読みもの

羽生vs佐藤全局集

羽生vs佐藤全局集―100局を超えたトップ対決のすべて
著者 :日本将棋連盟書籍
出版社:マイナビ出版(日本将棋連盟)
出版日:2006-09-01
価格 :¥338(2024/02/07 03:50時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

出版時点までの、羽生vs佐藤の将棋を全局収録した棋書集。公式戦107局と非公式戦2局の計109が収められている。

とはいえ、本書のキモは全棋譜ではなく、前半100ページの自戦記とインタビュー(と解説記事)にある。これが実に面白い。羽生が見た佐藤、佐藤が見た羽生、他棋士が見た二人と、いろんな立場から羽生将棋・佐藤将棋にスポットを当てている。
何度も言っている通り白砂は棋譜集というものをあまり評価していないのだが、本書はプラスアルファの部分がとてもよく、その意味では将棋を「観る」派の人まで含めて、棋力に関係なく一度読んでほしい内容になっている。

もちろん、二人の将棋であるから、将棋の内容そのものも一級品である。棋譜についている解説は少なく、「勝負のポイント」として1手についてのみスポットを当てているが、図面を2枚使って丁寧に解説しているので、棋譜並べの際は役に立つだろう。この点、よくあるABC……として短評を載せる形式とどちらがいいか迷うところではあるが、鑑賞用としては本書の形式の方が優れていると思う。

作成日:2014.12.30 
実戦譜集 読みもの

第一線棋士! B級に落ちても輝け中年の星

第一線棋士!―B級に落ちても輝け中年の星
著者 :青野 照市
出版社:清流出版
出版日:2004-08-01
価格 :¥150(2024/02/07 08:24時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

青野2ch名人がいろんなところで書いたエッセイをまとめたもの。

将棋と違う世界の話を将棋にからませつつ、うまく話を転がしていくので、将棋を知っている人にとってはとても読みやすいエッセイになっている。また、昔の将棋界の話なども、実体験として非常にリアルに書かれていて(塾生の頃の話とか)、逆に将棋を知らない人が読んでも面白いのかもしれない。さすがにもう「将棋を知らない人」の気持ちは判らないので断言はできないが。

青野先生の人柄を反映しているかのような読みやすい文章と、選材のうまさで、あっという間に読めてしまう。まぁ、選材について言えば、「ドーハの悲劇」なんて言うのは勝負を知らない人の言葉で、知っている者にしてみれば必然の結果、とか、大丈夫なのかと思うものもないわけではなかったが、基本的にはのんびり面白く読めると思う。個人的には、盤駒の話が面白かった。

かなり前(2014年現在から見て10年以上前)に書かれたものではあるのだが、普遍的な内容が多いので、今の将棋ファンにも、というか今の将棋ファンにこそ読んでほしい一冊といえるだろう。

作成日:2014.12.27 
読みもの

一二三の玉手箱

一二三の玉手箱
著者 :加藤 一二三
出版社:(株)マイナビ出版
出版日:2007-02-01
価格 :¥43(2024/02/08 03:31時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

いや、まぁ、なんというか……加藤一二三の本。

内容は大きく3つあって、一つはNECビッグローブで配信していた「加藤一二三伝説」の抜粋。滝を止めるとか食事はいつも鰻だとか、そういう話を集めたもの。特筆すべきは本人のインタビューが載っている点で、本人の言い訳(笑)が聞ける。
二つ目は自戦記。これは将棋世界で連載されていたものだと思う。間に挟まれる宗教についての話などに見覚えがある。
最後はエッセイ。宗教や音楽、将棋などについて書かれている。

全編これ加藤一二三で、ひふみんヲタの人は絶対に買い。将棋界に興味がある人は、こういう棋界随一の名キャラクターを知っておくべきだと思うので読んでおいて損はないと思う。そうでない人は……時間があれば(笑)。
最近、棋士がちょっと笑いのネタになっているきらいがある気がする。しかし、本書を読めば、本人達はいたって真剣であるという、本当に本当に当たり前の事実がよく判るだろう。将棋も知らずに「ひふみん」などと言って笑い飛ばしているだけの人達にこそ、本当は読んで反省して欲しいと思う。

