第24回世界コンピュータ将棋選手権出場記

■1回戦 GA将!!!!!!! vs 白砂将棋

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 初戦の相手はGA将!!!!!!!。ホントにいろいろお世話になりました。

 後手だったので3二金戦法を選択し、しかしGA将!!!!!!!は居飛車だったので白砂将棋は中住まいに構える。
 定跡から外れた後は、お互いに浮いた歩を狙いに行くジリジリとした展開となった。しかし、GA将!!!!!!!の手作りがうまく、一段落してみると一方的に3歩を持たれてしまっていた。
 そして第1図。白砂将棋が5筋の歩を狙ったところだが、ここでGA将!!!!!!!がうまい対応を見せる。

第1図からの指し手
▲3七桂△5六飛▲5七銀上△5四飛▲4五銀△2四飛▲2五歩△1四飛▲1六歩(第2図)

 ▲3七桂と5筋の歩を見捨てたのがうまい構想。以下、第2図まで進めばGA将!!!!!!!の狙いは明らかで、第2図では後手の飛車が危なくなっている。以下△6四飛としても▲6六銀として依然飛車がピンチである。
 しかしこの局面で白砂将棋は△8三歩〜△9四歩とのんきに構えている。長手数の飛車の詰みが読めていないのだ。
 その後、▲5四歩△同歩▲1五歩と飛車の逃げ道を封鎖する手筋が見事に決まり、駒損が確定。しかも、せめて銀と刺し違えればよかったのだが、白砂将棋はその局面を飛車損を飛車得と誤認してしまい、喜んで飛車損の変化に飛び込んでしまった。
 局後に調べてみると単純なバグで、普段そこまでド駒損になるようなテストをしていなかったので発覚しなかったものだった。
 途中まではうまいこと指せていたと思えるだけに、残念な一局だった。


■2回戦 Warsenal Zero vs 白砂将棋

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 2回戦の相手はWarsenal Zero。
 ……さっそく開発者の方の所に行きました。
「白砂将棋です。よろしくお願いします」
「あ、よろしくお願いします」
「あのぉ……なんて読むんですかこれ?
 だってハンバーグしかわかんなかったんだもん(←読み飛ばしてください)

 親切に教えていただきました。「わーせなる ぜろ」と読むそうです。なんでも、イングランドサッカーリーグのアーセナルFCが元ネタらしいです。もちろんすぐ言いましたよ、ええ。

すんませんサッカーわかんないです(泣)

 BonanzaライブラリにLS3600さんの提唱した高速化などを盛り込んだ……とのことでした(あとでブログを読ませていただきましたが、直前でのトラブルによる苦渋の決断だったようですね)。こりゃ相手が悪いわorz。
 実際、対局している時に見せていただいたんですが、NPSが白砂将棋とは2ケタ違います。ハードもXeonですし。

 将棋の方は、白砂将棋の中飛車に対し、Warsenal Zeroが▲2六歩と突いたにもかかわらず強引に相振り飛車に持ち込んできた。第3図は白砂将棋が一人千日手をして仕掛けを誘っているところだが、Warsenal Zeroの中の人は言う。「いやー、なんだかんだ強引に攻めるんですよー」
 その言葉通り、第3図から▲9五歩△同歩▲同香以下強引に攻めてくる。
 残念ながら、白砂将棋は危機感が持てずにのんきにと金を作ってホクホクしており、▲8五香と打たれたところで負けを悟った。最後、反則負けとなっているのは、将棋所にデータを渡すところにバグがあったためである。

 相手が強いし白砂将棋は弱いしで、まぁ当然といえば当然なのだが、完敗だった。


 いつもなら昼食前に3回戦くらいまでは進むのだが、今年はマシントラブル・回線トラブルが多かったせいもあって、ここで昼食となった。
 早々とコンビニおにぎりを食べ、1回戦と2回戦のバグを修正した。
 4手読みに設定して何局かテスト対局も行ったが、ちゃんと動いているようだ。
 これ以降はちゃんとするだろう。

■3回戦白砂将棋 vs 芝浦将棋Jr.

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 3回戦の相手は芝浦将棋Jr.。ご挨拶に伺うと「去年は不甲斐ない将棋で申し訳ありませんでした。今年はちゃんとしてきましたから」
 ……すいませんこっちがちゃんとしてないです……orz。

 将棋は2手目の△4二飛で早々に定跡から外れ、相振り飛車になった。実は相振り飛車になるというのは全く想定していなくて、定跡も全く入っていない。しまったー、と思って見ていると、芝浦将棋Jr.はスルスルと穴熊にもぐる。かなり手馴れている感じで、時間もほとんど使っていない。いや、これは相手の狙いにハマったかなぁ。

ん? まてよ……?

 なんだか判らないが白砂将棋もサクサクと指し手を進めている。先程言った通り、白砂将棋は相振りの定跡は持っておらず、どちらかといえば不得手な部類だ。なんでこんな速く指せる……?

