杉本昌隆の振り飛車破り

作成日:2014.06.22
杉本昌隆の振り飛車破り (MYCOM将棋ブックス)
著者 :杉本 昌隆
出版社:毎日コミュニケーションズ
出版日:2007-02-01
価格 :¥436(2022/05/02 14:33時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

振り飛車党(現在は居飛車党に鞍替えしているが)の杉本が書いた振り飛車破り本。振り飛車党であれば振り飛車がやられてイヤなこともよく知っているだろう、という考えで依頼があったらしい。

内容は以下の通り。

▲3五歩急戦vs後手藤井システム
室岡新手で有名な形。かなり詳しく解説している。初段くらいまでの人は、むしろ室岡新手以前の指し方(△3五同歩・△3二金)の際の速攻手順を読んでほしい。
先手藤井システムvs居飛車穴熊
居飛車側から△4五歩と仕掛ける形や、△5五角急戦など。これも詳細に解説されている。ここまでで本の半分くらい。発刊当時(2007年)はまだ藤井システムが指されていた時代なんだなぁと思わされる。
5筋位取り急戦
もはやB級戦法に近い作戦だが、5筋位取りでなおかつ急戦というのが面白い(もちろん昔から指されていた戦法ではある)。最終的には振り飛車有利という結論になっているような気もするが(笑)、一発狙いには知っておいてもいいかもしれない。
ポンポン桂
従来からある「富沢キック」の話も出てくるが、どちらかというと藤井システム対策という感じ。これもあまり類書がないので、とりあえずは押さえておきたい変化だ。
三間飛車vs居飛車穴熊
居飛車穴熊側が△8四飛をギリギリまで受けない(その手を囲いに回す)というちょっと贅沢な指し方。先手が何もしなければしれっと1手得できるわけで当然先手は▲7四歩から動いてくるが、むしろそれを誘ってカウンターで切り返す、というのが基本的な骨格。実戦的な考え方で言えば、▲7四歩から歩を交換されるデメリットよりとにかく居飛車穴熊に囲えるメリットを追求した、とも言える。
石田流vs銀冠
最近はあまり見ない気がする(そもそも石田流を目指さない)が、▲7四歩急戦がらみで石田流がバンバン指されていた頃、居飛車側が急戦を避けて銀冠に囲うという将棋がよくあった。その形のこと。△9二飛と千日手を目指す形、と言えば判りやすいか。
山本流石田封じ
昔からの石田流対策に、▲7六歩△3四歩▲7五歩△4二玉という指し方がある。▲7八飛なら△8八角成▲同銀△4五角で、定跡の▲7六角を防いでいる(△4二玉としたため▲4三角成が先手にならない)から後手有利、という仕組みだ。そのため、△4二玉には▲6六歩と穏やかに指すのが無難、とされている。それをもっと突き詰めて、▲6六歩と穏やかに指してきたらその▲6六歩を目標に△6四歩~△6二飛と右四間にしたらどうだろう、というのがこの山本流の骨子である。なかなか面白い発想で、特に石田流という「形」を指したいという石田党にはイヤな対策だろう。

藤井システム破りに大半を割いているが、むしろ読んでほしいのはそれ以外のB級戦法の部分だ。なかなか類書がないので、こういうまとまった解説は貴重である。

本のツクリで少し言わせていただくなら、ちょっと密度の違いがありすぎてとまどってしまう。ポンポン桂などはかなり散文的に書かれているので、大体の狙いは判るのだが、じゃあ本書を読めばバッチリ指しこなせるかというと難しいと思う。
もっと言ってしまうと、密度の濃い内容とガイド的な内容を同じレイアウトで見せようというのがそもそも無理だと思うので、いっそのことどちらかに絞ってしまった方が(贅沢を言えば2冊出してしまえば)よかったんじゃないか、とさえ思う。

内容は悪くない、というかとてもいいので、初段くらいまでの人は、藤井システム関連は飛ばして(笑)、その他のページを、少し面倒でも盤駒を用意して読み込めばいいと思う。有段者は本書の内容くらいは知っていないといけないことなので、サラっと読むくらいでいいだろう。

あと、いおたんヲタの人は、わすが2ページだけどチラっと登場しているので、そうだよなぁあの連載のときはかわいかったなぁ……と思いつつ、囲碁界に呪いをかけておいてください(笑)。