第25回世界コンピュータ将棋選手権出場記

■1回戦 vs Sunfish

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 初戦の相手はSunfish。ホントはお隣のはずだったんですが、諸般の事情で別席に行ってます、みたいなお話をして対局へ。

 先手番で7七桂戦法へ誘導できて、しかもトイレに行って帰ってくると第1図の局面になっていた。あとで中の人に伺ったところ、どうもSunfishは角をぶった切りやすい傾向にあるとのことだった。
 くそぅここから白砂が指せば勝つのに……という展開だったのだが(笑)、現在の白砂将棋は白砂の100倍くらいは弱いので、残念ながらここから勝ち切れない。第2図から、▲2五桂△4四銀▲4六角と金を取りに行ってしまったため、以下△3八金▲同玉△4五香▲1九角△5八銀(第3図)と攻めがまともに決まってしまった。
 ここからいくばくもなく白砂将棋の投了。玉の安全度がやっぱり全然判っていない(というかどうやって教えればいいのか……)

■2回戦 vs JPBR-0

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 2回戦の相手はJPBR-0。
 開発者の方の所に行くと、
「実はボク、選手権のデビュー戦が白砂将棋だったんですよ」
「え、そうなの?」名前に見覚えがないんだけど……
「王手の千日手で負けたんです」
 あー、人生送りバント失敗さんだったのか。なんて話をしながら対戦へ。

 序盤早々定跡から外れてしまい、しかも中飛車の定跡から中住まいにしようとしたもんだから△4四歩がモロにたたってしまうという最悪の展開になってしまった。これは白砂の定跡ファイルの整備ミスだ。その後も△2八歩なんて手を指してタダで取られるといったムチャなことをやってるもんだから、結局中段で飛車が右往左往することになってしまった。
 ところが第4図。この▲3五歩が余計だった気がする。飛車に逃げられると桂頭の弱点だけが残る形になるからで、△6四飛▲9七角△3六歩▲4五桂△5五角▲2九飛△3七歩成(第5図)となっては、これは公平に見て盛り返したと言っていいだろう。以下、▲6六銀に△同角▲同歩と切って落とし、ここで△2八銀と飛車を詰ませば、先手の玉形も悪いし、後手陣がバラバラと言ってもまだまだ十分にチャンスはあるはず……

あ、切れましたよ


え!?

 JPBR-0のウィンドウを見ると、確かに時間切れしている。
 しかし、秒読みはある程度マージンも取っていたし、切れるとは考えにくいんだけどなぁ……。
 実行委員の所へ行って確認したが、やっぱりサーバーも時間切れと判断している。

 なんだかスッキリしないけど、まぁ時間制御も自己責任だから仕方がない。
 2連敗という苦しいスタートである。

 時間制御のほうは、マージンを更に多めに設定した。これで大丈夫だろうか。

■3回戦 vs コオロギ

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 3回戦の相手はコオロギ。初出場ソフトです。
 ご挨拶に行ったところ、アメリカの方だそうで、少し会話が渋滞しました。白砂は英語が毛虫より苦手で、こんな時、野中チェルだったら何の苦労もないんだろうなぁ……と、余計なことを考えてました。
 元々はシャンチー(中国象棋)のプログラムをしたことがあり、今回初めて将棋にも着手したとのこと。まだあまり深く読めないとのことで、4手読みくらいが限界とのこと。また、駒の損得も、歩が1点角が7点とかいう感じになっているらしいです。

 将棋の方は、白砂将棋が軽快に攻める形になり、金香得であとはどう寄せるか、という局面まで来た。第6図は少し駒が渋滞しているが、次に△7六馬とすれば駒得が更に大きくなりそうだ。

