わかる!勝てる!! 現代中飛車

わかる! 勝てる! ! 現代中飛車 (マイナビ将棋BOOKS)
著者 :大平 武洋
出版社:マイナビ
出版日:2014-12-13
価格 :¥1,694(2024/02/06 15:13時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

元ZONEヲタ現乃木坂46ヲタの大平が解説した中飛車本。ハロヲタの白砂からすると敵以外の何者でもないな(<違う)。
初手▲5六歩からの先手中飛車に限定して解説している。

内容はこんな感じ。

先手中飛車の理想形
5五の位を取って、5六銀で支える形。玉は美濃囲い。……という、中飛車の理想形について解説している。その形を作ることが目標であり、後手はそれを阻止するんだ、という流れで本書は進んでいく。
5筋不交換・△7三銀型
先手が5筋の位を取った形から、後手が△7三銀△6四銀と角頭を攻めて来る形。
5筋交換型
▲5五歩△同歩▲同○として捌いてしまう指し方。
後手居飛車穴熊
難敵居飛車穴熊。先手はガンガン攻める。

元々形を絞っているせいか、とても内容が濃く感じる。それでいて、随所に「ポイント」「注意」といったワンポイントがあるため、読んでいて判りやすい。
また、中飛車を指すにはどのような心構えで行くべきか、という点についても度々触れているので、中飛車党になりたい級位者は参考になると思われる。単純な定跡や変化の解説に終わっていない。

細かいことを言えば、編集で押している「指し手を示す矢印」はいらないんじゃないかなぁ、とか、いくつか「ですます体」が変に混じってたなぁ、とか、端歩の解説は序章に入れちゃった方がスッキリしたかなぁ、とかはあるが、本当にその程度。個人的にはフォントや図面の大きさ、行間に至るまで、どんぴしゃのどストライクで、とても読みやすかった。

確か著者は居飛車党だった気がするのだが(笑)、そんなことを全く感じさせない良書だと思う。これから中飛車を指してみようという人は絶対に読んでみて損はない。

作成日:2015.01.06 
中飛車

谷川浩司の本筋を見極める

谷川浩司の本筋を見極める (NHK将棋シリーズ)
著者 :谷川 浩司
出版社:NHK出版
出版日:2007-02-14
価格 :¥225(2024/02/06 05:35時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

著者が、自身が務めたNHK将棋講座をまとめたもの。
序盤、中盤、終盤それぞれについての基礎的な知識と考え方が書かれている。

内容は、

  • 序盤
    • ・開始4手による17種類の戦型分析
    • ・玉の囲い方
    • ・矢倉戦、対抗型における考え方
  • 中盤
    • ・位の重要性と対抗法
    • ・仕掛けのタイミング
    • ・攻めと受けの考え方
    • ・形勢判断の方法
  • 終盤
    • ・速度の概念
    • ・詰みについて
    • ・終盤での方針

といったところ
講座で細切れに解説する必要があったからなのだろうが、コンパクトにうまくまとまっていると思う。

個人的には、中盤での形勢判断法として紹介されている「働いている駒をカウントして、多い方が有利」という簡便法が目からウロコだった。もちろん、ものすごい正確な判断法でないことは少し考えれば判ることではあるのだが、初心者にとって大事なのは「形勢判断をする」ことそのものなのだから、その方法はできるだけ簡単な方がいいに決まっている。遊び駒は悪いものであるということも分かるし、これはいい方法だと思った。

また、これは一例だけだったのだが、駒の損得と形勢判断について、とても詳細に解説しているのもよかった。

第1図。▲2三歩成というおいしい手が見えるが、それに飛びついていいのか? という問題だ。
▲2三歩成に△同金▲同飛成は先手がおいしすぎる展開でそう進めばなんの問題もないのだが、当然後手は反発してくる。▲2三歩成に対して、△2五歩▲同飛△3四銀(第2図)という手順である。
これで飛車と「と金」の両取りで、後手は受け切ることができる……と、まぁよくある入門書だと解説はここで打ち切りだろう。もう少し踏み込んで、▲3二と△2五銀(第3図)と進んだ局面を解説するくらいか。先手は金と歩を取って、プラスと金を作った。後手は飛車を取った。この取引ならまぁ互角くらいでしょう、と。

