第22回世界コンピュータ将棋選手権出場記

■1回戦 白砂将棋vs椿原将棋

 棋譜はこちら

 初戦の相手はなんと前日の練習でも対戦した椿原将棋。縁がありますねーみたいなあいさつをした後、椿原将棋さんのPCで将棋を見てました。
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 先手を取れて角道を開けてくれたので、スムーズに7七桂戦法を指せた。しかし、前述したように勝手読み定跡を入れていないため、第1図のようになってしまう。

 本来なら、端歩は必ず受けるようにしているし、銀も6八・6七・5八のルートで使っているはず。6筋の歩も交換していないだろう。つまり、第1図は、7七桂戦法を指しているように見えて、実はかなり「損」をしている形なのである。
 とはいえ、こんなことくらいで目くじらを立てていられる(?)ほど白砂将棋は強くないのでこんなことを気にしていても仕方がない。事実、第1図から白砂将棋は暴走する。

第1図からの指し手
△4一玉▲6七金△4二玉▲7六金△4一玉▲8五金△4二玉▲4六歩(第2図)


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 なにをトチ狂ったのか、大事な大事な守備駒を前線に送り出してしまう。▲4六歩と突いているところから、一応△7八角とか△8九角を気にしてはいるようだが(笑)、気にするくらいだったら金は7八にいてほしかった。また、この後の展開に乏しいのも痛い。椿原将棋は一人千日手で低い体勢のまま待っているため、▲8六飛から飛車交換するような手も得になるかどうかわからないのだ。せめて銀が8八ではなく5八にいればそういう荒っぽい展開でもなんとかなるのだが……。

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 そしてこのあと、▲3六歩〜▲3七銀とさらに囲いを崩し、「囲いを崩した瞬間に仕掛ける」という素晴らしい大局観を発揮して第3図。攻めが続かないと判断した椿原将棋が再び一人千日手を始めた局面である。
 ここから人が変わったかのような攻めを白砂将棋が見せる。

第3図からの指し手
▲9二歩△同香▲9一角△8四飛▲3八金△4一玉▲6六歩(第4図)


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 端にちょっかいを出したのはどうかと思うが、そのあと▲6六歩に気づいたのは素直に評価したい。これで椿原将棋の角が死んでいる。
 厳密に言えば、△3五歩とか△4五歩とか暴れられると、8筋の金銀の遊びが痛いからまだまだ大変な形勢なのだが、椿原将棋は気づかず一人千日手を続けてしまったため▲5六歩〜▲6五歩がモロに決まってしまい形勢が傾いた。

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 そして第5図。
 ややもたつきながらも着実に駒得を重ね、あとは寄せるだけ、という局面である。
 ▲2五桂とか▲2六香とか、合駒がないから▲6一龍なんていう手もありそうだ。意地悪く指すなら▲8八歩といったん受けて▲8五角を狙うという手すらなくはない。
 そんな中、白砂将棋はピシリと次の一手を指した。

▲8三歩

 おいこら(怒)
 このクソ大事な時に……orz。

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 幸い、形勢が離れていたため大事には至らなかったが、このヌルさは致命的である。
 そして第6図。
 なんとか玉を追い詰め、最後の決め所、という局面だ。
 ▲2二龍△1四玉▲2六桂△2五玉▲2三龍で後手は受けようがないし、単純に▲2六桂としばっても勝ちの局面だ。
 そんな中、白砂将棋はピシリと次の一手を指した。

▲8二歩成

 もうヤダ……(泣)

 幸い、形勢が離れていたため大事には至らなかったが、このヌルさは致命的である。
 結局、このあとも後手玉をほぼ必死の状態まで追い込みながら▲9四歩〜▲9三歩成とヌルい手を続け、△5四銀が5七まで進んできたところでケツに火が点いたことに気づきやっと詰ますという体たらくぶり。
 勝つには勝ったものの、とても反省材料の多い一局だった。

 しかも、これが最後の「まともな将棋」になるだなんて……(泣)

