対居飛車穴熊△4四銀型の捌き

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 第1図は銀河戦の中座-櫛田戦。
「世紀末四間飛車」のクッシーはここんとこ絶好調で、やっと将棋に打ち込んだうんぬんといった話が『将棋世界』の「盤上のトリビア」に載っていた。アマチュアっぽい豪快な指し回しは鈴木大介に通じる部分もあって、見ている方は気持ちがいい。せっかく「改心」したことだし、ここらで「新世紀末四間飛車」でも書いてくんないかな(笑)。
 第1図そのものはもうなんべんも見ているだろう局面。四間飛車党も居飛車穴熊党も避けて通れない形だ。
 もっとも、先手の中座は感想戦で「つい▲3七桂と跳ねちゃって……」と笑っていた。どうやら▲3七桂と跳ねずに単に▲4八飛と回る形を指そう、と思っていたらしい。
 で、第1図。
 定番ともいえる手がある。

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△5三銀▲4八飛△4四角▲同角△同銀(第2図)
 △5三銀と引いて△4四角とぶつけるのが四間飛車側の軽い指し方。
 白砂がはじめてこの手を目にしたのは『振り飛車ワールド』だったか『四間飛車の急所1』だったか、とにかく「こんな手があるのか!?」と感動した覚えがある。自分じゃ絶対指さないのにねぇ(爆)。
 この手については解説の山﨑も触れていて「こういうのが振り飛車なんですよね」としきりに感心していた。

 ボクなんかも練習でたまに振り飛車を指すんですけど、第1図くらいまではうまく指せるんですね(笑)。でもそこからわからなくなる。
 例えばこの△5三銀という手はボクみたいな居飛車党には浮かばないです。
 ……だって出た銀ですよね。4四まで出た銀を5三に引く。で、角交換してまたこう出ていくわけです。手損を気にしないんですね

 仮にもプロなのでこの手を知らないはずがなく、多分に視聴者向けのリップサービスは入っているのだろう。ただ、「△5三銀はなぜいい手か?」を、なんとなくでも見ているこちらに判るように伝えてくれる、そんな気遣いはすごく感じた。

○       ○       ○

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 第2図から先手は▲2八飛と回った。
 ここで解説は△3三銀(第3図)を推奨。

 3三銀自体は遊び銀だし悪形なのだが、この将棋は振り飛車側が後手。つまり千日手は歓迎する側。逆に言うと居飛車側は千日手を避けるために攻めなければいけないのだが、そうすると遊び銀である3三銀をどうしても相手にしなければならなくなる。そうなれば遊び銀は捌ける(だろう)から、現在この瞬間に遊ぶ△3三銀は指しても腹が立たない。

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 まことに理路整然とした解説で、なるほどなるほどと思ったのだが、後手の指し手は△3五歩(第4図)。更に過激な攻め手順である。
 この手ももちろん検討されたが、▲2四歩△3六歩▲2三歩成△3七歩成▲3二とでどうか? と言われていた。ここで飛車の取り合いになると、残ったと金の位置は4二vs2八。どちらが得かは明白だ。

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 しかし、△3五歩のあと更に大盤で検討中、▲2四歩△3六歩▲2三歩成に△2七歩(第5図)という手があることが判った。
「桂を取りつつと金ができる」△3七歩成を我慢しての一手なので思いつきにくいが、意味は簡単、▲2七同飛なら△4九角で飛金両取りである。
 これは先手も読んでいて、第5図からは▲2七同飛△4九角▲3二と△6二飛▲2一飛成△6七角成▲6八銀△6六馬▲4一と△3七歩成(第6図)と進んだ。

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 ▲6八銀と引き締める手も味がいいが、△6六馬もそれ以上に味のいい手である。
 第6図について、解説の山﨑は「第6図をどちらも自分の方が指しやすいと思っているからこの局面になった。つまり、これは両者の大局観のどちらが正しいかという勝負である」といったようなことを語っていた。
 駒割りは後手の金得。馬も急所に利いている。△5三銀と味よく引けば金銀4枚の美濃囲いにもなる。
 一方、先手は穴熊がそのまま残り飛車も成り込んでいる。と金の位置も1路分先手の方が近い。
 果たしてどちらの大局観が勝っているのか?