私のパソコン遍歴

〜 白砂、マイコンを買う 〜

 どんなタイミングでどういう切りだし方だったか既に忘れてしまいましが、ある日のことです。白砂が高校2年生の冬を迎える頃でした。

「マイコンを買ってやろう」

 突然の父の言葉でした。

 細かい話は忘れてしまいましたが、そんなに一生懸命やっているんだったら、せっかくだからちゃんとしたマイコンを買ってあげよう……というような言葉だったと思います。毎週一緒に『パソコンサンデー』を見たお蔭で、将来的にはコンピュータの知識が必要になる……ということを漠然と考えたのかもしれません。父は以前東芝の技術部門で働いていたこともありましたので、それなりの素地もありました(もっとも、父の時代はトランジスタからICに変わる直前くらいだったそうですが)。

 しかしそんなことはどうでもいいんです。
 我が家にマイコンが来るんです!!

 財布は父が担当しましたが、機種選定は白砂に一任してくれました。それに応えるべく、白砂は持てる知識とコネをフル活用して機種選定に当たりました。
 当時、一番ポピュラーだったのはNECのPC-8801シリーズでした。ソフトも豊富でしたし、性能も悪くありません。普通であればこれで即決してもおかしくないところです。
 しかし、当時のパソコン雑誌を賑わせていたのは、むしろNECの機種ではなくてSHARPのマイコンでした。ご存知の方もいると思います。そうです。X1シリーズMZシリーズです。

 X1シリーズは、黒い外観が特徴の機種で、当時にしては珍しいFM音源を標準装備したり(他機種はほとんどがオプション)、キャラクター作成やスプライト表示が簡単にできたりとユニークな特徴をもっていました。
 他方MZシリーズは「8ビット機最強」を掲げ、テープレコーダーを前面装着する特徴的なボディーとパソコン通信が標準で(だったと思います)楽しめる機能が搭載されていたりと、まさに「最強」に相応しい驚異のスペックを誇っていました。
 その他、富士通のFMシリーズや、16ビット機であるPC-9801シリーズなどもあるにはあったんですが、性能と価格を考えると候補に入れることはできませんでした。今考えると特に16ビット機を選ばなかったのは悔やまれますが、そんなことを当時の白砂少年が判る筈もありません。ましてや、その後に訪れる「悲劇」なんてとてもとても……(泣)。

 それはさておき、とにかく白砂の中ではSHARP系の機種しかもう頭に入っていませんでした。あとは、X1系の最新機種X1−turboIIか、それともMZ系の最新機種Super−MZにするか。その選択でした。
 結局、悩みに悩んだ末に白砂が選択したのは、X1−turboIIでした。
 やはりキャラクターを簡単に作れる機能は魅力で、『ベーマガ』でも「X1で作ったプログラムは画面が美しい」という評判でした。ハードの性能よりも、ソフト面での性能を重視したわけです。

 マイコンを買うんだったら秋葉原だろー……と父は考えたらしく、当時まだ青葉マークが貼ってあるにもかかわらず、一家4人を乗せて一路秋葉原へと向かいました。神奈川県から約50キロ。明らかに無謀としか思えません(爆)
 しかしそんなことなど全く気づかない白砂少年は、マイコンが手に入る喜びに胸を躍らせていたのでした(←気づけよ)。

 秋葉原なんて行ったことのない白砂少年には何がなんだかさっぱり判りません。父は一応の知識があったのでしょう。目に入る電気店に片っ端から入っては価格調査をしていました。もっとも、当時の白砂にそんなことが判る筈もなく、「なんで早く買ってくんないんだよ〜」と心の中で毒づいているだけでしたが(笑)。
 いったいいくつの店を廻ったのかもう忘れてしまいました。
 とにかく引きずりまわされて、結局一番初めの店に戻りました。JR(当時は国鉄ですね)のガード下にある店舗の、2階の店でした。多分九十九電気だと思うんですが確証は全くありません。今で言うと、電気街出口を出てCDをいっぱい売ってる店の方に行って、そこの通りの信号を渡ったすぐ先のガード下のところなんですが、こんな説明で判る人なんていないですよね。ま、わざわざ地図まで書いて説明するほどのことでもないしそんなことはどうでもいいですか。

 さて。
 買い物はそこからがまた長い。
 値引き交渉です。

 白砂は話に加わってすらいなかったので知りませんでしたが、結局20万円ぽっきりで買ったようでした。店頭販売価格がおそらく30万円弱だったと思うんですが、だとするとそんな値引いたんかい! って感じです。

 しかしまだ終わらない。
 今度は付属品のおまけ交渉です。

 きっと店員からは疎まれたんだろうなぁ……と今になると思うんですが、そんなこと知っちゃいません。何しろ白砂自身は値引き交渉すらしてないんですから。
 結局、5インチFDD(知らんだろーな今の人は……)を2パック20枚と、簡単なワープロソフト、グラフィックソフト、ゲームなどが入ったFDDを5枚ばかりぶんどって来たようです。
 我が父ながらちょっと呆れたぞ……。

 まぁ、何度も言いますがこれは推測です。
 父は20万円しか確かに払っていなかったし、上に挙げたおまけは確かに家にありました。だから多分値切って交渉したんだろーなーというだけの話です。ま、多分事実なんでしょうね。……う〜ん、秋葉原を徘徊するのは遺伝だったか……(<違う)。

 さて。そんなことより。
 車にマイコン一式を詰め込んで、意気揚々と引き上げる白砂。しかし、この先更に衝撃的な事実が待っていたのでした……。