2006

羽生善治の終盤術2 基本だけでここまで出来る

羽生善治の終盤術 2 基本だけでここまで出来る (最強将棋21 #)
著者 :羽生 善治
出版社:浅川書房
出版日:2006-04-01
価格 :¥2,957(2024/02/08 19:48時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

前作に続き、寄せについて書いた本。お得意の「本をひっくり返す」次の一手方式で書かれている。

サブタイトルは「基本だけでここまで出来る」となっていて、取り上げられた形を見ても、なるほど基本的な手筋だけで構成されている。入門書で手筋を覚えても、実際に使いこなせなければ意味がないという好例だろう。
同時に、羽生の「大山先生は手を読んでない。ホントに読んでないんですよ」という発言も思い出した。大局観と基本的な手筋が頭にあれば、手を読むことなどしなくてもツボに手が行くということだろう。事実、本書に載っている、堅そうな陣形、手がかりのなさそうな玉形が、あっという間に寄ってしまう。「公式は暗記するのが重要なのではなく、使いこなすことが重要」だということがよく判る。

次の一手形式も効果的に機能していると思う。
羽生が講座で壇上に立ち、大盤を動かしながら「これはこうやっていきます。……次の形、これはこう攻めれば潰れてますね」と解説しているようなスピード感が感じられる。次の一手形式の「ブツ切り感」がいい方に作用しているのだろう。

ただ、その点から苦情を呈すると、個々の問題に関連がないのが逆に気になった。
前述のたとえを使うなら、「これはこうやっていきます。……次の形、これはこう攻めれば潰れてますね」と言う時、通常は「先程と同じく……」とか、「この筋があるので前回の手順は使えず、代わりに……」とか、前後にはなんらかの関係性があるものだろう。そうやって体系的に学ぶことによって、よりいっそう理解が深まる。本書には、あまりそれが感じられなかった(ないわけではない。念のため)。
そのため、本当に単に次の一手をいっぱい解くだけ……という雰囲気もなってしまいがちだ。
題材の難易度など、非常にうまくできていると思うので、もったいないと感じた。

作成日:2006.07.08 
次の一手 終盤・寄せ

下町流三間飛車 居飛穴攻略の新研究

下町流三間飛車―居飛穴攻略の新研究 (振り飛車の真髄 1)
著者 :小倉 久史
出版社:(株)マイナビ出版
出版日:2006-04-01
価格 :¥1,044(2024/02/06 05:02時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

三間飛車による居飛車穴熊退治を題材にした、著者の処女作。いくつか共著はあったと思うが、単独ってのは記憶が正しければなかったと思う。あったらごめんなさい。(追記:向かい飛車の本がありましたね。失礼しました)

玉頭銀や▲7八金型石田流などの珍しい形も扱っているので、三間飛車党は最低一度は目を通しておいた方がいいだろう。本書と中田功XPとを自在に組み合わせられるようになれば、居飛車穴熊は怖くなくなるはずだ。

少し都合のいい変化が多い──というか、居飛車穴熊側の駒組み手順が安易という気がしなくもないが、実戦では生じやすい形ではあると思う。
3段とか4段クラスであれば、攻めている形が多いので十分通用するだろう。ガンガン捌く三間飛車の醍醐味を感じて欲しい。

作成日:2006.07.08 
穴熊

振り飛車基本戦法

振り飛車基本戦法 (スーパー将棋講座)
著者 :高橋 道雄
出版社:創元社
出版日:2006-05-16
価格 :¥912(2024/02/06 05:02時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

初級者中級者を対象にした、振り飛車入門書。

内容は

  • 原始棒銀退治の四間飛車
  • 四間飛車vs4六歩戦法
  • 四間飛車vs4六銀戦法
  • 四間飛車vs左美濃
  • 三間飛車vs早仕掛け
  • ツノ銀中飛車
  • メリケン向かい飛車

といったところ。

最初の原始棒銀退治を載せたのはなかなか面白い試みだと思う。24の低級タブなどでは、こういう猪突猛進原始棒銀の使い手が結構いるらしいから、需要はありそうだ。惜しむらくは端攻めの変化が少し足りなかったことで、わざわざ言及しているのだから対抗策も書いて欲しかった。

