伏土竜の麻雀戦術論

入門編その2 点数計算

第1章 正式な点数計算の方法(以下、正式計算法)

 麻雀のアガリ点数は、役の翻数手牌の形の符数とを用いて、以下の手順で求めます。

準備段階 役の翻数を数える

前編ですでにできるようになっているはずです。

第1段階 基本符を数える

門前でロンアガリした場合のみ30符。それ以外のアガリではすべて20符です。

第2段階 加符を数える

加符には3つの種類があります。

1.アガリの方法に対する加符

 ツモアガリに2符が付きます。
 ロンアガリの場合には、加符はつきません。
 役としてのツモとは別の話で、門前だろうと鳴いていようと、ツモアガリしたら2符がつきます。

2.待ちに対する加符

 タンキ待ち・ペンチャン待ち・カンチャン待ちには、2符が付きます。
 シャンポン待ち・リャンメン待ちには、加符はありません。

3.面子に対する加符

 対子と刻子と槓子に、加符がつきます。
 順子には加符はありません。
 加符は以下の表の通りです。

  中張牌 老頭牌 飜 牌
対子
明刻
暗刻
明槓 16 16
暗槓 16 32 32

 老頭牌と翻牌はほとんど同じ加符ですが、対子の場合にだけ違いが出ます。
 仮に東場でのタンキ待ちをツモあがりしたら、タンキ待ちの2+ツモアガリの2+最終的な形としての対子の2で、計6符になります。

 例えば、の明刻は2符で暗刻なら8符、の明刻は4符で暗槓なら32符です。

第3段階 基本符と加符を合計して、下一桁を繰り上げる

 例えば基本符が20符・加符が6符なら、26の繰り上げ30となります。
 基本符が30符・加符が0符なら、30符のままです。

第4段階 第3段階で求めた数に、2の準備段階で求めた役数乗を掛ける

 非常に難しい表現です。
 アガリ手の飜数がありましたね、その飜数だけ(2飜であれば2回、4飜であれば4回)2をかけるということです。

 例えば30符3翻のアガリでは、30(符数)×2×2×2(2の役数乗。3回2をかけてます)=240となります。

第5段階 第四段階で求めた数に、親なら6・子なら4を掛け、さらに下2桁を繰り上げる

 親の40符4翻のアガリでは、40(符数)×2×2×2×2(2の役数乗)×6(親)=3840。下2桁を繰り上げて3900となります。
 子の50符3飜のアガリの場合は、50×2×2×2×4=1600。下2桁を繰り上げて……といっても00でしたね(笑)。1600です。


 点数計算の際のポイントは、第4段階に登場した「2の役数乗」です。
 麻雀のアガリ点数は、1役増えれば2倍に、2役増えれば4倍に、3役増えれば8倍に増えます。これを「倍々計算の法則」といいます。
 ところが無制限に倍々計算をしていくと(これを「青天井方式」といいます)、とんでもないアガリ点数(章末参考)になる可能性があります。
 そこで現在では、親は12000点・子は8000点のところで「満貫」という枠を設け、倍々計算はその枠までしか行わない決まりごとになっています。

 満貫以上のアガリでは、符は関係なく翻数だけで計算します。
 6翻になると満貫の1、5倍の跳満で、親18000点・子12000点。
 8翻は満貫の2倍の倍満で、親24000点・子16000点。
 11翻は満貫の3倍の三倍満で、親32000点・子24000点。
 13翻は満貫の4倍の四倍満で、親48000点・子32000点。
 この四倍満は役満の点数と同じなので、一般には「数え役満」と呼ばれます。余談になりますが、よく「役満と数え役満が複合したら点数は?」なんていう質問があります。これは単純に点数が増えていった四倍満と、特殊な形に与えられる役満とを混同してしまうために起こる誤解です。両者は別物なので、当然複合はありえません。

 ちなみに、理論上考えられる青天井での最高点数は、東場の親の、

  

