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Home > 序盤研究 > 角換わり腰掛け銀▲2五歩型での▲4五歩仕掛け
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 第1図は角換わり腰掛け銀。今までありそうになかった形である。
 どうしてかというと、少し局面を戻して第2図。

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 ここから▲2五歩△7三桂と進んだら、先手はすぐに▲4五歩と仕掛ける。いわゆる「角換わり腰掛け銀同型」というやつで、2015.9現在、富岡流の▲4五歩△同歩▲2四歩△同歩▲1五歩△同歩▲7五歩△同歩▲3五歩以下先手有利というのが定説になっている形だ。
 しかし実は、この形の攻め筋は、昔は升田定跡という▲4五歩△同歩▲7五歩△同歩▲3五歩の仕掛けが主流だった(富岡流と違い、2筋と1筋の突き捨てが入っていない)。
 この升田定跡も結論としては先手有利だったのだが、そのため、第2図から▲2五歩に△7三桂とするから▲7五歩△同歩以下桂頭を狙われるので、それがまずいんじゃないのか、という考えに至り、▲2五歩に桂を跳ねずに△4二金右とする指し方が現れた。

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 第2図から▲2五歩△4二金右に対しては、升田定跡のように▲4五歩△同歩▲7五歩としても、富岡流のように▲4五歩△同歩▲2四歩△同歩▲1五歩△同歩▲7五歩としても、どちらも△7五同歩としておいてなんでもない。なにしろ弱点となるはずの桂馬を跳んでいないのだから攻めになるはずがない。

 この話は単なる前振りなので主流の定跡の話だけをすると(笑)、そのため、第2図からの△4二金右に対しては▲4八飛と回り▲4五歩の仕掛けを見せるが、以下△2二玉▲8八玉に△6五歩(第3図)と先攻されて先手不満、というのが定説らしい。
 そのため、またまた遡って恐縮だが、第2図で▲2五歩というのが疑問で、ここは▲2五桂という攻め味を残して先に▲4八飛と回っておいて……というのが現在の定跡になっている。

 と、ここまでの説明があってから第1図を見ると、定跡と似ているが全然違う局面である、というのが判ると思う。
 第1図は通常の形とは、
  • 第2図から▲4八飛という定跡の手を指さず、旧式の▲2五歩という形に戻している。
  • ▲2五歩△4二金右に対し、▲4八飛△2二玉▲8八玉△6五歩という先手不満の変化にせず、▲8八玉△2二玉▲4五歩とシンプルに先手から仕掛けている。
 という、2つの違いがあるのだ。

 ここからの先手の指し手は、いくつか実戦例があるので、後手の指し方の違いによって順に説明する。

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 1号局では第1図から△4五同歩に▲3五歩(第4図)と攻めた。腰掛け銀同型の攻め筋では、42173の順に突き捨てる富岡流だけではなく、単に43の順に突き捨てる攻め筋もある。それと同じだ。
 後手は△4四銀とかわし、以下▲2四歩△同歩▲3四歩(第7図)△2三金▲4七金(第5図)と進んだ。

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 1号局は第5図で△3二金と締まった。プロらしい手だと思うのだがこれが緩手で、第5図では△7五歩と先攻するべきだったらしい。
 以下、▲7五同歩△7六歩に▲同銀△8六歩▲同歩△4六歩▲同金△5九角▲3八飛△8六角成▲8三歩△同飛▲8四歩△同飛▲8五歩△7六馬▲8四歩△8六歩と、ここまで進むと後手が有望だそうだ。長くなったが、後手は△5九角なら△8六角成を狙い(そのために△4六歩▲同金を入れて3七桂を浮き駒にした)、先手はそれを飛車先の連打でしのごうとするが、後手は飛車を見捨てて△8六歩と攻めの拠点を築いた、という流れである。後手は△4一歩の底歩が利くので飛車を取らせても怖くない、というのが主張点らしい。
 もっとも、△7六歩に▲同銀ではなく▲6八銀と引く手や、第5図からの△7五歩に▲2五歩△同歩としてから▲7五歩と手を戻す手などもあって簡単ではないそうだ。

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 2号局では、第4図の▲3五歩に対して、△4四銀ではなく△4六歩とした。
 これも腰掛け銀ではよくある受け方(反撃の仕方?)だが、第4図から▲3四歩△同銀▲2四歩△同歩▲同飛△2三金▲2六飛△2四歩▲4六飛(第6図)に△4四歩と突っ張ったため、▲4四同飛△2六角に▲7一角△7二飛▲5四飛△7一飛▲6四飛以下大激戦となり、結局そのまま先手が攻め倒した。
 第6図で△4四歩ではなく△4三歩とすれば穏やかだが、以下▲3六飛△3五歩(打たないと逆に▲3五歩と打たれる)▲2六飛となり、これは手順に3歩持った先手が十分だと思う。

