阿久津主税の中盤感覚をみがこう

作成日:2011.09.12
阿久津主税の中盤感覚をみがこう (NHK将棋シリーズ)
著者 :阿久津 主税
出版社:NHK出版
出版日:2010-12-14
価格 :¥220(2024/02/07 01:00時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

「アッくんの、めぢからあ(棒)」でお馴染みだった(そうか?)アッくんこと阿久津主税のNHK将棋講座が本になったもの。
講座は見ていたのだがテキストは買っていなかったので、どれくらい加筆されているのかどうかは残念ながら判らない。

内容は、中盤での戦い方の解説、ということになっているが、升田式石田流の形から▲7七銀~▲8六歩と攻めるものや、矢倉▲3七銀戦法で▲1五歩と端歩を詰めた場合の攻め方や▲6五歩と突く宮田新手など、定跡の続きといったものも少なくない。もちろん中盤での戦い方であることに変わりはないのだが、『金言玉言新角言』とか『羽生の新格言集105』みたいな本を期待するとちょっとがっかりするだろう。
むしろ、有段者用の突き詰める定跡書ではなく、そういう定跡書で「この手は後手不利になる」とさらっと書いてあるところを補足する、といった趣が強い。

それぞれの項頭に見開きでポイントの局面を載せ、「いい局面」「悪い局面」を事前に提示したり、その局面の差を判りやすくするために悪い局面の方はグレーの網掛けで表すなど、細かい部分にも気を使ってわかりやすく表示しようと頑張っている意志を感じた。本文の行間を通常よりやや広くして見やすくしてあるようにも感じたし、フォントやポイント数などもかなりいろんな種類を使っている気がする。それらが合わさって非常に「見やすい」本になっていて、これは評価したい。
ただ、ちょっと不満だったのが、見開きの部分の「悪い局面」のところ。全部で6図面あって、いい局面悪い局面が3図ずつある。基本的には1対1に対応している(こう指すのがいい、というのと、こう指しちゃだめ、というのが対応している)のだが、場合によっては悪い局面が進んでいく過程を表していくときがある。悪い局面1があるとして、そのまま進むと局面2、さらに進んで局面3、といった具合だ。これは、さきほどの説明にある1対1とは違う表現法になっている。
矢印で流れが表現されているので、ちゃんと読めば判ることなのだが、ここはちょっとムリでも統一してほしかった。それか、もう少し矢印を大きくして「対応」なのか「流れ」なのかを明確にするとか。ちょっと意地悪なことに、2図面は流れで1図面は対応、なんていう場合もあったりするのだ(P.226など)。

まあそんな細かい部分が逆に気になってしまうくらい、「ちゃんとした」本に仕上がっていると思った。もう少しこの形式のレイアウトの本が出てもいいんじゃないだろうか。「棋書アレルギー」の人にこそ読んでほしい一冊だ。