将棋コラム


  無理攻めと強引のあいだ Date: 2004-07-29 (Thu) 
 王位戦第2局は、今度は谷川が5筋位取り中飛車。またまたアマチュアが指しそうな将棋になった。
 ただ、谷川の振り飛車は意外とモロく、あんまり評判はよくない。後手番で四間飛車に「逃げる」くらいであればいいのだが、先手で振り飛車の捌きとなるとどうか……? という不安が残る。まぁ結果を知ってしまえばなんとでも言えるのだが(笑)、その不安が的中することになる。

 第1図は羽生が△4四銀と受けた局面。当たり前の話だがこの銀は3三から上がってきたもので、押さえ込みを狙っている。
 もっとも、ここで仮に△1四歩などとのんびりしていると、▲7四歩△6三金(△同歩は▲5四歩で、▲6四角の飛び出しを見て先手指せる)▲7三歩成△同桂▲5四歩△同歩▲4五銀(第2図)といった捌きがあるので、それを事前に受けた手とも言える。まぁ、大駒を働かせる手でもあるので、△4四銀のような手が悪い手になることはまずないだろう。

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 本譜は第1図から▲7四歩と突いたのだが、まず疑問に思うのは、ここで▲5四歩(第3図)はなかったか? ということである。

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 ▲5四歩に△7六銀成は▲7四歩であとはなんぼでも捌けそうだから、△5四同歩の一手。そこで▲7四歩(第4図)と突けば、本譜よりはかなりいい形になっている。

 第4図からはいろいろ考えられるが、
 といった感じで、いずれも先手が捌けそうだ。

 なんでこの変化に飛び込まなかったかは、一介のアマチュアでしかない白砂には知る由もない。単純に、上の研究に穴があるだけかもしれない(爆)。
 これは想像でしかないが、玉を美濃に収めてあとは大駒をぶん回すというのは振り飛車の常識で、もはや「心得」ですらない。この、振り飛車独特の泥臭さと言うかいい意味でのいい加減さと言うか(笑)、その距離感が、居飛車正統派である谷川には掴みにくいのではないだろうか。これが鈴木大介とか田村あたりだったら、それこそノータイムでこの変化に飛び込むような気がする。

 本譜は、第1図から▲7四歩△6三金▲7三歩成△同桂▲6六歩△7六銀成▲6八飛△7五成銀(第5図)と進んだ。この△7五成銀が友達を無くす手厚い一手で、ここからはもう先手がダメだと思う。

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 第5図は、桂頭と飛車のコビンが同時に強化された形で、完全に後手陣の嫌味が消えている。少々の駒損はいいから喰いついて勝つ、という振り飛車としては、一番持っていってはいけない形だ。
 ▲6八飛のところで▲6五歩と突ければいいのだが、△同桂で完封負けしそうだ。やはりチャンスは一瞬しかなかったのではないかと思う。

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