また、全体の特徴として、詰みまで解説するというのがある。
「定跡書は途中までで終わっちゃうからそこからの指し手が判らない」という声を拾ったものと推察するが、少し微妙だ。というのも、手順を見ると結構難しい詰み筋だったりするのである。原始棒銀に困る棋力の人に読ませる内容ではない。(白砂の想像が当たっていたと仮定しての話だが)気持ちは察するしその姿勢を評価はするけれども、ちょっと要らなかったかな、と思う。それよりは、変化のひとつふたつを増やした方が有益だっただろう。

それぞれの手順については、対象棋力の問題もあるのでこれでいい。不満がある人は、「創元社定跡」だと思って諦めよう(笑)。

作成日:2006.07.08 
振り飛車全般

秘伝将棋無双

秘伝将棋無双―詰将棋の聖典「詰むや詰まざるや」に挑戦!
著者 :湯川 博士
出版社:山海堂
出版日:2006-06-01
価格 :¥920(2024/02/06 01:37時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

古今東西最も難しい作品集のため「詰むや詰まざるや」との異名を取った『将棋無双』。本書は、そこからいくつか問題をピックアップして、詰将棋の面白さに迫っている。

全てが会話調で進んでいるので、読みやすいと取るかうざいと取るかは人それぞれ。個人的にはちょっとうざかった(笑)。というか、会話調にすることで読みやすくなるとっつきやすくなるというのはただの幻想にしか思えない。読んでいくとそれなりに楽ではあるのだが、それは間口を広げるのとは少し違う話だと思うので。間口を広げるというのは、読み始める前の「手に取ってもらう」段階に考えるべきことであって、そこでは会話調というのはかえって邪魔になってしまうのでは……と、まぁそんな話はいいやね。

内容はさすがにきちんとしたもので、さすが『秘伝 大道棋』を書いた著者だと納得した。
ただ、問題数が少ないというのはちょっと……と思う。場合によっては上下巻にしてでもきっちり100問載せて欲しかった。そういうことを考えると、やっぱり会話調は無駄な文章が多くなるからなぁ……と最初の話に戻る(笑)。
もっとも、これだけ詳しく、くどいくらいに図面を使って詰将棋を解説するというのはあまり例がないことなので、その意欲は買う。できれば、続編として残りの『無双』作品や、『将棋図巧』もお願いしたいところであるが、このクオリティのままでそこまでやると著者が過労で倒れてしまうかもしれないのであまり強くは言えない(笑)。

作成日:2006.07.08 
詰将棋

羽生善治の終盤術3 堅さをくずす本

羽生善治の終盤術 3 堅さをくずす本 (最強将棋21 #)
著者 :羽生 善治
出版社:浅川書房
出版日:2006-06-01
価格 :¥900,000(2024/02/08 02:20時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

かなり高度な内容を実は解説しているこのシリーズ。第3弾は「囲い」にスポットを当て、その崩し方を解説している。

登場するのは美濃・矢倉・穴熊の3種。
囲い崩しだったら対振り飛車の舟囲いはないの? と思ったが、冷静に書名を見てみれば『堅さをくずす本』だった。舟囲いは固さよりは広さを主張する囲いだ。

内容としては、まずはじめに一般的な囲い崩しの「形」を解説し、次に実戦譜で具体的な手順を解説する。次の一手形式で延々続く形式なので、図面はかなり多い。

ただ、どうも不満というか、事前の触れ込みとの落差のようなものを感じてしまった。こちらが勝手に感じてしまったものなので酷な話ではあるのだが。
最初、本書は「どういう形であればどういう囲い崩しの手筋が利用できるか」というテキスト(講座)的なものだと思っていたのである。この形はこの金と龍の位置関係に注目、この場合はこういう手筋が利きます、とか、この場合はここに後手の利きがあるため、手筋1は使えません、とか。
それも基本的な囲い崩しだよ、と言われてしまえばそれまでなのだが(<そうなのか)、むしろこれは「囲い崩しの応用」だと思う。で、本書は、その応用のメカニズムを解明した画期的なものだと思ってしまっていたのだ。

もっとも、本書の形式が白砂にはあまりなじまなかった、という方が根本的な問題で、そのために評価が低くなってしまっているのかもしれない。次の一手形式とはいえ、きちんと順序立てた例題が並んでいるので、体系的に学べると言えなくもない。
また、扱われている手筋はよくあるものだが、プロの実戦で出てきた「王道の寄せ」である。その手触りを覚えることは、間違いなく棋力向上につながるだろう。

結局のところ、題材自体は悪くない。あとは読者の腕次第、という感じの本だと思う。

作成日:2006.07.08 
終盤・寄せ
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