作成日:2014.08.04 
読みもの

棋士が数学者になる時 千駄ヶ谷市場3

棋士が数学者になる時 千駄ヶ谷市場3
著者 :先崎 学
出版社:マイナビ
出版日:2013-05-23
価格 :¥1,540(2024/02/07 04:21時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

『将棋世界』誌に連載していた「千駄ヶ谷市場」をまとめたものの第3弾。平成20年2月から8月までの原稿をまとめている。ちゃんと奥付に書いてあったので、『孤高の大木 千駄ヶ谷市場2』からは改善されたようだ。そういえば、目次が前作よりもっと先鋭化されている。これはぜひ手に取って確かめてほしい……というほどの違いでもないんだけどね(笑)。

内容は、真部の絶局の話や、第66期A級順位戦佐藤vs木村の「歩が足りてるんだよ」など(ちなみに、この言葉は本書には載っていない)、将棋界好きの人には楽しめる話題が多いかもしれない。

最後に、本当にグチにしかならない話なのだが、本書のあとがきについて。
コンピュータ将棋について、まぁよくありがちな「人間ドラマがない」「プレッシャーがない将棋を見ていて物足りない」などといった評がされている。これは個人(あえて「プロ棋士」ではなく「個人」と言う)の考え方なのでどう考えようと知ったこっちゃないのだが、プロ棋士を持ち上げるためにコンピュータ将棋を下げた評をしている気がしてなんか厭だ。こんなのは将棋の世界に限った話ではなく、例えば2ch界隈でも、●流出で大騒ぎしている中、モ娘(狼)板は「○○アンチが全方位攻撃をしていた」だの「ズッキをDisってたのは○○ヲタ」だの、お前ら足引っ張る以外にすることはないのかと(笑)、そういうような世界も多いんだろう(なんか逆に狭い世界の話をしている気がするが……)。
しかし、プロ棋士にはそういうことはやって欲しくなかった。当事者だから。だからこそ。
言いたいのをそこはグッとこらえて、人間ドラマを標榜したいんであればそれだけを言えばいい。わざわざコンピュータ将棋をマクラに持ってくることはない。将棋もコンピュータ将棋も知っている者としてはとても残念に思う。

作成日:2013.09.02 
読みもの

孤高の大木 千駄ヶ谷市場2

孤高の大木 千駄ヶ谷市場2
著者 :先崎 学
出版社:マイナビ
出版日:2012-04-13
価格 :¥41(2024/02/07 08:11時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

『将棋世界』誌に連載していた「千駄ヶ谷市場」をまとめたものの第2弾。平成19年頃の原稿をまとめている。というか、白砂がよく読んでいないのか、よくある「○年○月~○年○月の記事をまとめたものです」的な注釈がないように見える。なくてもよいと考えたんだと思うけど、あってほしいなぁ……。
目次も工夫されていて、本文がちょっとずつ載せられている。映画の予告編のような思わせぶりな文章が多く、なんだろうという気にさせられる。これを読ませて興味を引かせてレジへ持って行かせる作戦だとしたらなかなかうまいと思う(笑)。

先崎らしい読みやすい文章で、プロ棋士の世界が判りやすく紹介されている。また「プロなら一目」「ここはこうやるもの」といったプロの将棋観がそこここにあるので、単純な読み物としてでなく、棋力向上にも役立つと思う。特に中級者くらいの人はぜひ読んで欲しい。

個人的には、ラストの女流の部分が面白く読めた。清水のくだりはまぁいいや、という感じだったが、ダイジェスト的とはいえ、ここまで女流棋士の将棋を取り上げたのはなかなかないと思うので。女流の強さも弱さもよく判って楽しめた。もちろん、里見をはじめとする現在の女流トップはもっと強くなってきているが。

作成日:2013.09.02 
読みもの
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