■2回戦 臥龍vs白砂将棋

 棋譜はこちら

 2回戦の相手は臥龍。なんと目の前に座ってました(笑)。PC越しにご挨拶をしてから対戦開始です。
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 3二金戦法崩れからバタバタと進んで第7図。
 この△5二金が不用意だった。

 もともと白砂将棋は歩を謝るということをしたがらない。だから放っておくと飛車先の歩も受けないので、△8六歩に▲8八銀△8七歩成▲同銀△8六歩▲9八銀△8七角という攻めを喰らってしまうことが多い。まぁここまで進まないと悪いということが判らないので、「持ち歩が多い方がいい」と教えてしまうとそれを守ってしまうのは仕方がないとは言えるのだが。

第7図からの指し手
▲7二歩△同銀▲8二歩△5三銀▲5八飛(第8図)

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 ▲7二歩が鋭い。△8二銀とかわしても▲8三歩△同銀▲8二歩があるので△同銀だが、やはり▲8二歩で桂得が確定して先手よしである。
 ……というのが一般的な読みなのだろうが、第8図まで進んでも、歩切れが意外と痛いので、さほど先手が有利だとは言えないと思う。例えば第8図から△8六飛▲8一歩成△同飛となってみると、次の△8六歩の垂らしが受からない。たまにある「皮膚の歩がないから駒得でも不利」という形である。
 しかしそんな高等なことは白砂将棋には判らない。せめて7手くらい読めれば(△8六飛▲8一歩成△同飛▲9六歩△8六歩▲9七角△5四歩で7手)その居面が有利だと判るのかもしれないが、1手にかける時間を18秒にしているため、7手を完全に読み切る前に時間が切れてしまうのだ。
 それでもだったら第8図でおとなしく△5四歩とでも守ってくれればいいのに、先程説明したとおり白砂将棋は歩を受けるということをしたがらないのでそれもできず、結局有効な手がないということで歩切れの相手に水平線効果で歩を渡してしまうという最悪の選択をしてしまった。

 そこからはもうダメ。最後はキッチリ13手詰を読み切られ(「あ、詰みって出ました」と言われたので読み切りで間違いないはず)、あっという間に白砂将棋の敗北となった。

 とっとと終わったので(泣)時間が大幅に余り、そうだここで昼食休憩じゃなかったかと思い(このブログに出ているとおり、一応の予定は12:10から昼休)、大会運営者に質問に行った。すると、昼休は、4回戦のスイス式での相手が決定できるから3回戦が終わってからにしたいと言う。なんだかよくわからないがそういうものらしい(多分対戦相手の決め方にそれまでの勝敗が必要で、それを得るためには3回戦を終わっていないといけないとかそういうことだと思う。無条件で信用しているのでどういうことだか詳しく調べていない(笑))。なにしろ早く終わってしまったし逆に激戦が続いているところもあったので次の開始までには随分間があった。

■3回戦 なり金将棋vs白砂将棋

 棋譜はこちら

 3回戦の相手はなり金将棋。過去3回当たっていて、昨年度にようやく1勝を返した相手です。ご挨拶をしたあと、なり金将棋のPCで一緒に観戦させていただきました。
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 後手なので通常なら3二金戦法を志向するのだが、初手▲2六歩で3二金戦法は指せなくなった。とすると次は風車を目標とするが、定跡から外れた後の局面を相居飛車と認識してしまったため、そのまま矢倉っぽい陣形を組み始めてしまった。△2二角から△3三銀としているのは、「落とし穴方式」がうまく(?)機能して矢倉を目指したためである。冷静に見ると△2二角の瞬間▲2四歩があるのだが。
 乱戦の発端となったのが第9図。

 なり金将棋が軽い気持ちで▲5五歩と仕掛けた局面である。
 △5五同歩▲同角△4三金右くらいで落ち着いていればなんの問題もなかったのだが、白砂将棋はここで力強く△4三玉orz
 なんでこんなことに……。

