将棋コラム
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裸玉の話 |
Date: 2006-08-18 (Fri) |

第1図の詰将棋を知っている人は多いと思う。伊藤看寿作の裸玉である。
現在では、発表された裸玉はかなりの数になっている。一覧が『詰将棋おもちゃ箱』の「裸玉の検証」ページに載っているので、興味がある方は一度見てほしい。
コンピュータの進歩などにより、これからも多くの裸玉作品が発表・解析されていくだろう。
以前、上記ページを見てふと思ったことがある。
基本的に、詰将棋作家は完全作を目指して作品を発表する。まぁ当たり前といえば当たり前のことなのだが、裸玉のように「発見」の要素が非常に強く、かつ完全解析が求められている作品については、それだけでは不完全のように思う。
具体的に言ってしまうと、「この形は詰まない(もしくは不完全)」という情報が足りない。
詰将棋を発表する場は限られるし、誰が好き好んで「この形は詰まない」という情けない発表をするんだという気もするが(笑)、こと裸玉に関しては話が別だ。上記の通り、解析が求められているジャンルだからである。
この辺りのことは、以前「奇蹟の軌跡」で少しだけ触れたことがあるが、不完全作であっても公表することにより、後発の人達の助けにはなると思う。また、ギリギリ詰まないだとか、こういう攻めがあって余詰むということが判れば、そこから別の作品が生まれるかもしれない(実際にそういう詰将棋を詰パラに送ってたりする……(笑))。
不詰作や余詰作であっても、資料としての価値は高いと思うのだ。
まぁ、そうは言っても、実際に作品を集めるとなるといろいろとクリアしなければならない問題があるのだろうが、せっかく「裸玉リスト」があるんだったらそういうのがあってもいいのかなぁ……と思う。
言ってるだけでやらないのはもっとも悪い所業なので、白砂が見つけた不完全作をいくつか出してみよう。
まずは第2図。
△5一玉持駒飛角銀銀銀桂歩歩。
手順は、▲5四飛△5二歩合▲4三桂△6一玉▲6二歩△7一玉▲7四飛△7二銀合▲6一歩成△同玉▲6二銀△同玉▲7三銀△5三玉▲4四銀△4二玉▲1五角△2四歩合▲同角△3二玉▲3三銀成△2一玉▲3二成銀 △同玉▲3四飛△2一玉▲3一桂成△1一玉▲1二歩△同玉▲3二飛成△2二金合▲1三歩△1一玉▲2一成桂△同金▲3三角成△2二桂合▲2一龍△同玉▲3二金△1一玉▲2二金まで43手詰桂余り。まぁ、データとして載せているだけなので、詳しい説明は省かせてもらおう。
わざわざ駒余りの「詰む将棋」を持ち出すのもどうかと思うかもしれないが、こういうのが大事なんだという主旨なので許して欲しい。
ただ、これが持駒飛角銀銀銀桂歩、つまり第2図より歩が1枚少ないと詰まないのだ。
上記手順中、△7二銀合のところ△7二歩合で、▲8二銀△同玉▲9三角△同玉▲9四銀△8二玉▲8三銀打△9一玉となって最後の▲9二歩が打てない。
第2図をヒントにしてできたのか、前のコラムで書いた詰パラ初入選作である。この辺の詳しい話は、機会があればということで(笑)。
ちなみに、持駒の桂歩歩を、桂桂歩、もしくは桂桂桂にしてもやはり余詰となる。
手順は省略するが、柿木将棋であればすぐに読み切ってくれるだろう。
続いて第3図。
△5一玉持駒飛角銀銀桂桂桂歩。
手順はやはり▲5四飛から入り、△5二金合▲4三桂△4二玉▲3三銀△同玉▲2五桂△4三玉▲2一角△3二桂合▲同角成△同玉▲5二飛成△2三玉▲4三龍△1四玉▲3四龍△2四飛合(第4図)と進む。

柿木将棋はここから▲1五歩△同玉▲1六銀△同玉▲3六龍△2六桂合▲2七金△1五玉▲2六金△1四玉▲1五金△同玉▲2七桂△1四玉▲2六桂△2三玉▲3三龍△1二玉▲1三龍△2一玉▲2四龍△2二銀▲5一飛△3一金合▲3三桂不成△1二玉▲1四龍△1三銀合▲2四桂△2二玉▲3一飛成△同玉▲3二金までというすさまじい手順を答えるのだが、第4図で▲1三桂成としても余詰むようだし、本手順(?)もいろいろ余詰がある。
ただ、これもまた持駒飛角銀銀桂桂桂と1歩足りないと詰まない。
▲5四飛に△5二金合とし、▲4三桂△6一玉▲6四飛△6二歩合▲7三桂△7一玉(第5図)のとき、▲7二歩と叩く歩がない。
また、持駒の歩が桂に変わった持駒飛角銀銀桂桂桂桂も、▲5四飛△5二歩合以下31手で詰む。ただし、これも余詰がボロボロある。
△5一玉型では、この他に飛角角銀銀桂、飛角金金銀歩、飛角金銀銀香、飛角銀銀銀銀桂などでも余詰がある。
これらは前述の裸玉リストには載っていない。
裸玉を作って(探して?)いる人の、少しでも助けになれば幸いである。
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