よくわかる振り飛車穴熊

作成日:2011.09.05
マイコミ将棋BOOKS よくわかる振り飛車穴熊
著者 :佐藤 和俊
出版社:毎日コミュニケーションズ
出版日:2011-05-25
価格 :¥558(2024/02/06 23:08時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

「よくわかる」シリーズ第2弾とのことで、アマチュアには嬉しい振り飛車穴熊。広瀬が王位を取った原動力にもなった戦法で、最近急にプロでもクローズアップされている。

内容は四間飛車穴熊と三間飛車穴熊。それとちょっとだけだが、穴熊の終盤講座として穴熊の優秀性を説き、布教活動をしている(笑)。
詳しく言うと、

  • 四間飛車は「居玉棒銀」「△3一銀型棒銀」「棒銀」「ナナメ棒銀」「玉頭位取り」「銀冠」「相穴熊」「対矢倉」。
  • 三間飛車は「対△6五歩早仕掛け」「対左美濃」「相穴熊」に加え、矢倉流のような四間飛車への組み換えと、石田流。
  • 終盤講座は美濃囲いとの比較によりゼット(絶対に詰めろがかからない形)に持ち込みやすいということ、ゼットの状態から攻めること、ゼットを作ってから攻めに行くこと、ゼットを作って受けること、など。その他、穴熊で目を配るべきマス目や実戦解説など。

となっている。

これだけのことを盛り込んでいるので、もちろん内容そのものは本筋だけをカタログ的に紹介するに留めている。ただし、頻出する形をうまく取り上げている(例えば、四間飛車に△6五歩急戦の形は載っていない)ので、振り飛車穴熊を指すには困らないはずだ。
また、居玉で棒銀、△5三銀と備えない単純棒銀(△3二玉まで囲ってあとは一目散に棒銀に来る形)、矢倉など、級位者が「猪突猛進してくる」攻め筋についても紹介し、さらに受け方を教えている。これはいいと思った。対居玉棒銀などは実は穴熊に囲ってすらいないのだが(笑)、やられて困ると思っている人には嬉しい解説だろう。
一方、三間飛車穴熊については「定跡化が進んでいないので……」と素直に述べている通り、形を解説するだけに留められている。類書もあまりないので、できれば別の形でもいいから一冊本を出してほしいところだ。

有段者であれば『四間飛車穴熊の急所』などでもっと深く勉強すべきかもしれないが、4段くらいまでなら本書で形を覚え、あとは実戦で殴り合って吸収して行くことで自分のものにできるはずだ。
近年振り飛車穴熊は不遇の時代を過ごしていた(と思う。白砂は穴熊は指さないので)。
かつての『史上最強の穴熊』のように、「穴熊の反撃」となればいいと思う。