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 第1図は後手が△3四銀と立ったところ。
 2015年2月15日のNHK杯金井vs橋本戦である。▲2四歩という手が見えているが、解説の松尾は「△同歩▲同飛に△2三金▲2八飛△2五歩でうまくいかない」と言う。
 以下、後手の手だけ示すと△3三金△2二飛△4三金△3三桂という感じで、その形は後手が十分である。また、△2二飛という手自体が飛車先の逆襲になっていて、それに対して▲2七歩と受けるというのは歩交換を逆用された感じで先手が辛すぎる。それに、この形だとうまく行かないが、▲2四歩△同歩▲同飛には△2五角と飛車を捕獲する筋もあるという。
「この辺、居飛車側はさんざん辛い目に遭って、経験を重ねて理解してきた」とのことだ(笑)。

 というわけで、本譜は▲7五歩とこちらで得を主張しようとしたが、振り飛車側は△3三桂▲6五歩△2五銀として1歩をおいしくいただき、以下腰を落として暴れる先手を封じ込めてそのまま勝ち切ってしまった。振り飛車の完勝譜だったと思う。

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 で。
 少し小ネタ的な話なのだが、第1図で本当に▲2四歩とは行けないのか? というのが今回のテーマである。

 ▲2四歩△同歩▲同飛△2三金▲2八飛△2五歩に▲7五歩△3三金とする。
 確かにこのままのんびりして△2二飛△4三金△3三桂とされてしまったらさすがに後手が有利だろう。ということで、▲3一角(第2図)と攻めてみる。
 確かにこれなら△2二飛とはできない(笑)。

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 しかし単純な嫌がらせというわけではなく、△5二飛と角成を受ける手には▲2二歩という二の矢を用意している。以下△3二金▲2一歩成△3一金▲同と(第3図)という二枚替えの展開は、後手の思惑が少し外れた形だろう。
 第3図で△2二飛には▲3三金△2四飛▲3四金△同飛▲2五飛とされ、△2四歩と受ける歩がない。かといってこのまま▲3三金から▲3二とという感じでじっくり攻められると、先後の玉形の差が響きそうだ。この展開は後手がまずい。

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 第2図で、△5二飛ではなく△3二飛という手もある。
 ▲5三角成とさせ、そこで△4三金と寄れば実は角は死んでいる、という寸法だ。ダイレクト向かい飛車で▲6五角△7四角▲4三角成としても△5二金右で角が死んでいる、という筋と同じである。
 しかし、△4三金には▲2五飛(第4図)とバッサリ行く手がある。

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 第4図で△2五同銀▲4三馬△2二飛には、シンプルに▲4四馬△4二飛▲1一馬△4六飛と攻め合ってもよいが、一回▲7四歩(第5図)と突き捨てておくのがソツのない手である。
 △同歩と取らせて、▲4四馬△4二飛▲5五馬△7三角と傷を作ってから▲1一馬△4六飛とすれば、そこで▲7五歩と調子よく攻めていける。こういう利かしを入れる手は覚えておいて損はない。戦いになっているし、振り飛車党はコビンや端をいじくられるだけで嫌なものなのだ(笑)。

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 また、第4図で△5三金と馬の方を取るのも、▲2一飛成△3三飛(次に△2三飛で捌くつもり)にやっぱり▲7四歩(第6図)が急所となる。▲7四歩に手抜きで△2三飛は▲同龍△同銀▲7三歩成△同銀▲6五桂だし、△7四同歩も▲6五桂△5二金引▲7三歩△同桂▲同桂成△同玉▲6五桂といった感じで一方的に攻められる。
 第6図では飛車は3三より5二あたりにおいておいたほうがいい(=▲2一飛成に△5二飛と逃げる)が、それでも▲6五桂△6四金▲1一龍くらいで先手がいいだろう。とにかく先手玉が鉄壁なので、こうなってしまうと振り飛車はなにもできない。

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 第2図で△5二飛も△3二飛も後手がまずいとなると、▲3一角が成立してしまうということになる。
 ▲3一角が成立してしまうようだと、後手は理想形に組むことができない。

 ▲3一角を避けるだけなら△3三金ではなく先に△2二飛と回っておけばいい。これなら金は2三にいるから▲3一角△5二飛▲2二歩という手はない。だが、△2二飛には、再三出てきた手だが▲7四歩(第7図)が急所となる。
 △同歩は▲5五角△6四角(それ以外だと▲4四角と出て飛車取りと▲5三角成が残る)▲同角△同歩▲6五歩だし、△3三金の攻め合いも▲3一角△2四飛▲5三角成△2六歩に▲5四馬が2七の地点を受けてピッタリの手となる。大体、こういう展開になると、先後の玉形の差+後手の3筋の金銀の遊びが大きすぎて勝負にならない。

 さて困った。
 第1図で▲2四歩は成立してしまうのか?

 正解を知っている人にとっては延々とホラ話を聞かされているようで、じれったいやら回りくどいやらといった感じだろうが、まぁネタなので勘弁していただきたい。

 正しい受け方は、第2図でやっぱり△5二飛と受ける手である。

 先手は当然▲2二歩と攻めるが、そこで△3二金と角を取りに行ったのが当然なようで手拍子の悪手(笑)だった。
 ここでじーっと△1二角(第8図)と受けるのが正着である。

 後手を引いているようでも、第8図は次の△3二金を見た先手になっている。また、今度は1二角と打っているので、△3二金に▲2一歩成は△同角(第9図)で、第3図の二枚替えの展開にはならない。

 

 答えを聞いてしまえばなーんだ、という感じだろうし、おそらく▲3一角△5二飛▲2二歩という局面になれば△1二角という手は浮かぶだろうが、どうだろう、その手前の局面では意外と思い浮かばない感じはしないだろうか。
 まぁ、ちょっとしたホラ話ということで許してほしい(笑)。

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 ちなみに、感想戦では、△3四銀の1手前の▲6六歩が甘く、▲7五歩を先にすべきだった、とされた。
 同じように△3四銀とすると、今度は▲2四歩△同歩▲同飛△2三金▲2八飛△2五歩に▲4五歩△同歩▲7四歩(第10図)がある、というわけだ。
 △7四同歩▲5五角ということにはならないだろうが、▲7四歩を取れないとなれば▲7三歩成△同銀はほぼ必然で、コンパクトにまとまっている先手陣と金銀バラバラの後手陣とでは違いがありすぎ、とてもじゃないが戦いに踏み込めない。実戦的には先手が指しやすい、という理屈である。

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 例えば、第10図で△3三金として▲5五角を消しても、▲7三歩成△同銀に今度は▲3一角と打てる。△5二飛▲2二歩△1二角に▲4三歩(第11図)が一歩千金となるからだ。
 第11図で△4三同金は▲2一歩成△同角▲5五桂があるので△同銀とするしかないが、▲2一歩成△同角▲2五飛と飛び出すことができる。以下△2四歩▲3五飛△4四銀▲3六飛△3五歩▲2六飛と落ち着く展開になると角が取られそうだが、先手もいろいろと暴れることができそうだ。
 もちろん、▲3一角とせずにじっくり駒組みに持ち込んでもいいわけだし、この展開は先手が指しやすいと思う。

 プロはこういう何気ないところでもポイントを稼ぎにいくものなんだなぁと、テレビを観ていて感心した。
作成日 2015-02-19 | [序盤研究]
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