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 3号局は、第7図の局面から△4三金直とした。
 この手自体は1号局の感想戦でも出ていた手で、その際には以下▲4七金△3四金▲2五歩△同歩▲3六金△3三桂▲6一角△4三角▲同角成△同銀▲2五桂△2四歩▲3三桂成△同金引▲4五金(第9図)△8六桂▲6八金△9五歩▲3四歩(第8図)で後手自信なし、とされた。

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 長くなったので手の解説をすると、先手は▲4七金から▲2五歩△同歩▲3六金と攻めに金を繰り出し、後手も金と桂で飛車先を受ける、という展開である。▲6一角から5四の銀を引かせたのは第8図を見てもわかる通りあとで▲4五金と出るため。以下、後手も△8六桂から△9五歩と反撃するが、第8図の▲3四歩が厳しいので後手は自信がない、という流れである。
 第8図以下は、△3四同銀なら▲4四金△同金▲3六桂、△3四同金でも▲同金△同銀▲3六桂、といった感じで攻めていけば、後手からなかなか△9六歩の順が回ってこないと思われる。▲7一角という「保険」も利きそうだし、これが後手が自信なし、という理由なのだろう。

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 だったら第9図のところで△8六桂から△9五歩などと攻めずに、受けに専念したらどうか、と考えそうなものだが、第9図で△3四歩のような軟弱な受けでは▲4四金△同銀▲4五桂△同銀▲同銀△4四歩に▲7一角△8三飛▲7二銀△7三飛▲4四銀△同金▲6二角成とかガリガリ攻められそうだし、△4五同銀▲同銀△4六角も▲3八飛△3七歩▲2八飛とされると4六に打った角がボケてしまう。
 第9図は3筋と4筋に歩が立つ形であり、受けて受け切れる局面ではないのだろう。

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 3号局に話を戻すと、第7図から△4三金直に、先手は▲4七金ではなくいきなり▲1五歩△同歩▲1三歩△同香▲4五銀△同銀右▲同桂(第10図)と殴り掛かった。
 第10図では△4五同銀と桂を取るのも自然だと思うのだが、
    ▲1四歩△同香▲2四飛△2三銀▲3三歩成△同金寄▲6四飛(第11図)
  • ▲5五角△4四歩▲2五歩△5四金▲2四歩△5五金▲2三銀△3一玉▲3二銀成△同玉▲2三歩成△4三玉▲1三と(第12図)
  • ▲4四歩△同金▲7一角△8三飛▲7二銀(第13図)
 といったような手が気になったのか、△3四歩と歩の方を払った。

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 第10図からの△3四金に対しては、先手は▲3三歩△同桂に▲5三桂成とこちらに桂を成り捨て、△5三同銀▲3五歩△4五金(△3五同金は▲7一角△8三飛▲4四銀)▲2四飛△2三歩▲2九飛と進めた。▲2九飛がぬるいようだが▲3四歩の「後の先」で、手番を渡すわけではない。
 ▲2九飛以下は△8六歩▲同歩△8五歩と攻めてきた手に▲7一角△8三飛▲7二銀△7三飛▲8一銀成と第13図と同じ攻め筋で攻め、激戦が続いたものの先手が攻め勝った。


 棋譜が手に入った3局をご覧いただいたが、どれも結局先手がそのまま後手を攻め倒した感じで、もしこれで先手が有利になるなら今までの定跡はなんだったんだ、ということになる。

 試みに、手元にある角換わり腰掛け銀の定跡書を調べてみたのだが、この形はノーマークだったのか温めていたのか、記述が全くと言っていいほどなかった。
 例えば、この形を指した渡辺が推薦として名を連ねている『早分かり 角換わり定跡ガイド』では、第2図の局面について、「素直に▲2五歩もむろんある」くらいの記述しかない(あると言っているのに手の解説が一切ない)。また、『中村太一の角換わり』では、▲2五歩としても△7三桂とはしてくれないので後手陣にスキがない。そのため▲4八飛として4筋に戦場を求める、としている。『よくわかる角換わり』では▲4七金として攻める筋のみを紹介しているし、『これからの角換わり腰掛け銀』では、そもそも基本図以前のため解説がない。

 そもそも、今回の渡辺新手を知ってから改めて第2図を見てみると、▲4八飛と回ってじゃあどうするんだよという疑問が出てくる。▲4八飛に△4二金右▲8八玉△2二玉のあとすぐに▲2五桂と攻めてもうまくいかず、一手▲1八香と待っても攻め合いとなり(若干先手有利と言われているが)、▲6八金右から穴熊、という展開にもなる。「▲4八飛として4筋に戦場を求め」たんじゃなかったのか?

 そういうことを考えると、この渡辺新手はとてもとてもシンプルな手で良さを求めに行く手でもあり、今後の展開が期待される。
 今回の記事はあくまでも結論が出るまでのガイドとして、まぁガイドにしてはとても読みにくいかもしれないが、ご活用ください。
作成日 2015-10-05 | [序盤研究]
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