阿部隆の大局観・良い手悪い手普通の手

作成日:2006.01.08
阿部隆の大局観・良い手悪い手普通の手
著者 :阿部 隆
出版社:(株)マイナビ出版
出版日:2005-10-01
価格 :¥844(2024/02/06 07:18時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

NHK将棋講座の内容をまとめた本。
なぜか知らないが、毎コミからの出版となっている。ひょっとすると若干内容が増えたりしているのかもしれないが、目次にも「NHK将棋講座を元に……」とあったし、何回か見た講座の内容とは合致している。よく判らないのでこの辺は考えないことにしよう。

内容は書名通り「大局観を養う本」になっている。
3択形式で出題し、その手がなぜいいか、なぜ悪いかを解説する。また、ところどころに「ポイント」という項が設けられていて、重要なポイントを解説してくれる。

著者が居飛車党のため、対抗形はすべて居飛車の立場で書かれているし、相居飛車はあるが相振り飛車はない。矢倉も3七銀戦法と脇システム(!)、横歩取りは8五飛戦法と、講師の立場に立って書かれたものであることが判る。大局観を養うという点ではすべての層の人に読んで欲しいが、振り飛車党が読んでも鬱になるだけかもしれない(笑)。
この辺りはこの手の本で問題となるところで、例えば居飛車党の大局観と振り飛車党の大局観は、微妙に、しかし根っこのところで完全にズレている。まぁだからこそ各種の戦法が存在しそれを得意にしている人がいるわけなのだが、では、居飛車党の立場に立って書かれた大局観の本が、振り飛車党の立場にどれだけ役に立つかというとこれまた微妙だ。

もっとも、本書についてはそういう懸念はない。対象棋力がやや下に設定されているため、戦法の問題ではなくまずは正しい大局観の捉え方考え方を見につけましょう、という内容になっているからだ。
対象棋力は高く見積もっても3段まで、一般には、初段くらいが対象だと思われる。それ以上の棋力の人は、本書はあまり必要がない。題材も最新形ではないし、本書で書かれていることは有段者ならすでに身につけていなければならないことだろう。 逆に、定跡書を何冊も読んでるのに勝てない、という級位者の人は、まずは立ち読みで最初だけでも読んでみて欲しい。おそらく何か得るものがあるはずだ。

中級者向けの非常にいい本だと思うのだが、一つだけ苦言を呈したい。
「ポイント」を出してくれるのはいいのだが、その「ポイント」という表示が非常に目立たない。せっかくのポイントなのだから、もう少し太字で書くとか(一応太字にはなっている)、背景をグレーにするとか、もう少し工夫をして欲しかった。
これもとりあえず店頭で確認してみて欲しい。せっかくのポイント表示が、かえってキツキツのレイアウトを際立たせてしまっている。じゃあどうすりゃいいんだよというと(文字数の問題もあって)難しい問題なのだが、本書の対象棋力くらいの人に対しては「読みやすく読ませる」工夫も必要だろう。