将棋コラム


  振り飛車の捌き、居飛車の攻め Date: 2004-09-03 (Fri) 
 竜王戦本戦、矢倉vs神谷戦から。
 第1図は、5筋位取りというレトロな戦法から後手の神谷が仕掛けたところ。

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▲5六銀△8七歩成▲5五角△同角▲同角△7八と▲4八飛△8九飛成▲4五歩(第2図)

 細かい手順はとりあえず置いておいて、まずは第2図の▲4五歩という感触を味わって欲しい。これぞ振り飛車、という一手である。龍とと金を作られてはいるものの、舟囲いのド急所であるコビンを攻められる体勢だ。大砲の飛車をしっかり4筋に移動しているのも大きい。このあと、なにかの時に▲3六金という手が攻防の決定打になりそうな局面である。

 ……と、まぁ、振り飛車党にとっては景気のいい話なのだが(笑)、第1図から第2図に至る手順で、いくつか納得しづらい変化もある。

 まず▲5六銀。
 確かに振り飛車党らしい捌きの一手なのだが、ここで素直に▲8六同角(第3図)と取ると、どういうことになるのだろうか?

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 例えば△8八歩は、▲7七桂△8九歩成▲9八香(第4図)と進む。なんとなく振り飛車側も捌けていそうだ。この形もやはりと金が空振っているし、飛車先も重い。

 ここから△8六飛▲同歩△4六銀▲同金△7七角成▲5八金△6八馬▲同金△5九飛▲6六角(第5図)、あるいは△8六飛▲同歩△4六銀▲同金△5七角▲4八飛△7七角成▲5八銀(第6図)ともなればはっきりする。これは先手が指しやすいだろう。

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 第5図の▲6六角、第6図の▲5八銀、ともに振り飛車党は是非とも覚えておきたい手だ。

 ではなぜこの変化を選ばなかったのか?
 単純に本譜の手順で先手がいいと判断したのかもしれないし、もう一つ、第3図で△6五桂(第7図)という手が気になったのかもしれない。
 単純な▲6六歩のような手では、△8五歩▲9五角△9四歩▲6二角成△同飛▲6五歩△同飛(第8図)で意外とはっきりしない。

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 第8図で▲7七桂は、いったん飛車を引いておいて次に△4六銀▲同金△7七角成という手がある。そうなっても左桂が銀に化けたことになるので先手がいいのかもしれないが、具体的な手段となると難しいと思う。

○       ○       ○

 ▲8六同角の変化はまだ判るのだが、本当に白砂が判らないのは、▲5六銀になんで△同銀(第9図)と取らなかったのか、である。

 単に▲5六同金では△7七角成▲同桂△8七歩成が桂に当たるので、おそらく▲2二角成△同玉▲5六金という展開になるものと思われるが、△8七歩成(第10図)とした局面でさてどう指すか?

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 ▲8三歩△同飛▲8四歩△8二飛(△同飛は▲6六角で王手飛車)と決めておく手は浮かぶが、そのあとの先手の攻めがまた難しい。

 ▲8三銀△8一飛▲7二銀成△5一飛(第11図)はいかにも遅いし、△4二金寄とか△6二同金といった手が5六の金に当たるので「飛車を封じ込めた」とも言い切れない。第11図で▲6四歩と攻めても△6七歩▲同飛△7八角の切り返しがあるし、▲8三歩成は遠すぎる。▲7二銀成で▲7四銀成という手もないではないが、これも遅そうだ。

 第10図で単に▲4五金と出て次に何か狙う、という手もあるが、△3三銀との交換はどうだろうか? 王手飛車が消えたので△8四飛と走る手が生じる。
 例えば▲6四歩△8四飛▲6三歩成△同金▲3四金△6五歩(第12図)。後手陣もかなり乱れていて気持ちが悪いが、「と金得」が生きそうな将棋だ。

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 実際はなにかうまい攻めがあるのかもしれない。
 読売新聞将棋欄で取り上げられているので、読んでいる人なら何か知っているだろう。白砂は図書館で調べようと思ったのだが、この付近2日分がスッポリ抜けていて(盗難によるもの。最近とみに多い)調べることができなかった。

 実は簡単な攻め筋があって先手が一発で悪くなる、とかだったら、恥ずかしいなぁ……(笑)。

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