 そのときのログがこれ。
retval:     70,te:55歩(54) 
retval:     67,te:55歩(54) 55角(88) 
retval:     77,te:55歩(54) 55角(88) 56歩打  
retval:     63,te:55歩(54) 55角(88) 54歩打  37角(55) 
retval:     71,te:55歩(54) 58飛(28) 43金(52) 55飛(58) 64歩(63) 
retval:     13,te:55歩(54) 55角(88) 43金(52) 77銀(68) 57歩打  68王(69) 
retval:     10,te:55歩(54) 55角(88) 51王(42) 77銀(68) 61王(51) 58金(49) 72王(61) 
retval:     54,te:43王(42) 54歩(55) 54王(43) 58飛(28) 45王(54) 53歩打  43金(52) 
bestVal:     13,te:43王(42) 54歩(55) 54王(43) 58飛(28) 45王(54) 53歩打  43金(52) 
 直前までは普通に△5五同歩と取る手を最善としていたのだが(まぁその読み筋も7二まで一目散に玉を持っていくというトンデモな読みなんだけど)、なぜか最善手が変化している。しかも、その後の読み筋が△4三玉▲5四歩△同玉▲5八飛に△4五玉である。そこまで玉が露出してなにがうれしいんだまったくorz。
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 その後、ある意味白砂将棋の読み通りに局面が進んで行き第10図。白砂将棋が△3三銀と引いたところだ。ちなみにこのとき、白砂将棋は先手が+214で有利と読んでいる。ここまで玉が包囲されているのにわずか歩2枚分しか不利ではないと読んでいるのだ。これはもうどうしようもない。
 しかしここから「事件」は起きた。

第2図からの指し手
▲2七金△同玉▲2五飛△2六金▲2八歩まで後手勝ち(先手打歩詰の反則)


 ▲2七金△同玉と玉を引っ張り出して▲2五飛。合駒の一手に、単に▲2三飛成と金を補充しておけば必死で先手の勝ちだった。
 ところが、なり金将棋は打ち歩詰め判定を組み込んでいないとのことで、詰ませば勝ちと▲2八歩と打ってしまった。打ち歩詰めの反則で大逆転勝ちである。

 打ち歩詰め判定はよく知られた軽易な判定法というものがなく、例えばれさぴょんでは実際に歩を打ったあとの局面を生成して詰んでいることを確認し、詰んでいればその手は打ち歩詰めであるという判定方法を用いている。しかし、歩を打つたんびにいちいち局面を生成していては時間がかかって仕方がない。そのため、速度を上げるために正確さを犠牲にするというのはよくあることだと思う。Bonanzaが飛角歩の不成を生成しないのと一緒で、「そういう局面はあんまりないだろうから、もしその局面が来たらスツパリ諦める」という思想である。
 しかし、それがまさか本番の大会で出るとは……。もう「運が悪い」としかいいようがない。

 とにもかくにもこれで2勝1敗。星だけ見れば強そうなソフトである。実情はご覧の通り散々なものなのだが。
 とはいえ、散々だからといって小手先の修正でどうなるという類のものでもない。焦っても仕方がないので、雨降りしきる中昼食を摂りに外へ出た。

 本当は晴れていたら駅前まで足を伸ばして鰻でも食べようかと思っていたのだが、この雨では面倒くさい。仕方がないので、押さえに調べておいたJUN'S+α cafe2010に行った。


これ
 写真の撮り方のせいであんまりうまそうには見えないが、そこそこおいしかった。
 それよりなにより、客層が女性だけというのは非常に入りづらかったです。

■4回戦 白砂将棋vsGA将!!!!!