 いつもなら昼食前に3回戦くらいまでは進むのだが、今年はマシントラブル・回線トラブルが多かったせいもあって、ここで昼食となった。
 早々とコンビニおにぎりを食べ、1回戦と2回戦のバグを修正した。
 4手読みに設定して何局かテスト対局も行ったが、ちゃんと動いているようだ。
 これ以降はちゃんとするだろう。

 4手読みに設定して何局かテスト対局も行ったが、ちゃんと動いているようだ。
 4手読みに設定して何局かテスト対局も行ったが、ちゃんと動いているようだ。
 4手読みに設定して何局かテスト対局も行ったが、ちゃんと動いているようだ。

……あ

 設定戻してない……orz(号泣)。
 対局時間4分11秒。悲しいくらいあっさりと3連敗。


 対局後、設定もきちんと元に戻し、ついでに手数に応じて心持ち使用時間を変化させるように変更した。
 あんまりヘンなことをやってバグでも仕込んだら目も当てられないので、プログラム変更はこれくらいに留め、あとは天命を待つことにした。

■4回戦 カツ丼将棋 vs 白砂将棋

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 心機一転、4回戦の相手はカツ丼将棋。ここまで3連敗同士という、言ってみれば「底辺の戦い」です(泣)。
 開発者の方にご挨拶をしたり、カツ丼将棋は1から作ったんですよー、もう最初のαβから符号間違ったりして大変でしたー、それを言ったら白砂将棋の1回戦はなぁっ!!!(爆) などと話しているうち、あっという間に第4図になっていた。
 飛車が6八で玉が2八だったらまったく問題ない駒組みなのだが、少しおかしい。
 伺ったところによると、機械学習にも手を出しているとのこと。Bonanzaも激指のオンライン学習も、少しずつ値を変化させて収束させていく、というプロセスは一緒で、どうやって値を変化させていくかというのが違うだけなんですよ、とかいう話を教えていただいた。
 実戦は、駒得に目がくらんだ白砂将棋は△5四角とし(▲2八飛と飛車を戻されてしまうので、厳密には少し損だと思う)、▲2八飛△7六角▲8八銀△8六歩とここで飛車先突破に向かった。△8六歩に▲同歩△同飛▲8九歩とでもしておけばまだ耐えられたと思うのだが、カツ丼将棋はそこで▲6九玉としてしまい、△8七歩成とおいしくと金を作った白砂将棋がそのまま押し切った。

 なんとか1勝。プログラムもちゃんと動いたし、やっとコンピュータ将棋選手権に参加できた感じだ。


■5回戦 白砂将棋 vs scherzo

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 5回戦の相手はscherzo。去年はコテンパン(←死語)にやられました。
 ところが、ご挨拶に伺うと、今年はちょっと様子が違うようです。
 なんでも、今年は機械学習をやってみたそうで、とりあえずちゃんと動いた、というのが当日の朝2時くらい(!)だったとのこと。ムチャするなぁ……(笑)。

 と、そんな話をしていると、あっという間に千日手になってました(第5図)。

 実を言うと、今年の一次予選、千日手だったのは本局だけでした。みなさん千日手は避けるようにしているんですかね。

 この千日手で1勝3敗1分。4勝することができなくなったわけで、この時点で白砂将棋の2次予選進出はなくなりました。とはいえ、むしろちゃんと将棋を指せたことに安心しているという下を見た状態でしたんで、その時はそんなことは考えもしていませんでした。


■6回戦 なり金将棋 vs 白砂将棋

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 6回戦の相手はなり金将棋。白砂のすぐ前に座っていました。ご挨拶して対局開始です。

 後手だったので、将棋は中住まいに……と思ったのだが、この展開は定跡がジャマをしてしまってか、あっさりと飛車先交換を許してしまった。その後、なり金将棋のスキを突いて駒得に走り、迎えた第6図
 実はこの△5二玉は、深く手を読んでのものではなく、序盤の駒組み段階の中住まいの△5二玉である。どうも終盤度の判定がうまく働いていなかったようだ(この原稿を書いているときにログを見返したが、全局おかしい状態だったorz)。
 第6図では▲1六角の両取りが見えているが……

第6図からの指し手
▲1六角△3四桂▲同角△同金▲4四桂△4三玉▲9六歩△4四金▲同龍△同玉▲5五金△3三玉

 ▲1六角には△3四桂と切り返して、先手を取れば両取りは防げる。しかしなり金将棋は突っ込んできて、しかも飛角を叩き切ってきた。
 これはさすがに無理筋で、普通に受けておいて攻めが切れている。そのまま白砂将棋が押し切った。

 形だけではあるがこれで2勝目。万全だったら勝てたというつもりはないが、前半の3局が悔やまれる。


■7回戦 白砂将棋 vs メカ女子将棋

zu  棋譜はこちら。  最終局はメカ女子将棋。前回も最終局で当たって、熱戦を制しました。実を言うと朧げにしか記憶がなくて、中の人に指摘されて思い出しました。さすがに記憶力がいいですね。
 先手をもらった白砂将棋は▲7六歩ですが、△5四歩とされて早くもピンチ(<をい)。もっとも、メカ女子将棋の中の人達も△9二香を見て「最後の最後に玉を囲うことを覚えたっ!」と喜んでいた。どんな対局なんだいったい(笑)。
 そんなこんなで迎えた第7図。高跳びしてきた桂馬をおいしくいただいたあと両成りを狙って打った手だが、ここでメカ女子将棋が力を見せる。

