実戦に潜む次の一手

詰将棋、必至とともに、実力養成の問題集としてよくあるのが「次の一手」というやつだ。

白砂はよく知らないのだが、ちょっとした手筋から詰将棋ばりの超絶技巧まで、次の一手には次の一手の世界があるようである。
しかしこの次の一手というやつ、どーも中途半端な気がしないだろうか。白砂は常々そう思っていた。

簡単な手筋というのであれば部分図で十分だと思う。
よく、実戦形とか言って無理やり駒を配置したような手筋問題もあるが、「次の一手」として問題を出しているのだからそんなに意義があることとは思えない。初心者は駒が増えると正答できなくなる、という話を聞いたことがあるけど、ホントかなぁ……? って思うし。だって、実戦だと思って考えないもんね、そういう時。
逆になんだかウルトラ手順で必至逃れの必至をかけたりする次の一手もある。

作品としてはそれでいいと思うけど、「解けたら2段」とか言い出すとちょっとそれおかしくないかぁ、と(笑)。少なくとも、実戦の読みの助けになるのかなぁ……という気がするのだ。実戦でそんな展開になりっこないし(笑)。
いや、それを言ったら詰将棋だってそうなのだが、あれは「読む訓練」だ。けれど次の一手の場合、どういうわけか読むとかそういう以前に「実戦に近い状態のものを解くことで実戦的な力がつく」みたいな喧伝のされ方をする。それがおかしいと白砂は思うのである。
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と、そんなところで第1図。

終盤である。
今、先手が▲4八玉と逃げたところ。後手玉は▲2二金△4二玉▲6三角成くらいでもたないので、早逃げで十分という読みだったのだろう。
ところが。

ここまで前半部分を読んだ人なら、当然次の一手はこれだろう。

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第1図からの指し手
△8九飛成

▲8九同龍は△3六桂▲5九玉△6九金▲同龍△同成銀▲同玉△8九飛(第2図)となった時、合駒が悪いので詰む。
かといって▲5九金打のような受けだと、今度は前述の攻め手順が(金を打ってしまったために)消えたので、△2五桂▲4六銀△6六銀成くらいで後手が勝勢だ。

まさに次の一手のような決め手。

こういうことがあるから次の一手は解いておくといい……ってことを言いたいんじゃなくて、実は、本譜はこうはならなかった。プロでもこういう次の一手風の決め手を逃すんだなぁ……という話なのである。

もちろん秒読みだろうから、別に気づかなくても恥じゃないけど、そのプロ、対局前に次の一手の本でも読んでたら、この手を指せたんだろうか……?(笑)