しかし本書では、第3図から「今後、先手のと金や後手の持ち飛車がどう働くか」を示し、そこまで踏み込んで形勢判断を考えよう、としているのだ。
具体的には、

  • 先手は▲2一とと駒得することができる。
  • しかし、と金が2一へ行くのは駒の効率からすればマイナスである。
  • 後手は飛車を打てば桂香を取り返すことができるので、と金で桂香を取っても一時の駒得にしかならない可能性がある。
  • よって、先手のと金と後手の飛車が、それぞれどのように働くかを判断する必要がある。

と、こういう具合に話を進めている。
初級者どころか、中級者くらいであってもかなり高度な話だと思うのだが、しかし、こういう風に形勢を判断していくことはとても大事なことだとも思う。たった一例ではあるけれども、基礎的な解説の中にも、このような上級者になるための指針のようなものが書かれているのはすごいと思った。
その他にも、「美濃囲いで飛金と角銀、どちらを渡しても大丈夫か考えるべき」など、中級者以上の人にも参考になる内容も数多い。

タイトル通り、まさに「本筋を見極める」内容の数々。級位者はもちろん、3段くらいまでの人は、一度は手に取ってみる価値はあると思う。

作成日:2015.01.06 
大局観

居飛車穴熊の教科書

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教科書シリーズの一冊。今度は居飛車穴熊を解説している。

内容は、

  • 角筋を止める後手四間飛車に▲6六銀
  • 角筋を止める後手四間飛車に▲6六歩
  • 後手ゴキゲン中飛車に(超速からではない)居飛車穴熊

となっていて、題材としてはちょっと古い。教科書なので基礎的な話をしましょう、ということなのだろう。

3段くらいまでの居飛車党は、本書の内容をよく頭に叩き込んでおいてほしい。現在では同じ形になるということはないだろうが、7三の桂や3三の角を攻める手筋や、囲いが完成したら強気に攻めるという距離感は、居飛車穴熊党になるためには絶対に身に着けなければならない内容だ。
逆に振り飛車党なら、本書の内容を踏まえつつ、だから石田流やゴキゲン中飛車や角交換四間飛車が流行しているという事実を理解してほしい。また、本書の中の「都合のいい手順」を探してみれば、ノーマル振り飛車も意外とやれるんだということがわかるだろう(特に捌き合いになった直後くらいに、振り飛車側の甘い手が目立つ)。
なお、有段者についてはやや星を落としているが、これはもう常識の範疇なので、必要性があまりないと考えたから。まぁ元々対象棋力を外れているのだから当然といえば当然だろうか。

作成日:2015.01.05 
穴熊

奇襲振り飛車戦法 ~その狙いと対策~

奇襲振り飛車戦法 ~その狙いと対策~ (マイナビ将棋BOOKS)
著者 :飯塚 祐紀
出版社:マイナビ
出版日:2014-12-23
価格 :¥1,227(2024/02/06 08:13時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

意外とB級戦法の本というのは少ないものだが、本書はB級以前の、まさに「奇襲戦法」を題材にしている。
なにしろラインナップが、

  • 原始中飛車
  • 端角中飛車
  • 石田流
  • 鬼殺し
  • 急戦向かい飛車
  • 強引向かい飛車
  • 阪田流向かい飛車
  • 鬼六流どっかん飛車
  • 角頭歩
  • パックマン

である。なんだかとても懐かしい感じがした(笑)。

基本的には、最初に奇襲成功のパターンを紹介し、そのあとで奇襲対策を紹介している。ものすごく大雑把に言ってしまうと、『超急戦!!殺しのテクニック』のような作りである。
図面をふんだんに使っているのでとても読みやすいが、ページ数の割に変化が薄い気がするのはそのせいなのだろうか。正直なところ、「実戦で使えるか?」と疑問に思ってしまった。本気で変化を書こうと思えば3冊分くらいにはなる気がするので、これだけいろいろな奇襲戦法を紹介しているのであれば仕方がないところだろうか。

最近では、角交換四間飛車とかゴキゲン中飛車とか、プロの将棋が変態戦法化している感すらある。また、ネットの普及や棋書の充実により、アマチュアでもプロはだしの本格的な序盤を指すようになっている。そのせいか、本書の戦法達を久しぶりに目にして、本当に本当に懐かしさを感じた。有段者の方、立ち読みでもいいから本書を手に取ってみてほしい。
初級者の方は、本書を読んでみて、一度指してみるのもいいと思う。こういうのは将棋ソフト相手よりは対人の方が有効なので、ネット将棋などで。道場などに行くと嫌な顔をされるかもしれないですしね(笑)。いや、それ以前に、いまだにこういう戦法一本の御仁がいっぱいいるかもしれないな(笑)。