第7図からの指し手
△5五同角▲同歩△5七桂▲5九飛△4九桂成▲同飛△5七金

 バッサリと角を切って、返す刀で△5七桂の両取り。そして奪った金をベッタリと△5七金。狙いは△6七金▲同金△5八銀の1点なのだが、△5五飛という応援の手があるため妙に受けづらい。玉形が穴熊vsほぼ裸という違いも大きい。桂損の段階では消沈していたメカ女子将棋も中の人達も色めき立った。白砂もヤバいと思った。
 どう受けるのかと思ってみていると、白砂将棋は▲3三桂。以下△5一金左▲2一桂成と、ちっとも受ける気配がない。メカ女子将棋もメカ女子将棋で、ずーっとチャンスがあるはずの△6七金▲同金△5八銀をやってこない。不思議な手順が展開されつつ、第8図になった。

第8図からの指し手
△3六歩▲同銀△6七金▲同金△3五歩▲4七銀△7八銀▲8六角△6七銀成▲3一角成△5七成銀▲5三香△同飛▲同馬△2四香▲3八銀△5二金打▲5四馬

 △3六歩と形を乱した後、メカ女子将棋は△6七金と取ってきた。以下▲同金△5八銀▲4四飛△6七銀成の展開は、次に△5六飛の走りもあって後手が面白い。この手順だと△5六飛が3六銀取りにもなるので、△3六歩▲同銀とした手も生きている。
 しかしメカ女子将棋は△3五歩。これはありがたく▲4七銀と引いて、狙いの△5八銀が消えてしまった。ここでハッキリ白砂将棋がよくなったと思う。

 ところが、△7八銀に対する▲8六角がやりすぎの一手。ここは▲5七金△8七銀成▲5九角と全部逃げておけば優勢を維持できたはずだ。
 実際、最初は▲5七金と逃げる手を読んでいた。しかし、▲8六角と先手を取る手がよさそうに見えてしまって、そちらを選択してしまっている

retval1:   4618,te:57金(67) 
retval1:   5020,te:86角(77) 
retval1:   5020,te:86角(77) 67銀成(78)
retval1:   3805,te:86角(77) 22銀(31) 53金打  
retval2:   4474,te:68金(67) 87銀成(78)95角(77) 
retval2:   4618,te:57金(67) 87銀成(78)68角(77) 
retval1:   4576,te:57金(67) 87銀成(78)68角(77) 72金(61) 
retval1:   4588,te:57金(67) 87銀成(78)68角(77) 72金(61) 58金(57) 
retval2:   5013,te:86角(77) 67銀(78) 31角成(86)57歩打  69飛(49) 
retval1:   5013,te:86角(77) 67銀(78) 31角成(86)57歩打  69飛(49) 76銀成(67)
bestVal:   5013,te:86角(77) 67銀(78) 31角成(86)57歩打  69飛(49) 76銀成(67)

 △5七成銀に▲5三香というのも怖い手で、△同飛▲同馬の後△4八金と重く攻められたらおそらく負けていたと思う。ド駒損だが先手玉はほぼ逃げられない形である。香も渡してしまったので、その展開は何かのときの△2四香がトドメの一手になりそうだ。
 しかしメカ女子将棋は△2四香。すかさず▲3八銀と逃げて一安心である。それでもまだ△4八金はあったと思うが、安全にと思ったか△5二金打。これは▲5四馬としっかり逃げて攻めが完全に切れている形である。
 しかし、「よくする手」よりも「安全な手」というのをなんとか指せないものか。

 ここからは丹念に受けて後手の攻め駒を全部取ってしまい、相手からの攻めがなにもなくなってから「1200点を取りにいく」と金攻め。

「攻めないんですか?」
「と金1つで1200点ですから(攻めないです)」
「受けるんですかここで」
「相手がと金作ると1200点ですから(受けます)」

 という不毛な会話がしばらく続き、そのままほぼ全駒状態で終了した。


■おわりに

 最終的に、白砂将棋は3勝3敗1分。12位という結果だった。
 順位こそ12位だが、これはscherzoに引き分けた1分が大きい。システム上「引き分け>負け」であるため3勝4敗者よりも順位が上になったというそれだけのことである。
 後半はちゃんと将棋を指せた気がするが、裏街道を通ってきたため相手に恵まれた、とも言える。実際、白砂が勝った相手は19位21位22位(22チームが参加)。他のチームの勝ち星とは内容が違う気がする。
 とはいえ、つまらないミスやバグがなければちゃんと戦えていたのでは……とも思うので、結果には納得している。
 来年はもう少し頑張りたい。

 


初版公開:2014年5月24日
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