あ、切れた

 コオロギのウィンドウを見ると、また時間切れをしている。

 ……この将棋を落とすかorz。
 内容のバカすぎる3連敗。さすがにもう脱力してしまった。もっとばばーんとマージンを取らないといけなかったらしい。

 いろいろ考えた挙句、最終的に8秒に設定した。また、秒読み以外の部分がまずいということも考えられるので、通常の局面でもすべて8秒で指すようにした。


■4回戦 vs きふわらべ

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 4回戦の相手はきふわらべ。初出場ですね。白砂は自分のことばっかり考えていて対戦表すら見ていなかったので知らなかったのですが、全敗対決でした。

 将棋としては17手目からの▲5三角不成△同銀で終わってしまった感じで、どんなソフトなのかを訊いていた。
 ものすごいことをしてるなと思ったのが、通常とは少し違った方法で局面を評価していて、
 といったような手順で指し手を決定しているらしい。で、その<目標>というのも、「王手をかける」とか「歩を突く」とか、かなり抽象的な書き方をされていて、あとで確認や編集がしやすいように、テキストデータ(csvって言ってたかな?)でそれらを管理しているとのこと。それでよく動いてるなぁ……というのが正直な感想で、まぁ▲5三角不成という指し手からも判る通り、現実的にはまだまだ改良の余地があると言えるだろう。ただ、本人曰く「自分が楽しいって思えることをやってないと続かなそうで」とのことで、とても面白いアプローチだと思うし、やってて楽しいだろうなぁ……と思った。
<目標>の順序付けとか、実現局面での評価手法とか、いろいろ考えるべきことも多いと思うけど、頑張ってください。

 そして白砂はここでやって念願の1勝。
 ちゃんと動いた、と判断して、「秒読み以前の持ち時間の使い方」を元に戻したのだが、今冷静に考えてみると本局は秒読みになっていなかったので、ひょっとするとまずかったのかもしれない(笑)。


■5回戦 vs 臥龍

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 5回戦の相手は臥龍。過去2回とも当たってますが、2回とも吹っ飛ばされてます(というか、過去ログを遡ってて初めて気づいたんですが、書いてあった第23回の原稿を上げてなかった。後で図面も作ってアップします)。

 将棋は白砂将棋が先手を取れたので7七桂戦法へ。前回も7七桂戦法に進んで、そのときは有利な局面を作ったもののその後の一押しができずに負けてしまった。今回も、第7図から▲7一角△7二飛▲5三角成△同金▲同飛成として、序盤はうまくやったと思う。その後も39手目に飛車の横利きを遮断する▲7二歩を指したりして、意外と好調だ。

 ただ、臥龍も△4五角から飛車を捌いてきて、第8図となってはなんだかよく判らない局面になってきている

 正直、白砂が実戦でこの局面になったとしても迷うと思う。▲8六同歩は△同銀で、次に△7七銀成▲同金△6九飛成があるし、歩の裏に回った飛車が妙に追いづらい。△5一歩の底歩もとても固い。
 ただ、白砂将棋の指した▲5六金はさすがにまずく、△同角から△8七歩成と陣形を乱されてしまった。後手はまだ角を持っているので、何かの時の△9四角がとても怖い手になる。

 そして第9図。ここから▲7三龍としたのだが、これで後手玉に対する攻めが遠のき、△6七銀成▲4六角△5八金▲同金△同成銀以下負けてしまった。
 最後▲5八同金と相手の攻めのスピードを助けてしまうのは決定的にまずいが、第9図ではとにもかくにも▲7八銀としてほしかった。7六銀がカゲになっていてこの瞬間だけは△9四角の筋がないので、△4九龍と切ってくる筋が少しだけ甘くなっている。とはいえ△9九龍▲8九金ともできないので、△4九龍▲同銀△8七歩成とか△6七銀成▲6九銀△5七成銀とかそういう展開になると思うのだが、それなら白砂将棋が優勢をキープできたと思う。
 思考ログを見ると、▲9一とに一瞬触手が動くものの、あとはずっと▲7三龍を本線に読んでいて、▲7八銀は全然出てこない。これでは勝てない。


