居飛車

横歩取りの教科書

横歩取りの教科書
著者 :畠山 鎮
出版社:マイナビ
出版日:2014-05-23
価格 :¥1,694(2024/02/06 07:56時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

横歩取りの定跡及び終盤の戦い方について書かれた本(一応、中盤編というものもあるのだが、中盤についての解説という感じはしなかった)。

内容は、△2三歩型の横歩取りから始まって、相横歩取り、8五飛戦法(新山﨑流や△2四飛ぶつけを含む)と、とても広範囲にわたっている。その分個々の内容は簡略化されているが、それでも本筋はしっかりと解説されているので、一通り読めば横歩取りとはどんな戦法かということは理解できるだろう。

著者がこういう「殴り合い系」の将棋が大好きということもあってか、こういう将棋は面白いからもっとアマチュアの人も指してよ、という主張が強く感じられる。それはとても好感が持てた。ただ、初の著書ということもあってか、少し……ごめんなさい個人的にはかなり、文章がこなれていないと感じた。まぁ、大盤解説などを聞いていると元々こういう言語センスの人なのかなぁという気もするが、ここの語尾はこうだろう、とか、この文章は1文でいいよね、とか、なんだかどうでもいいようなことにすごく目が行ってしまった。

あと、好きだということはとてもよく伝わったのだが、そのせいか(違うかもしれませんが)本当にギッシリと変化が詰まっている。上記では「簡略化されている」とはいったが、それでも初級者・中級者向けの内容と考えるとかなりのボリュームだと思う。熱血指導だなぁと好意的に捉えてはいるのだが(笑)、図面の使い方に少し難があると感じた。
例えば、指し手が続いて、ここで後手からうまい手がある、という文章があったとする。この場合、ページの左下などに指了図があって、読者はその図面を見ながら次の一手を考え、そして答え合わせでページをめくる、というのが普通だろう。わざわざそこで「うまい手がある、考えてみましょう」と煽っているわけだし。しかし、本書の場合、そのページに図面が載っていなくて、次ページの右上の大図面しかないのだ。しかも、そこにそこから先の指し手も書いてある。これでは「うまい手がある」という惹き文句が台無しである。

また、主要な変化であり、①②③などと変化も分かれている局面なのに、図面が1枚もなかったりする。白砂だったらこっちの図面じゃなくてここを使うのになぁ……と、読みながら何度か思ってしまった。これは著者の責任というより、編集が指摘したり考慮したりする部分じゃないのかなぁ。なんかもったいないと感じた。

編集という点で言えば、項立ての構成も少しおかしい気がした。

最初でも「中盤編」について触れたが、こういう章分けをする理由がいまいち伝わらない。
また、各項のタイトルももう少し工夫がほしい。見出しを読んでも自分がいま何の戦形の解説を受けているのかが判りづらい。初級者・中級者向けに取っつきやすくと考えてのことだと思うのだが、タイトルとサブタイトルを使い分けるなどすれば、その辺りはクリアできたのではないかと思う。

不満点ばかりをあげつらってしまって申し訳ないが、誤解の内容に繰り返しになるが書いておくと、取り上げている戦形や書かれている変化、著者の横歩取りに対する愛情は十二分に感じられる。それだけに、処女作なんだからもう少し編集頑張ってやれよと、そこが残念なのである。白砂が頭の中で再編集した原稿が読みやすく理解しやすいかは保証できないが、それこそ1からリライトしたいくらいに内容は素晴らしい本だった。
初段くらいまでの居飛車党なら、本書からB級な変化の部分を選んで指してみても面白いだろう。それこそ、著者が言う「面白い将棋」が堪能できると思う。有段者でも、正直購入を薦めるほどに詳しい本ではないが、横歩取り使いではないのであれば、一度は読んでおけば最新形までの過去からの流れが整理されて判りやすく理解できるはずだ。できれば文章などには目をつぶって、符号を中心に追いかけるとより理解が深まるだろう。

作成日:2014.12.30 
横歩取り

仕掛け大全 居飛車編

仕掛け大全 居飛車編 (マイコミ将棋ブックス)
著者 :所司 和晴
出版社:(株)マイナビ出版
出版日:2007-03-01
価格 :¥1,000(2024/02/06 02:24時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

『仕掛け大全 四間飛車編』『仕掛け大全 振り飛車編』に続く、仕掛け周辺の解説本。これで完結とのこと。

相居飛車ということで、矢倉・横歩取り・角換わり・相掛かりと、一通りの戦形は解説されている。
急戦矢倉や雁木、塚田スペシャルのような、誰が指してるんだという形も解説されていて、ガイドブックだから必要なんだろうなという思いと、限られた紙数なんだからもっと他に入れるべき形はあるんじゃないかという思いとが複雑に交錯してしまった(笑)。

シリーズ全般に言えることなのだが、やっぱりそもそものコンセプトがどうだったんだろうという気がする。
例えば、いろんな形・定跡をガイドブック的に紹介するというにしては、検索機能がとてもしょぼい。目次が検索の役に立たないのだ。なので、結局、大づかみでページを開いて、あとは1ページずつ見ていくしかない。で、見ていくと気づくのだが、やはり個々の変化が圧倒的に少ないため、ヒット数が少ない。正確に言えば、初期図面と指し手を照会し、ついでに解説されている変化まで対象にすればヒット率は上がるのだろうが、それを紙媒体で行うというのはとても苦痛である。
……ということで、本気で検索したいなら、結局『激指定跡道場』を買いなさい、という話になる(笑)←『激指定跡道場』には全ページ載っている。
てことはさぁ、このシリーズ3書って、ソフトに入れる局面を厳選するための抽出過程でできた指し手を集めて、それを書籍化しただけ? とか、いらぬ邪推をしてしまう。邪推だと思っていても、そう考えるとなんとなくいろんなことが腑に落ちるのだ。個々の指し手の解説が少ないとか(ソフトで1手ごとに表示される解説文はそんなに多くできないだろう)、ガイドブックといいながら検索しづらい目次とか(目がソフトの方を向いていて、紙媒体にまで目が回らなかった?)。

