将棋コラム


  遊び駒有効活用 Date: 2002-10-03 (Thu) 
 将棋は遊び駒があると勝てない、とよく言う。だからこそ常に遊び駒がないように気を配れ、と。
 しかし、じゃあその方法はというと非常に難しい。結局のところ将棋は1手ずつしか指せないわけだし、都合のいい手を指させてくれるほど相手は甘くない。厳しい表現を使えば、遊び駒を使えるような展開になるのならそもそもそういう展開に相手はさせないわけで、つまりは斬り合う以前に先の先まで読んでいないといけないということになる。
 とはいえそんなことがアマチュアである我々にできる筈もなく、また、先の「遊び駒を活用せよ」という教えは「気づかないことが多いけど、気を配っていることによって気づくこともあるよ」という意味であり、要するに全然読みがしっかりしていないぞと叱咤しているわけである(笑)。
 では、その読み抜けというか拾い落としというか、そういうのをなくすにはどうすればいいのだろうか? 結局のところは読みの精度を上げていくしかないという身も蓋もない回答になってしまうと思うのだが(笑)、しかし、それとは別の次元の話として、「遊び駒が活用できそうな形を数多く見ておく」ということも必要だと思う。引出しを多く持っておくことにより、できるだけ「形に気づく」ようにするわけである。

 1図はそんな「遊び駒が活用できる」局面。

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 こう断ればしっかり読みを入れるのだろうが(笑)、そうでなければ、▲4五桂とか▲2二歩成△同角▲4五桂とか、直接攻める手を読んでしまうのではないだろうか?
 しかし、どちらの攻めにも▲4五桂には△4四歩と辛抱するのが好手で、一筋縄では行かない。単純な攻め合いになると穴熊の遠さが生きる(というか先手の玉の弱さがたたる)ので、そういう展開はあまりよろしくない。まぁ、ヒントがふんだんにあるだけに正解は容易だろう。

 正解は▲3七飛である。
 △2九飛成とするのは▲3三角成△同銀▲同飛成の2枚替えで先手がいい。この局面は次の角取りが受けにくく、また角を取った手が金取りと次々に手が続くので後手は攻め合う余裕がない。というわけで△同飛成▲同桂(2図)は必然だが、この局面、先手の桂が活用できて、かつ後手の飛車が消えている。

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 ここで△3九飛では喜んで▲4五桂とされてしまう。1図での▲4五桂は持駒を打った手だが、2図からの▲4五桂は2九の桂を跳ねていった手だ。桂馬の価値、というか先手の側から見た投資感覚が違うのだ。だから同じように△4四歩▲3三桂成△同飛成は先手の大得である。仮にすぐに決める手がなかったとしても大得だ。
 というわけで2図では△4四歩と受けるくらいなのだろうが、それでも▲4五桂と強引に行く手がある。△同歩は▲3三角成△同銀▲3二飛があるので結局△3九飛と受けるしかないのだが、▲3三桂成△同飛成(3図)で先手大成功となる。

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 ここからは▲2二金と凡に攻めればいいだろう。△4二角には▲3二金△同龍▲2二歩成(取れば▲3四桂の飛角両取り)がある。

 居飛車対振り飛車の将棋では、(居飛車・振り飛車ともに)桂香が取り残される展開になりがちだ。そんな時、活用できないかと常に考えること。これが大事である。特に、例のような合わせ飛車はよく出てくる手なので、覚えておいて損はない。
 何より、こういう「気持ちのいい手」をいくつも見ておくことによって、それに気づく機会も増えると思う。

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