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最前線物語

最前線物語 (最強将棋21 # 1)
著者 :深浦 康市
出版社:浅川書房
出版日:2003-09-01
価格 :¥1,540(2024/02/07 08:11時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

『これが最前線だ!』の続編と位置付けていいと思う。出版社は違うのだが、独立してどうたらという話を聞いたことがある。まぁ大人の事情ということで、細かい詮索は抜きにしよう(笑)。
現在プロで指されている最新形について、その形ごとにテーマ図を設けて解説している本。形が固定されてからの解説なので、どうやってこの形に組むんだいという人は対象にしていない。最新形・定跡形を追うという意味で本書を読むなら、対象棋力は道場4段から、と言っても過言ではない。それほど解説は難しい。

前著では、およそプロで指されている形は奇襲・変態戦法や一部の力戦形を除いて全て網羅されているというほど広範囲にわたってカバーされていたが、今回は藤井システムと横歩取り8五飛戦法が誇張ではなく8割以上を占める。それだけ両戦法については突っ込んで解説されているわけだ。
また、前著では固定されていたページ割りが、テーマごとにバラバラになった。詳しく書きたいテーマについては6ページくらい割いているし、3ページでさらっと流している(本筋の変化が少ないという意味で、決して簡単という意味ではない)テーマもある。そのため、とにかく知られている変化をぶちこんであるような感じを受ける。手の密度の濃さで言えば東大将棋シリーズ並だろう。
しかし、東大将棋と違って数ページ単位で話を進めてくれるので、読んでいて内容を理解しやすい。解説のはじめに、半ページを割いて「これはこういう経緯でこうなった」「この狙いがあるのでこの形に持ってきた」というフリがある(ページ上半分に大図面があり、下半分に解説がある)ので、その都度きちんと立ち止まって読み込むことができるのだ。

先に「最新形・定跡形を追うという意味で本書を読むなら」という表現を使った。
何故かというと、本書の一番面白いところは、そこにないと白砂は思うからだ。
本書では各テーマを提示し、それぞれについて実戦譜を元に詳しく研究していく。その過程を追うことによって、読者は単に最新形を理解するだけでなく、将棋を極めんとするプロの苦闘の跡を読み取ることができるのである。

本書は、そんなプロ達の「激闘の記録」でもあるのだ。

偉人の伝記を読むように、NHKの『プロジェクトX』を観るように(笑)、本書を読んでほしい。対象棋力は問わない。細かい手順など判らなくてもいい。読んでいけば、プロがいかに考え、悩み、試行錯誤したかが判るから。
定跡という言葉でさらりと語られる手順の裏にある先人の苦闘。本書ではその過程をあますところなく見せてくれる。
実は、本書をはじめて読んだのは9月の初めだったのだが、既に20回ほど読み返している。それだけ「よみもの」としての鑑賞に耐えうる本だということである。良書だと思う

作成日:2003.10.01 
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消えた戦法の謎 あの流行形はどこに!?

消えた戦法の謎 (MYCOM将棋文庫 10)
著者 :勝又 清和
出版社:(株)マイナビ出版
出版日:2003-05-01
価格 :¥600(2024/02/06 05:38時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

流行の戦形は常に移り変わる。今は中座飛車と藤井システムが将棋界を席巻しているが、かつては森下システムや塚田スペシャルが棋界の中心だった。
しかし、現在では誰も指していない。
あの戦形はどこに行った?

……というコンセプトで生まれた本書。はっきり言って「買い」である。
例えば、塚田スペシャルが消えた理由。詳しくは本書を読んでほしいが、谷川の△8二飛の自陣飛車の変化まで知っている人は少ないだろう。知らなければ、指されたときに負けてしまうのに、である。
消えた戦法は、やっぱりどこか欠陥があったのである。極端に言えば、プロの世界でつぶされた瞬間、その戦法は奇襲扱いになってしまうのだ。
奇襲戦法につぶされるのはバカらしい。ぜひとも本書を読み、戦法の移り変わりを知ってほしい。

どうでもいいことかもしれないが、本書に「風車」が登場する。その消えた理由は「新風車に移行したから(正確には「千日手がイヤになったから」なのだが(<おいおい……))、この部分、賭けてもいいが著者の勝又4段は伊藤7段に取材していない。また、別に最初から事情を知っていたわけでもない。
『風車の美学』を抜き書きしたのである。
読んでみると、なんの工夫もないさまがかえって笑える。確認してみてほしい。

作成日:2003.05.14 
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定跡外伝2

定跡外伝 2
著者 :週刊将棋
出版社:(株)マイナビ出版
出版日:2002-07-01
価格 :¥1(2024/02/08 13:31時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

出版当時は大変な反響を巻き起こした『定跡外伝』の続編。と同時に、今まで毎コミが出版した棋書のフォローにもなっているというのがおもしろい。ようするに、定跡とちょっと違う局面、意外と触れられていない裏定跡を紹介する本である。

私自身は定跡ヲタなところもあるのでこういう本は読んでいて楽しいのだが、でははたしてどれだけの需要があるかと客観的な視点で見ると疑問ではある。
見開き単位で一つの局面、というかなり制約されたレイアウトの中で解説をしているので、棋譜がかなり長々と載る。それを追っていける、もしくは盤駒を出して並べて鑑賞できるレベルの人向けの本である。これは需要はそう多くないよね。

前作は居飛車対振り飛車のみだったが、今回は矢倉や横歩取りなども取り上げられている。その分、よりお得感が強まった気がする。脇システムや8五飛戦法外しなどは、まさに定跡「外伝」という感じで非常にいい。

その定跡を知っている、ということが前提になるので100%有段者向けなのだが、たとえわからなくても級位者にも一度は読んでみてほしい。将棋のおもしろさ、奥深さがよくわかる良書である。

作成日:2002.07.19 
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新手年鑑 vol.1

新手年鑑 vol.1
著者 :島 朗
出版社:(株)マイナビ出版
出版日:1995-08-01
価格 :¥59(2024/02/08 14:40時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

その時までに出た「新手」を、戦形別に分けて解説してくれる本。
言ってみれば古くなった定跡書の改編集みたいなもので、定跡を勉強する上では参考になった。しかし、出版当時は「凄いなぁこれ」と素直に感心できたのだが、さすがにここまで劣化が進むと定跡補完としての価値も低い。
それでも、そこそこ変化も書きこまれているし、変態戦法系も紹介されているので、目を通すくらいならしてもいい。また、読み物と割り切ってしまえばそれなりに楽しめるはずだ。

作成日:2001.07.20 
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新手年鑑 vol.2

新手年鑑 vol.2
著者 :勝又 清和
出版社:(株)マイナビ出版
出版日:1996-08-01
価格 :¥17(2024/02/07 10:31時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

『新手年鑑』に続いての出版。まさか続くとは思わなかったが、3が出ていないところをみるとやっぱり企画に無理があったのだろうか?(笑)

定跡補完としての地位は『これが最前線だ!』の出版により全くなくなってしまったと言っていい。本書は、新手が出た「その時の臨場感」を味わう読み物とすべきなのだろう。
シリーズ化は難しいかもしれない。雑誌の企画くらいがちょうどいいところなのだろうか。

作成日:2001.07.20 
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