 棋譜はこちら

 昼休明けの相手はGA将!!!!!さん。ご挨拶に来られて、そのまま一緒に対局を見てました。
 というか、GA将!!!!!さんが取り組んでいるという強化学習の話をいろいろお聞きしていました。少し話した結果コイツは素人だなと察していただいたのか、かなりざっくりと判りやすく説明していただきました(多分個々具体的な話を聞いてもムダだったと思いますorz)。
 ものすごく簡単に言うと、盤ゲームであればなにかしらゲーム攻略の<共通項>みたいなのがあるかもしれなくて、例えば三目並べと5×5将棋と本将棋でも、なにかの項目を取り上げたら同じような特徴が現れるかもしれない。なので、例えば「こんな項目はどうだろう?」と三目並べで学習をしてみて、その結果を将棋に応用する、なんてこともできる……かもしれない。もっとも、実際にやってみると、三目並べと5×5将棋には相関があっても、選択肢とか盤面の広い将棋にはその学習結果は使えなかったりとか、そういう例もいっぱいあるらしい。
「学習は早いと1日もあれば収束するんで、寝る前に学習を始めると仕事から帰ってきたら終わってる、っていう感じです。結果を見るのがすごく楽しみです」
 みたいなことを言ってました。なんか運動会を見守る親御さんの気持ちみたいですねー、と言ったら「そうですね」と笑顔で言われました。
 専門的な話はGA将!!!!!さんのブログを参照ください。白砂の理解や記憶が間違ってる可能性も(多々)ありますので。zu

 で、対局。
 先手番だったので7七桂戦法に進んだのだが、6手目に△3三角と打たれる手は定跡にはなく、▲6八玉と居飛車志向で受けてしまった。
 また、△8六歩と飛車先交換に来た手に対して例によって▲同歩と取らなかったため、例によってヘコまされてしまう。
 そして第11図。

 GA将!!!!!が桂頭を狙って△7二飛と寄った局面である。
 3三の角と7二の飛が7七を狙っているため、どちらかの利きをなんとかしたいと考えるのがまぁセオリーというものだろう。受けの手筋としては、▲6六歩△同角▲6七金として1歩を犠牲に桂頭を守る手が見える。▲6六歩に△7五歩としてくる手には、▲8三角成△7六歩▲7二馬△7七歩成▲同金と桂損を甘受してでも耐える。
 しかし。

第1図からの指し手
▲7五歩△同歩▲7三歩


 まず危険な桂頭で自ら戦いを起こすという大局観がどうかしている。ログをみると、▲7五歩△同歩は▲8三角成△3二金▲7二馬で先手有利と読んでいる。△3二金というのはどうなんだという気がしなくもないが、だったら△7五同歩には▲8三角成としてほしかった。これもログをみると、▲8三角成は△7六歩▲7二馬△7七歩成▲同金△7二銀で不利と判断し、直前で▲7三歩に変更しているのだ。「読んでみると悪くなったのでとりあえず歩を捨てる」という、絵に描いたような水平線効果にハマってしまっている。

 結局、このまま7筋を突破され、2八飛が壁にしかならずにそのまま負かされてしまった。
 これで2勝2敗。五分に戻ってしまった。


■5回戦 さわにゃんRLvs白砂将棋

 棋譜はこちら

 5回戦の相手はさわにゃんRLさん。前回大会でも当たり、ド必敗の将棋を拾わせていただきました。この辺りのことは自動生成された観戦記をご覧いただくと判るかと思います。地力は明らかに向こうの方が上で、苦戦は覚悟していました。中の人がわざわざ挨拶にいらしたため、白砂のPCで観戦してました。
 お話を伺うと、白砂のようにライブラリに逃げるのではなく、ちゃんと1からプログラミングをされたとのこと。頭が下がります。星勘定の話から2回戦での打歩詰で勝ちを拾った話にもなり、いややっぱり打歩詰を組み込むのは面倒だよねぇ、とか、白砂はれさぴょんだからそういう苦労はしてなくてねぇなんて話をしたりもしてました。
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 将棋はさわにゃんRLの初手▲1八飛から定跡を外れた勝負になり(そりゃあなるわな)第12図。さわにゃんRLが▲4五歩とようやく突っかけた歩を取り返したところである。

第1図からの指し手
△4三玉▲4六金△3四玉

 なんでこう玉が上に上がりたがるのか……。2二の角と交換したいくらいである。
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 しかしその後、6六角の弱点を衝いて駒得を果たし、第13図となった。
 ここからさわにゃんRLが力を見せる。