■6回戦 vs まったりゆうちゃん

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 6回戦の相手はまったりゆうちゃん。何度か当たってるはずですが勝ったことがありません。
 先手が取れたので7七桂戦法へ。実は対ゆうちゃん戦だとだいたい第10図みたいな形までは行くのだが、ここから優勢まで持っていくことが今の白砂将棋にはできない。
 まぁ、現実問題として、スパッと優勢に持っていける手順があるわけではないのだが、白砂の実戦だったらとりあえず▲8六歩として、△8四歩ならいきなり▲8五歩△同歩▲8三歩を狙い、他の手なら▲8五歩〜▲8六飛として、▲7二歩や▲9五歩とからめて攻めを狙う。ただ、なかなかに高度な話であって、人間でも指しこなすのは難しいと思うし、それを白砂将棋に求めるのは酷というものだろう。とはいえ本譜の▲9五歩からの攻めはさすがに暴発で、端を食い破られて不利になってしまった。
 そして迎えた第11図。7七桂戦法らしい指し方、というのであれば、▲7二歩として、△6二銀なら▲6四歩(△同歩なら▲6三歩△同銀▲7一歩成)といった感じでからんでいくのが見える。しかし、白砂将棋は30秒しっかり考えて次の一手を指した。

▲4七金

 なんだこれはorz。

 なんだかよく判らない手だが、これでとにかく自玉は鉄壁になった。そのせいか、まったりゆうちゃんもまったりした指し手を続けて第12図。今度は白砂将棋がちょっとかっこいい指し回しを見せる。

第12図からの指し手
▲9三歩△7三桂▲9五飛△8七成香▲9二歩成△3二飛▲7八歩


 ▲9三歩の手筋から敵陣を食い破り(単に▲9五飛という手もあったのだが、まぁいいとしよう(笑))、一転して▲7八歩と成香の動きを止める。さっきの▲4七金で自玉は鉄壁だから、あとはポチポチ▲9三と〜▲8三とくらいで攻めていけばよい。これは逆に白砂には浮かばない手で、これはひょっとすると……! と期待してしまった。
 しかし、よくよく考えてみれは白砂将棋に▲9三と〜▲8三となんていう「ゆっくりした確実な手」が指せるはずもなく、暴発してそのまま散ってしまった。

 ちょっと残念な負け方をしてしまった。なんにしても、これで1勝5敗。ひどい成績である。


■7回戦 vs なり金将棋

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 最終戦の相手はなり金将棋。何度か当たっており、前回は勝ちましたがそれまではほとんど勝っていません。偶然打ち歩詰で勝ったことがあるだけです。うぅ……orz。
 どうしたんですか調子悪いですね……とかいう話をしながら、対局を見ていました。

 後手を引いたので白砂将棋は中飛車に構えたが、なり金将棋はシンプルに急戦で来た。そこでカウンターを狙っていくのが振り飛車というものなのだが、「銀を5段目に出させてはダメ」といった基本的な知識すら白砂将棋にはなく、そのまま気持ちいいように捌かせてしまう。そして第13図。なり金将棋が決め手とも言うべき一手を放つ。

▲2八歩

 まぁ、ホントに決め手かと言われるとアレだし、中の人も「なんだこりゃ」と言っていたが、振り飛車の駒を捌かせない、という意味では立派な手だと思う。
 その後も、僻地にと金を作って喜んでいる白砂将棋を尻目になり金将棋の指しては冴え、あっという間に後手玉を寄せ切ってしまった。

■おわりに

 最終的に、白砂将棋は1勝6敗。23位という結果だった。
 24チーム中23位である。また、数字以上に将棋そのものの出来が悪すぎた。
 随所にいい手もあったとは思う。しかし、それ以上に悪手が多い。「将棋は悪手を指さない方が勝つ」というのはやっぱり真理なんだなぁ……と思わされた。

 正直なところ、仕事がキツくて少し参っている状況なので、この結果を考えると、モチベーションはダダ下がりである。

少しばかり次の角を曲がってみて、

気が向いたら、大器晩成で気長に頑張りたいと思います。


……おあとがよろしいようで(ちっともよくない)

 


初版公開:2015年5月13日
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