一人で学べる! 小学生のための将棋入門

作成日:2011.08.31
一人で学べる!小学生のための将棋入門
著者 :佐藤 康光
出版社:日本文芸社
出版日:2009-05-01
価格 :¥1,045(2024/02/06 00:46時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

「著者:佐藤康光」となってはいるが、まぁ間違いなくゴーストだと思う入門書。一応、佐藤とおぼしき先生役のイラストがあったり、実戦譜で久保を棒銀で吹っ飛ばす棋譜を使っていたりと、それなりに「佐藤康光」を前面に出してはいる(笑)。

駒の動かし方から各駒の特徴、序盤中盤終盤での戦い方、戦法解説、詰め将棋など、基本的なことはこの一冊でなんとかなると思う。
特に戦法解説については、相掛かり、矢倉、角換わり棒銀、角換わり腰掛け銀、筋違い角、横歩取り、四間飛車、居飛車穴熊、三間飛車、ツノ銀中飛車vs玉頭位取り、メリケン流向かい飛車、升田式石田流、ゴキゲン中飛車、相振り飛車と、これだけラインナップが揃っている。もちろん見開きで駒組みまでという簡単なものではあるが、指し始めの案内としてはこの程度で十分だろう。むしろ広く網羅してあることで、どんなタイプの子供にも対応しているとも言える。やはり「形」を知りいろいろ指してみるというのも重要だろうから。

また、最後の章の格言集も、序中終盤をそれぞれ5段階に分け計15段階とし、どのくらいの局面で使うべき格言かを示しているのもいい。
たとえば、「玉の守りは金銀3枚」は序盤3・4・5、「駒損はするな」は序盤3・4・5と中盤1・2・3、「攻めの拠点を解消するな」は終盤2・3・4・5といった具合である。「駒損はするな」は序中盤だけの格言であるとか、序中盤くらいでは拠点の解消よりは駒得を重んじるから「攻めの拠点を解消するな」の格言は使わない、とか、そういう「使いどころ」が判るようになっている。細かい点ながら、実用性は高いのではないかと思う。

欠点としては、170ページくらいと薄い本なのでどうしても個々の内容は薄くなっていること。また、これまた細かいことを言えば、本文の説明に一切太字や強調点がない。そのため、重要なポイントというのがやや掴みにくいかもしれないな……という気がした。ある程度はイラストで補完したり文章で強調したりはしているのだが、子供にそれが伝わるかは難しい。太字や大文字を使うくらいはしてもよかったのではないだろうか。まぁ、それでちゃんと強調できるか? と問われると難しい問題ではあるんだけども……。

薄い本ではあるが、逆に言えばさらっと全体像を掴むには適している本だと思う。
前述の通り、少し文意から内容を汲み取る作業があるので、小学校高学年くらいからが適していると思われる。