第13図からの指し手
▲7七銀△同金▲同角△8七歩成▲同歩△4六桂▲4八金△7六銀▲8六角△8七銀成▲5三角成△4三金(第14図)

 盤面左で一番働いている後手の駒は7六金。それを除去しに行く▲7七銀が好判断だった。
 これに対し、△8二飛として角だけは世に出さないという方針もあるとは思うが、白砂将棋は素直に応じる。というか、その後の△7六銀〜△8七銀成がひどすぎる。第2図と第3図を比べていただければ一目瞭然だろう。先手だけ一方的に駒が捌けている。
 これもログを調べてみると、「▲4七歩で桂損」というマイナスが残っていて、それを避けるために先手を取ろうとしてこうなったらしい。損が残って困るなら最初っから△4六桂とするなよ、と思ってしまうのだが(泣)、その辺を押さえるともっと強くなるのだろう。
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 さて第14図。
 これはダメだよ決め手があるよ、と白砂が解説をしていると、さわにゃんRLはしっかりとその手を指した。その確実性が白砂将棋にも欲しい……orz。

第14図からの指し手
▲4五金△同玉▲4三馬△4二銀▲4六金△同玉▲4七金打△4五玉▲4六歩まで後手勝ち(先手打歩詰の反則)

 ▲4五金が「送りの手筋」。やっぱり、「玉しかヒモがついていない駒に当たりがある時はピンチ」というのを教えないとダメだなorz。まぁ、それ以前に、3手指したところで自玉が危ないという形勢判断ができれば問題ないのだが。
 ▲4三馬で必死がかかり、これは綺麗に寄せられたね……つーかここで考えてないでそれより前に読んでくれよ、などと言っていると、白砂将棋はしっかり18秒考えて△4二銀。詰を読みきったさわにゃんRLは1秒で▲4六金と取り、今度はさすがに白砂将棋も4秒で詰を悟り△同玉。以下ノータイム指しで人間の眼にも留まらぬ速さで詰の局面が出現し……ってええっ!?

 白砂はそもそも△4六玉のときに▲5八桂△5六玉▲4六金までの詰を読んでいたので、打歩詰の可能性すら気づかなかった。
「おいまたかよー」みたいなことをサーバを見てた人が言ってたと思う(笑)。
 局後、週刊将棋の人に取材も受けた。
「なんか狙ったりしてるんですか?」
「いやいやしないですよ!」
 みたいなやり取りもした(笑)。
 その時、対局前に話してたら実際に起きちゃって……打歩詰の判定は面倒なんですといった解説も少ししておいた。そのためか、週刊将棋にはその辺の話が少し出ていた。

 なんかいいんだろうかというタナボタ2連発で、とにくかくにも3勝2敗である。残り2局のうち1回でも勝てば、2次予選進出の可能性はグンと高くなる。
 正直なところ、2次予選に行くということを露ほども考えていなかったので(そもそも宿も取っていない)、なんかヘンな気分だった。

■6回戦 白砂将棋vsApery

 棋譜はこちら

 6回戦の相手はApery。初出場のソフトです。星は同じ3-2ですが、内容が違います。強い相手と見るべきでしょう。中の人が挨拶にいらしたため、白砂のPCで観戦してました。
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 ▲7六歩△8四歩▲7八金に△3四歩だったら▲2二角成なのだが、△3二金だったため中飛車に。機敏に動いて2歩得の白砂将棋と見るか、歩を犠牲に手得をして金銀を盛り上げるAperyと見るか、第15図はちょっと微妙な局面だ。

 ここからAperyが綺麗に攻めをつなげる。

第15図からの指し手
△5六歩▲7五歩△4六歩▲3八銀△4五桂(第16図)

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 △5六歩で飛車を抑えるのが肝心な一手。こうやって飛車の横利きを消してから△4六歩と突くとあら不思議、9二の角の利きが鬼のように厳しくなっている。
 同じようでも、先に△4六歩▲同飛△4五銀▲2六飛△4六歩では▲3八銀△4七歩成▲同金で今ひとつ(もちろんそれでも有利だが)だ。本譜のように、先に△5六歩としておくと、そこで△5七歩成が厳しい(▲5七同金は△3八角成で銀が取れる)という仕組みである。