あくまで個人の感想なのでそこは押さえておいてほしいのだが、妄想はさておいても本書の作りがこういう意味で甘いのはきちんと指摘しておきたい。例えば目次をもう少し充実させるだけでも検索力は上がるだろう。そういう努力をもっとしてほしかった。

作成日:2014.12.30 
居飛車全般 仕掛け

よくわかる矢倉戦法

よくわかる矢倉戦法
著者 :関根 茂
出版社:東京書店
出版日:2002-10-01
価格 :¥1,650(2024/02/06 04:49時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

『将棋は歩から』の東京書店の本。
矢倉を解説しているのだが、なにしろ復刻版なので内容はかなり古い。3七銀戦法を最新と言っているくらい古い。なので、はっきり言ってしまえば棋書マニア以外には意味のない本だと思う。
4七銀・3七桂の形などを見て懐かしい気分に浸りたい人にはいいのかもしれない(笑)。

作成日:2014.12.27 
矢倉

佐藤康光の居飛車の手筋2 強襲・矢倉編

佐藤康光の居飛車の手筋 2(強襲・矢倉編) 3七銀戦法から対右四間飛車まで、緩急自在の佐藤流
著者 :佐藤 康光
出版社:山海堂
出版日:2007-08-01
価格 :¥499(2024/02/06 04:49時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

『佐藤康光の居飛車の手筋1』に続く次の一手形式の解説本。第2段は矢倉である。
内容は基本の▲3七銀戦法に始まり、森下システム、右四間飛車、左美濃戦法。
先手番から見た矢倉であり、そういう意味では「公平な視点」で書かれている本ではない。
また、少し内容が薄すぎる気もする。例えば▲3七銀戦法は宮田新手あたりまでで、後手版の対策も△9五歩型に限られている(△8五歩型がない)。森下システムも端攻めや深浦新手がない。本当に「先手が成功する形」だけを紹介している感じだ。まぁ、入口で読んでもらう本であるので、これはこれでいいという気もするが。

vs右四間、左美濃といった形を取り上げているのもポイントが高い。ただし、右四間は△4二金対策に触れていないので、安易に使うと痛い目を見ることだけはとりあえず書いておく。使いこなしたいのであれば、別の棋書も参考にすること。

判りやすく矢倉の組み方・戦法の狙いが書かれているので、初段くらいまでの居飛車等は参考にして欲しい。有段者は知っている変化が多いので前半はいらないだろうし、例えば左美濃などは『対矢倉 左美濃作戦』といった本も出ているので、そちらを参考にした方がいいだろう。

実は、本シリーズは4巻出して(評判を見て)以下続刊、という予定だったようだ。巻末に広告が載っている。しかし、本書を出版後わずか3ヵ月後に出版社の山海堂が倒産してしまったので、34巻は出版されていない。vs中飛車・三間飛車と角換わり・横歩取りを予定したようだが、無責任な感想を言えば、とりあえず一通りは出して欲しかったなぁ……。

作成日:2014.06.29 
次の一手 矢倉

ひねり飛車戦法 攻めて攻めて攻めまくれ!

ひねり飛車戦法―攻めて攻めて攻めまくれ! (将棋必勝シリーズ)
著者 :桐山 清澄
出版社:創元社
出版日:2003-01-01
価格 :¥248(2024/02/07 04:21時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

いぶし銀桐山のひねり飛車の本。若い将棋を指す著者にはピッタリの題材だろう。
後手の陣形を急戦2種、持久戦2種の4つに分類し、それぞれの形についての先手の指し方を解説している。

ただし、かなり古い本でもあり、△5四金型の解説にページを多く割いている。最近は玉を固める指し方が主流なので、そっちをメインに解説して欲しかった。しかしまぁ、成功例を多く紹介する入門書であるからこの辺はしょうがないのだろうか。

また、これは構成の問題というか本のツクリの問題なのだが、せっかく4種に分けているのに、それがパッと見で判りづらい。タイトルを工夫するとか、見出しの見せ方に少し凝るとか、もう少しレイアウトをちゃんとした方がよかったと思う。何しろタイトルが「急戦の戦い方」「持久戦の戦い方」としかなっていないので、せっかくページ左上に表記されいるタイトルがほとんど役に立っていないのだ。せめて「急戦の戦い方 基本A図の攻防」とかしてもらえれば少しは見やすくなると思うのだが。

ひねり飛車戦法の基本は抑えているし、ひねり飛車特有の捌きの手筋(▲6五歩と▲7四歩の組み合わせ方など)も結構細かく解説されているので、初段くらいまでの人には参考になるだろう。主流戦法ではないので強い相手に一発入れるにはもってこいだと思うし。
もうちょっとうまく作ればもっと判りやすい入門書になったと思う。少しもったいないなぁ……と感じた本。

作成日:2014.06.21 
その他の居飛車
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