作成日:2015.01.05 
奇襲・変態戦法

横歩取りの教科書

横歩取りの教科書
著者 :畠山 鎮
出版社:マイナビ
出版日:2014-05-23
価格 :¥1,694(2024/02/06 07:56時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

横歩取りの定跡及び終盤の戦い方について書かれた本(一応、中盤編というものもあるのだが、中盤についての解説という感じはしなかった)。

内容は、△2三歩型の横歩取りから始まって、相横歩取り、8五飛戦法(新山﨑流や△2四飛ぶつけを含む)と、とても広範囲にわたっている。その分個々の内容は簡略化されているが、それでも本筋はしっかりと解説されているので、一通り読めば横歩取りとはどんな戦法かということは理解できるだろう。

著者がこういう「殴り合い系」の将棋が大好きということもあってか、こういう将棋は面白いからもっとアマチュアの人も指してよ、という主張が強く感じられる。それはとても好感が持てた。ただ、初の著書ということもあってか、少し……ごめんなさい個人的にはかなり、文章がこなれていないと感じた。まぁ、大盤解説などを聞いていると元々こういう言語センスの人なのかなぁという気もするが、ここの語尾はこうだろう、とか、この文章は1文でいいよね、とか、なんだかどうでもいいようなことにすごく目が行ってしまった。

あと、好きだということはとてもよく伝わったのだが、そのせいか(違うかもしれませんが)本当にギッシリと変化が詰まっている。上記では「簡略化されている」とはいったが、それでも初級者・中級者向けの内容と考えるとかなりのボリュームだと思う。熱血指導だなぁと好意的に捉えてはいるのだが(笑)、図面の使い方に少し難があると感じた。
例えば、指し手が続いて、ここで後手からうまい手がある、という文章があったとする。この場合、ページの左下などに指了図があって、読者はその図面を見ながら次の一手を考え、そして答え合わせでページをめくる、というのが普通だろう。わざわざそこで「うまい手がある、考えてみましょう」と煽っているわけだし。しかし、本書の場合、そのページに図面が載っていなくて、次ページの右上の大図面しかないのだ。しかも、そこにそこから先の指し手も書いてある。これでは「うまい手がある」という惹き文句が台無しである。

また、主要な変化であり、①②③などと変化も分かれている局面なのに、図面が1枚もなかったりする。白砂だったらこっちの図面じゃなくてここを使うのになぁ……と、読みながら何度か思ってしまった。これは著者の責任というより、編集が指摘したり考慮したりする部分じゃないのかなぁ。なんかもったいないと感じた。

編集という点で言えば、項立ての構成も少しおかしい気がした。

最初でも「中盤編」について触れたが、こういう章分けをする理由がいまいち伝わらない。
また、各項のタイトルももう少し工夫がほしい。見出しを読んでも自分がいま何の戦形の解説を受けているのかが判りづらい。初級者・中級者向けに取っつきやすくと考えてのことだと思うのだが、タイトルとサブタイトルを使い分けるなどすれば、その辺りはクリアできたのではないかと思う。

不満点ばかりをあげつらってしまって申し訳ないが、誤解の内容に繰り返しになるが書いておくと、取り上げている戦形や書かれている変化、著者の横歩取りに対する愛情は十二分に感じられる。それだけに、処女作なんだからもう少し編集頑張ってやれよと、そこが残念なのである。白砂が頭の中で再編集した原稿が読みやすく理解しやすいかは保証できないが、それこそ1からリライトしたいくらいに内容は素晴らしい本だった。
初段くらいまでの居飛車党なら、本書からB級な変化の部分を選んで指してみても面白いだろう。それこそ、著者が言う「面白い将棋」が堪能できると思う。有段者でも、正直購入を薦めるほどに詳しい本ではないが、横歩取り使いではないのであれば、一度は読んでおけば最新形までの過去からの流れが整理されて判りやすく理解できるはずだ。できれば文章などには目をつぶって、符号を中心に追いかけるとより理解が深まるだろう。

作成日:2014.12.30 
横歩取り
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