 第16図からは▲5三歩△同銀▲5四歩△同銀▲6八銀と進む。こういう水平線効果はなんとか消せないのかなぁorz。
 ここでAperyは「決め手」を放つ。

△3三歩(第17図)

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 ここまでするのが最善かどうかは置いておいて、「優勢のときに自陣に手を入れて嫌味を消す」という点で、1次予選のコンピュータ将棋的には最善手だと思う。
 特に中の人がこの手をいたく喜んでいて、話を伺うとこの対局の前に少し調整をして、優勢のときに腰を落とすようにしてみたとのこと。患者に処方した投薬がピタッと決まったようなもので、それは開発をしていて気持ちがいい瞬間だろう。もちろんしっかりと「余計なことしやがって(笑)←原文ママ」と言っておきました(笑)。
 将棋的にはもう終わっていたので、本局のように、優勢になった場合にはしっかりと腰を落とすようにすると勝率は上がるよね、みたいな開発の話をしてました。実際、本譜はこのあとも△5四銀打△6五銀打と「友達をなくす手」を連発して、Aperyの快勝となった。

 これで3勝3敗。次局に勝って2次予選進出がどうか? という厳しい状況となった。

■7回戦 隠岐vs白砂将棋

 棋譜はこちら

 最終局は隠岐。前回は綺麗に負けました。お互い3-3の星なので、とりあえず勝たなければ話になりません。一言挨拶に伺って始まりました。
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 後手を引いた瞬間に半分負けた気でいたのだが、やはりというか恒例というか、矢倉を作っておきながら8二に飛車がいるまま△7二玉とするという訳の判らない指し方であっという間に不利になってしまった。
 それでも、矢倉城を盛り上げて桂得を果たした第18図では少し盛り返したと思った。

 ここで白砂将棋がピシリと次の一手を指す。
△2七桂

なにしてんだよorz
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 このあともちゃもちゃやって第19図。

 もちろん後手が悪いは悪いのだが、駒をたくさんもらったのでだいぶ紛れてはいると思う。
 しかしここから白砂将棋は……orz。

第19図からの指し手
△3五歩▲同龍△6九銀▲6八金△5九金▲3一龍△8一飛▲6三金△同玉▲8一龍(第20図)

 △6九銀から△5九金打というのがひどすぎる手順。最下段に駒が4枚並ぶという超悪形が出現してしまった。
 そのあとの△8一飛もひどい。▲6三金であっという間に玉が丸裸である。やはり「送りの手筋」が全然見えていない。
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 これはさすがにダメか。そう思った。

 しかし、ここから今度は白砂将棋が玄妙な手順を見せる。

第20図からの指し手
△4四角▲2三飛△5三金▲9一龍△4五角▲6一龍△6二銀▲2一龍(第21図)

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 △4四角△4五角と2枚の角を据えたのが粘りのある手順。実は▲9一龍のところで▲4五金くらいでしばられていたらどうしようもなかったのだがそれは見ないことにしよう(笑)。それを防ぎつつ△4五角と先着できたので、逆に△6五歩の攻めが生じている。この瞬間だけは「もしや」と思った。

 しかし、よくよく見ると次の▲3二龍が鬼のように厳しい。
 白砂将棋もそれに気づいたようで、第21図から△3四角と受け、そのままズルズルと負けてしまった。

■おわりに

 以上のように、白砂将棋は3勝4敗で選手権を終了した。
 星だけ見ると3勝だが、そのうちの2勝は反則勝ちなので実質的には1勝しかしていない。一言で言って惨々たる結果である。
 今回は開発経過をいつもより詳しく書いたので、白砂がなにもできていなかったということはお判りいただけると思う。本当にダメだった。
 反省しか思いつかないが、事実だから仕方がない。
 来年はもう少しちゃんとしたい。

 


初版公開:2012年6月11日
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