女性のための将棋の教科書―誰でも簡単に始められる入門編

作成日:2012.10.16
女性のための将棋の教科書―誰でも簡単に始められる入門編
著者 :上田 初美
出版社:つちや書店
出版日:2012-08-01
価格 :¥1,474(2024/02/06 04:12時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

「女性向き」というのをとにかく前面に押し出している珍しい(?)タイプの入門書。著者のところに「タイトル保持者」とあるのは、「女王」と書いても一般の人には何のことだか判らないからだろうか(笑)。
本書がどんなものなのかを知るためには、表紙折り返し部分(表2ってところかな)を読んでいただければそれで十分だろう。

将棋は、あなたの人生をより素敵に彩ります。
礼儀作法、深い友情、家族との時間、夢を叶える計画性……
将棋の魅力は、ただゲームとして楽しむことだけに留まりません。
将棋から得られるものを通して、女性の毎日はより、輝くことでしょう。(以下略)

えーっと……。

内容は、駒の動かし方から始まって、駒の取り方、簡単な手筋、囲いの種類、戦法について、詰め将棋、といったもの。
一応、きちんとコンパクトにまとまっていると思う。
オールカラーであることを利用して大事なところを黄色のマーカーでラインを引いたようにして表示したり、図面を細かく出したり、随所にマンガをはさむなど、判りやすく説明をしようという意図はきちんと感じ取れた。これはちゃんと評価しておきたい。

まぁ、逆に言うとツッコミたいところは随所にあるわけで、細かいところでは詰め将棋を詰み将棋と言ったり(P.87。誤植であると信じたい)、玉を詰ますことを「駒を詰ます」と言ったり、戦法を説明するのに「定跡や手筋のこと」と言ったり(まぁ間違いと攻め立てるほどのことではないのかもしれないけど、ニュアンス的には違うよなぁ……)、というのがある。
しかしそんな瑣末なことより、とにかく「居心地が悪い」。なんというか、『STORY』あたりの「モテぷよ女性(STORYの想定読者層は40歳台くらいかな)が若い男の子にもてもてっ!」みたいな、ものすごく作られた人工的な感じで、まぁこれは白砂が男だからしょうがないんだろうけど、どうにも居場所がなかった(笑)。読んだは読んだけどもういい(爆)。

個人的には、将棋というゲームはゲームとしてとても面白く、別に人生を素敵に彩りたい「から」やり始めたわけでもないし、それはあくまでも副次的なものだと思っている。なので、そんなサギっぽい(笑)誘い文句で将棋の素晴らしさを喧伝するのは、それは違うんじゃないかなぁ……と思う。もっと言っちゃうと麻雀で人生を語ったりする桜井章一と同じ臭いがしてなんかイヤだ。
ただ、これで、まっっっっっっっったく将棋に興味のなかった人が将棋に興味を持ってくれて、それで同好の士が一人でも増えるのであれば、それはそれで将棋界のためにはいいんじゃないか、とも思うので、(くどいようだが個人的には全くこういう宣伝方法には惹かれないが)これで興味を持ってくれる人もいるかもしれないので、そう考えるとこういう宣伝方法も「アリ」なんだろうなぁ……。