出版日:1999-03-01
価格 :¥199(2024/02/06 00:06時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

島八段が出題する局面について、羽生・佐藤・森内の三者が自分の「読み」を披露する。局面は漠然としたものが多く、次の一手のように厳然たる正解が存在するものではない。つまり、トッププロの三者が「実戦でどう読んでいるか」が正直に書かれているのである。
実際にその局面に出会った時、どういう風に読みを展開していくのがいいのか。棋風の違いなども考慮しつつ読むと読み物としても楽しめる。

このシリーズは全体的に有段者向けに書かれているので級位者には辛いかもしれないが、それでもできれば手に取ってほしい。
もちろん、有段者は必携である。

作成日:2001.07.20 
大局観

将棋の公式

将棋の公式
著者 :加藤 治郎
出版社:東京書店
出版日:2000-12-01
価格 :¥1,650(2024/02/06 00:06時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

これを知っている人は相当古い人か、さもなくば「通」であると断言する。

『将棋は歩から』の加藤治郎名誉九段(確か亡くなってこうなったと記憶している)の、1981年の著書である。
内容は『将棋は歩から』に劣らず高度なもので、将棋を指すうえでの基本的な考え方を講義している。こういう類の素材は時が経っても色あせるものではなく、また、加藤名誉九段の将棋に対する姿勢も手伝ってか、現在でも立派に通用する内容になっている。

将棋とは高等数学である。
そして数学とは、公式を組み合わせて解いていくものである(というか、数学を判りやすくしているのが公式である)。
プロが短時間の読みでも最善手を逃さないのは、この公式に基づいて考えているからであり、弱い人が長く考えても悪手を指すのはこの公式が理解できていないからである。
だからこそ、定跡や寄せなどの「末端」の知識よりも、将棋の「本質」に直結する公式を理解するべきである。

……と、長くなったがこれが本書の基本姿勢である。
目次を見ればそれが判るだろう。
本書では公式を大中小に分け、大型公式と中型公式について解説している。内訳はそれぞれ、

  • 大型公式
    • 数の公式
    • さばきの公式
    • 位取りの公式
    • 陽動の公式
    • 死角の公式
    • 焦土の公式
  • 中型公式
    • 成りの公式
    • 各個撃破の公式
    • 手得の公式
    • 駒得の公式
    • 良形と悪形の公式

となっている。
言葉だけでは意味がわかりにくいものもいくつかあるが、有段者であればなにを言わんとしているかは判るはずだ。これだけ重要な問題をまるまる一冊かけて丁寧に解説してくれるわけである。
また、『将棋は歩から』もそうなのだが、棋書には珍しく二色刷り&横書きである。図面が本物の盤駒と同じ色というのも凄いし、横書きの棋書なんてこの本くらいだろう。これは想像だが、先に出た「将棋は高等数学」を意識してのことと思われる。
これを見つけたのは、確か大和の古本屋だったと思う。古本屋での値段は400円だったが、その何十倍分もの知識をこの本からはもらった。

おそらくほぼ間違いなく絶版だと思う。こんな良書を埋もれさせるとは、一人の愛棋家として本当に情けない限りだ。

付記:本書は2000年に復刻された。一人の愛棋家として本当に嬉しく思う。

作成日:2001.07.20 
大局観

イナズマ流逆転術

イナズマ流逆転術
著者 :森 ケイジ
出版社:(株)マイナビ出版
出版日:2000-07-01
価格 :¥413(2024/02/06 00:06時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

『終盤の魔術師』森9段が書いた「逆転術」の解説書。

……と聞くと面白そうなのだが、実戦での逆転劇を見せられても、それを体系化できんのかい、という疑問が残る。まぁ、本書はそこそこうまく分類整理している方だと思うので、読んでいて苦にはならない。

ただ、苦にはならないのだが、立ち読みならいいけど買うほどでもないなぁ……というのが本音である。申し訳ない。

作成日:2001.07.20 
大局観
広告