 という手牌で、ダブルリーチをかけて合間に3つカンをして、ハイテイでロン。ドラ表字牌がとずらりと並んだ場合の、

ダブルリーチハイテイ小三元メンホンホンロートイトイ三暗刻三槓子飜牌×4ドラ32の140符54翻

 です。

 四槓子流れが捨牌後に流れになる場合、すなわち4つ目の槓をした人か捨てた牌でアガった場合、槓ドラは10枚になりますので、ドラ表字牌がだとすればなんとドラ40になります。

 140符62飜の場合、点数は3,873,816,255,479,005,839,360点だそうです(らすかるさん、まっとネスさん感謝)。


白砂注

 実は、点数計算で一番覚えるのが面倒なのが第2段階の「加符」の部分です。これを体で覚えるまでは「あれ? 中張牌の暗槓って何符?」などと迷ってしまうものです。
 そこで、かなりいろんなところで喋っていることなんですが、白砂が知っている「加符暗記法」を紹介します。

 刻子と槓子の加符は、アクションと言葉で覚えます。
 まずアクション。これは「鳴き、門前、鳴き、門前」。私は「鳴き」のところは『哭きの竜』ばりにオーバーアクションにしていましたが、それがなんなのか判んない人はとりあえず自分が鳴く時のアクションをして下さい。門前は門前です。両手で13枚の牌を持っている普段の形をイメージして下さい。
 次に言葉ですが、これは2つあります。中張牌と公九牌の分です。
 中張牌は「2、4、8、16」公九牌は「4、8、16、32」です。倍々になっているので覚えられると思います。

 ここまで準備ができたら後は簡単。自分の調べたい(中張牌or公九牌)刻子や槓子があったら、アクションをしながら口ずさんでください。
 例えば中張牌の明槓。はい何符ですか?
「2(鳴き)、4(門前)、8(鳴き)……」
 8符ですね。では公九牌の暗槓は?
「4(鳴き)、8(門前)、16(鳴き)、32(門前)……」
 32符です。

 つまり、アクションの「鳴き、門前、鳴き、門前」はそれぞれ「明刻、暗刻、明槓、暗槓」に対応しているわけです。これと言葉を組み合わせることによって、表を見ているのと同じ効果が得られるのです。
 一度やってみて下さい。効果は抜群の筈です。

 あと、待ちの形の加符ですが、これも簡単な理屈で覚えられます。

「来る確率の少ない待ちには加符がつく」

 です。
 皆さんも、両面待ちは待ち牌が多くて、その他の牌は待ち牌が少ないということは知ってますよね? それが判っていれば大丈夫です。ペンチャンやカンチャン、タンキは、待ち牌がくる確率が少ないから「そのご褒美として」加符をもらえると考えて下さい。シャンポンも待ち牌は少ないんですが、これは片っぽがメンツになってご褒美をもらえます。対子もそうです。飜牌は数が少ないです。だから、飜牌を対子にしたらご褒美の加符がもらえるんです。
 実際の点数計算の成立過程は知りませんが、こういう理屈だと勝手に(笑)考えることによって、加符の問題は大体覚えられます。明刻より暗刻、暗刻より槓子が符が高いというのも、「揃えるのが難しいのをそろえられたご褒美」と考えれば理解できます。シュンツの方が作るのは楽ですからね。

 更に、この理屈で判る究極の事実があります。
 平和です。
 私が点数計算を人に教える時、一通り教えた後に必ず言います。
「平和って知ってるよね?」
「うん」
「じゃあさ、平和の条件ってなんだっけ?」
「えーっとね、全部シュンツで、待ちが両面で、雀頭が飜牌じゃないやつ」
「そうそう。……それって、要するに「簡単に作れるからご褒美の加符が一切ない形」なんだよ」
 こう言うとたいていの人は「ああ、なるほど!」と感心してくれます。
 この原則が判れば、加符を理解(=暗記)するのは決して難しくはありません。

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